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改訂新版ヒューマン・セクソロジーはパートナーと共に暮らすための指針となる本

二人で生きる意味、積極的意味とはなにかを考える中で、「情緒的絆」「性的絆」という二人の関係の内実そのものをどのようにつくり出していくか、いけるかという課題である。しかしこの二つの絆は、いずれも客観的な手ざわりのない、極めて不確かなものであり、もろいものである。不断の努力によって互いに育て合おうとしない限り、崩れてしまいかねないものである。そしてそこにこそ、これからの結婚(婚姻関係を指すだけでなく共生のあり方としての)の大きな課題があるといえよう。

改訂新版ヒューマン•セクソロジー

改訂新版ヒューマン•セクソロジーを読みました。

性教育に関する本という触れ込みをみて手に取ったのですが、生物的な性のみならずジェンダーに関する言及も多く、性とジェンダーについて網羅的に学習できる本でした。

内容の構成は以下の通りとなっています。
はじめに―性を学ぶ視点に関して
1 性の多様性とジェンダー・セクシュアリティ平等
2 生殖をめぐる科学と人間関係
3 性愛(エロス)のゆくえ―性の関係性を問いなおす
4 さまざまな性感染症
5 性と人権をめぐる現状・展望
おわりに―性の学びを基盤に、未来を展望する

一貫して本で主張されているのは、冒頭の以下の文に尽きると思います。

自然界における性の姿は、私たちの想像を超えた多様さと変化に満ちている。このような事実を知ることで、「多様な性は『自然の摂理』に反するものではないのか」などの疑問は解消されることと思う。

改訂新版ヒューマン•セクソロジー

性のあり方は多様であって、画一的な見方はやめて個々人の在り方を見つめ直していきましょうということだと受け取りました。
ジェンダー平等というと女性の地位向上だと受け取る人が多いかもしれませんが、本書が扱うのは女性問題だけではありません。男性であることの生きづらさについても記述があります。
多様な性の問題について、科学的に立証された事実について説明しながら、俗説や偏見をなくしていきましょう、そしてパートナーと協力して暮らしていきましょうというのが本書のテーマなのだと思いました。
(当然、女性が社会構造的に低い地位に置かれたり、エイズ患者がいかに差別されてきたかなど、性にまつわる差別問題もちゃんと触れられています)
また、このような特徴からパートナーを持たない方にも有用な本だと思います。
自身の性にまつわる偏見や思い込みなどを点検するきっかけになるはずです。

知識や事実以外に本書が繰り返しているのは、対話をしましょうということです。冒頭で引用したように、個人の絆は脆いもので互いの対話を通して、関係の調整を常に行うことが欠かせないと本書では言います。
この対話の邪魔になるのが偏った・誤ったジェンダー観なので、本書を読むことで誤解を正して対話のスタートに立つことができると思います。
ただ、あくまで知識を授けるだけであって、本当に交流できるかは個人にかかっています。

文中に、男尊女卑的な社会で育った男性がどうして対話ができず、共生に向かない、という記述があるのですが、これが自分にも当てはまると感じました。
まずは、自分が変わってパートナーに歩み寄る必要がありますし、パートナーに自分が画一的なジェンダー観からみた男性像からどう違うのかをうまく説明できるようにならないといけないなと感じました。

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