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サロン!雅と俗 -京の大家と知られざる大坂画壇- 


京都国立近代美術館、通称Momakへ行ってきた!
「サロン!雅と俗 -京の大家と知られざる大坂画壇-」

今回のお目当ては若冲の描いた「売茶翁」。
京坂の文化人たちに大きな影響を与えたこの人物、
茣蓙と茶道具を担いで「ただより安くは出来しまへん」と
お茶を振る舞いながら禅について説いて回った風流なおじじ。
彼の周りには京坂の文化人たちがこぞって集まったというおじじ。
以前読んだ若冲についての本でたびたび名前が出てきて依頼、ずっと残っていた人物だ。

電車に揺られてガタンゴトンと京都へ・・・。
京都では現地に着いたら大概は徒歩で闊歩するが
今回は天気も顔色芳しくなくバスでの移動を敢行。
京都でバスに乗るのは実は初めてであったため
何度も時刻表と路線を確認して乗車、
降車位置を間違えたものの無事到着した。

新しく、いなせな京セラ美術館を横目に
(ちなみに京セラ美術館、今は森村泰昌の作品展を開催中!
めちゃ面白そう・・・)
京都国立近代美術館へ!
静かで落ち着いたエントランスは曇り空でも正面左手にある大きな窓からの
外光で暗さはなく好印象
、洒落た階段を登っていざ企画展。

良いのかどうかはわからないが開館直後に行ったこともあり人は少なくひんやりと静まり返った美術館独特の空気が心地いい。

展覧会の構成は下記の通り。


Part1 京の大家と弟子たち−継承か断絶か?
Part2 京坂のサロン文化−越境するネットワーク
Part3 町人たちのアートワールド−大阪画壇の可能性


前提として・・・・
拙筆をとる私は徹底的にズブの素人のわからんちんさんなので
下記に述べる感想はへっぽこ感想のほかならない。
しかしなんするものぞ、noteはノート、備忘録として満を持して恥をかき晒そうと思う次第だ。
うーん、令和稀に見る褌いっちょの硬骨女、
このページを覗き見る方々は私の姿に興奮を抑えられないだろう。
是非ぶつけてほしい。

■Part1 京の大家と弟子たち−継承か断絶か?

蕪村や大雅から始まる1章、「お!知ってる名前」とワクワクしながら歩みを進める。
水墨画の名家による作品はさすがの力強さと緻密さ、そしてその静謐さに舌を巻く。
こりゃあ素人でもすごいもんだなあと分からないなりに
うーんと唸る声を抑えつつ穴が開くまで見続ける。
しかし穴が開くことはないし私の中で何かを理解するわけでもない。
ただ「綺麗なもんだなあ」と思うだけである。
思えば、外を歩けば手元のスマホに無数のチラシと目まぐるしい情報の渦の最中にある昨今
こうも一つの情報のみをのんびりとただ楽しむ時間、というのは一等贅沢なものだ。
静寂に名画にたっぷりとした時間、なんとも高級な時間の使い方だ。

展示の中に伊藤若冲の「乗興船」が!!
コイツァ、グレートですよ。ハルカス美術館の「奇才展」以来の再会だ。
黒と白でパッきりと別れた京坂を降る船の風景画はその刷りの絶妙さもあって一眼でその世界にひきづりこむ強烈な引力がある。
この風景画の周りだけ切り取られたような静けさがある。

ぼんやりとした優しい月、この淡い雰囲気、、、やっぱり芦雪だ。
芦雪といえばわんちゃんだ、浅学な私には愛らしい動物絵のイメージしかなかったが
こんなにも幽玄で、しかしどこかあたたかみも感じさせる絵を描くんだ、と初めて知った。

この章で初めて知った「岸駒」
彼の描く動物がこと可愛い。
猛々しい獅子、背中の筋肉も隆々、なのに描かれているのは水を飲む瞬間。
水辺に口を近づける虎はぎゅっと爪先が広がり踏ん張っていることが分かる。
確かな画力があるからこそ、緊張感と可愛さが同居している。
この虎、、愛せる!!

あ!あと上村松園がいた!松園がいた!!
儚げで美しい立ち姿に完璧な配色、ガラスケースの向こう側で
ほう、と息遣いが聞こえそうな気さへする。。。
美人画は何時間でも見ていられる。彼女がそばにいる生活はどれほど満たされるものか・・・
思わず彼女をものにしたいと不埒な思いを抱いてしまいそうになるのは人間の性だろう。

■Part2 京坂のサロン文化−越境するネットワーク


とざい東西、今企画展の肝と言ってもいいだろう、いよいよ京坂で形成された文化ネットワークを体系的に見る段になった。
キーパーソンは先に述べた「売茶翁」に「木村蒹葭堂」。
彼ら
を中心に京坂、、時には越境してつながる文化ネットワークの形成を一望できる
蒹葭堂は当時訪ねてきた人の帳簿を残していたようでその足跡は克明にわかるようだ。
あの人の絵に、あの人が文字を書いている!
あ!これは京坂越境した画家たちの合作か・・・!
大阪の大家は知らねど流れを読み取り、自然とわかる展示の流れ。
うむ、これは無学な私にも懇切丁寧、またまたずっと見入ってしまう。
浮世絵のようにどストレートにわかりやすい!という訳ではないが時間をかけて咀嚼して飲み込んで次の展示をそれを反芻して・・・。

文字通り味わい深い展示会のように感じた。

ちなみにお目当ての売茶翁は確かにそこに!若冲が残す数少ない人物画、
その事実だけでも彼が若冲にとってどれだけの人物であったか計り知れる。


■Part3 町人たちのアートワールド−大阪画壇の可能性

歩みを進めると出たな!耳鳥斎!!あな、かわいや。あな、愛おしや。ここにも現れた耳鳥斎ワールドは可愛くっていじらしい、なんと耳鳥斎が絵を手がけた焼き物まで残っている。立派な器に洒落た絵付、その真ん中に耳鳥斎。なんとキュートなお皿か。どこへ言っても目を引くのはこのピリリとした可愛さだ。

大坂で筆を振るった私の知らない画家たちが縦横無尽に並ぶこの章はどこか勢いすら感じる気がする。可愛いからおもしろい、はたまた静かで色っぽい・・・大坂の画人たちの層の厚さとそのスキルはこの展示を見れば一目瞭然だろう
ユーモラスな閻魔大王は佐藤魚大
イケてる?起きてる?やる気ある?半目で口は半開き、
今からお沙汰をいただく亡者もビクビクしようがないかわいさだ。

島成園の人形使いの女ははっと息をのむ美しさ、に妖艶さ。人形を手に今にも操り芸をなさんとする1シーンのはずが溢れんばかりの色気がガラスの向こうから漏れ出ている。なのに清潔感もあるのはアールデコな切り取り方のせいか・・・

江戸時代を闊達に、溌剌と広げていった京坂画壇のネットワークを1日で網羅できる初心者にも優しい企画展であった!



全くの余談であるが、心を満たし館内から出た瞬間土砂降りの豪雨。東山駅までは徒歩十分、晴れていれば全く問題のない距離ではあるがこの雨では訳が違う。ほんまのほんまに出た瞬間、「あ、死んだ」と思いました。死なんかったけど。


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