「10代で知っておきたい『同意』の話」は30代でも学ぶことがある

ジャスティン・ハンコック著の10代で知っておきたい「同意」の話を読んだ感想です。

包括的性教育の入門書と思って手に取ったのですが、性教育に留まらず人間関係や社会構造の内容も豊富な本でした。「包括的」とはこういうことか!と気づきを得て楽しく読むことができました。

なお、包括的性教育とは妊娠の過程や性行為そのものだけでなく、今回の同意といった性にまつわる周辺領域も取り上げる教育のことをいいます。

まず、なぜ性教育のテーマで同意を取り上げるのかというと、先日成立した「不同意性交罪」の名称のとおり性行為にはお互いの同意が重要であると(ようやく)社会的にも認知されてきたとおり、性交渉はお互いの同意が必要であるためです。

本書のテーマも性行為そのものではなく、性交渉の前段階たる同意について取り上げるのが本書のテーマとなっている他、「性行為」と「同意」の関係や「性別二分論」や「人種」「ジェンダー」「権力」「富」といった要素がいかに「同意」を妨げているかといった、社会構造が個人に与える影響まで記載されています。

本書において同意とは、「人は選択によって同意し、その選択を行う自由と能力を有した場合のみ同意したものとみなす」と定義されます。
(不同意性交罪における同意とはまったく違う定義です→参考:https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/100170.html

ここで問題になるのが、実質的に選択を行う自由がない状況に人を追い込んでいないかということです。

例えば、権威をかさに着る上司、「愛してるならできるでしょ?」と言ってくるパートナーなどがあります。

これが悪いほうに発展すると、パワハラ/セクハラ、望まない妊娠といった問題が発生することもあるでしょう。

ここまで過激な例ではないですが、自分にも身に覚えがあることでは、家事を後回しにして妻にやらせてしまった……なんてことも当てはまるのだと思います。

このような選択を行う自由がない状況に人を追い込むことの原因として筆者が挙げているのが、"こうでなくっちゃ論"です。
男性/女性なら〇〇すべきだみたいなものが代表例でしょうか。

同意をするには一度この"こうでなくっちゃ論"から脱却し、相手の望みと自分の望みをすり合わせてお互いで妥協できる内容を見つけ出すことが必要と筆者は言います。

性別二分論だけでなく、自分はどうしても〇〇がしたいとか、科学的には〇〇が正解だ、というのも"こうでなくっちゃ論"にあてはまるのではないかと私は考えているのですが、私自身はかなり"自分がこうしたい/したくない"ということに強く囚われるタイプだということに気づきました。
先ほどの家事の例もそうですが、選択肢も出さずに相手の話を聞かなかったことが多かったなと強い反省の念を抱きました。

以上、10代向けの本ではあるものの、大人にも学ぶことのある良書だと感じました。

自分が無自覚にセクハラ/パワハラ/モラハラをしていないか自己点検するために使用してもいいと思います。

同意のための妥協は決して悪いことではなく、「楽しい時間が増え、共通の思い出ができて、支えある気持ちも生まれます」と筆者は言います。

私も自分へのこだわり捨てて、身軽に人間関係を楽しめるような人になりたいと思いました。

なお、私自身は個人の問題としてこの本を読みましたが、冒頭で述べた通り「ジェンダー」「権力」といった社会構造の問題も取り上げられているほか、「性的なメールを送ること自体が性行為」「イエスともノートも言わない場合はノー」「お願いをするときはなぜしたいのかをはっきりという」などメモしておきたい言葉も多く、いろんな人におすすめの本です。


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