見出し画像

スターバックスはおもねらない

 先日、僕と同じく大学進学で岐阜から東京に出てきた、高校の友達のバイト先に訪問。




 というのもその友達は、スタバ(スターバックス)でバイトしており、僕が店舗に伺った日に、友達はバイトを辞めることになっていた。
 

 ちなみに、スタバは勤務最終日のことを、ラストランと言うらしい。
 
 友達はバイトを辞め、大学を卒業し、就職し、新社会人になる。


 だから記念に、バイト先にお邪魔することにした。ラストランを見に行った。


 スタバに入店。


 レジのところにいた友達にハキハキと声をかけられた。
「来てくれてありがとう!」

 嬉しいネ~。

 感謝されるのはいつだって気持ちが良い。

 僕は調子に乗って、ドリンクだけでなくフードまで注文。
 カフェモカとプレーンのスコーンをフードペアリング。


 すると友達が
「期間限定のスコーンもあるよ」
と声をかけてくれた。

 僕が頼んだのはプレーンなスコーンだったが、期間限定のスコーンは抹茶味だった。

「抹茶味のは、中にホワイトチョコが入っていて美味しい」
そう教えてくれた。
 ホワイトチョコも抹茶も好きなので、
「ならそれにするわ!」
と言い、抹茶味のスコーンに変更して注文した。


 また友達に
「抹茶のスコーンとカフェモカ、両方甘いけど大丈夫?カフェモカ変更する?」
と聞かれた。が、
「俺はめっちゃ甘党だから大丈夫」
と返していた。
 甘い物が大好きだから平気だと。



 でも、本当は違う。



 甘党と言えば甘党だがそこまで甘党じゃない。

 言わば、比例代表でギリ受かった甘党議員。

 正直ブラックコーヒーにしたかった。


 でも変更しなかったのは、他者のすすめで自分が頼んだ商品を2つとも変更すると、



「こいつ全部いいなりやんけ。自分の芯ってものが無いのか?この正解の無い時代に、自分なりの正解を見つけられず彷徨う、可哀想な人なのか?
あるいは、SNSの切り抜きに載っているような、切れ味は鋭いが深みの無い価値観を、自分独自の価値観です!と言わんばかりに、無意識に、周りに吹聴してしまうような、浅〜い人なのか?
仮に間違っていたとしても、お前なりの、オリジナルの答えに到達して欲しいもんですわ」


と友達に思われ(そんな捻くれたこと思う訳ねえよ!友達はもっと真っ直ぐな人だわ)、舐められるから。


 要は、舐められることを恐れた。


 とにかく友達に馬鹿にされることは避けたい。
 なんたるダサいマインドセット。 
 キリマンジャロ級のプライドの高さ。


 だから、カフェモカは変更しなかった。



 その後頼んだ商品(初志貫徹カフェモカ&前言撤回抹茶スコーン)がテーブルに到着。



 味わって、食べた。









 気持ち悪いくらい甘かった。

 




 なんで素直に助言を聞いて、カフェモカを変更しなかったのか?ブラックコーヒーにしなかったのか?ぐちゃぐちゃ考えてしまったのか?

 商品の味は最高なのに食べ合わせが最悪。


 口の中がもちゃもちゃする。


 プライドの高さが裏目に出た。
 アドバイスに従えば良かった。



 やっぱり自分は保守派の甘党。
 甘さと後悔で胸焼けした。



 来訪する度つくづく思う。
 スタバの注文は難易度が高い。
 大体メニュー表に書いてないことが多すぎる。
 CoCo壱の「1辛」「2辛」みたいに、「1甘」「2甘」とか、メニュー表に書いておいて欲しい。
 おかげでいつも緊張する。




 その後飲食を済ませると友達に、
「店の外で一緒に写真撮るから来て」
と言われ、店外のフォトスポットのようになっているところに向かった。


 友達との写真を、店員さんに撮ってもらった。


 おそらく友達は撮ってもらう際、写真写りやどんなポーズをするかを思案していたろうが、僕はまったく別のことを考えていた。


「写真撮ってくれる店員さん。か、か、か、可愛すぎる・・・!!」


 店員さんが、自分のタイプの女性すぎて胸打ち抜かれていた。


 ズギューン!


 なんだろうこの気持ち?
 なんだろなんだろなんだろな?


 なんていうか、笑ったときの顔がキュートすぎる。いや自分で書いていても相当キモいんだけれど、書くかどうかすら迷っているのだけれど、とにかく
「俺、この子が好きです!」
と確信していた。

 いわゆる一目惚れか?
 でもオイラ一目惚れしたことなんてほぼないぞ。

 僕は友達に
「あの子紹介してほしい」
と言うか本気で迷った。逡巡した。




 でも結局、言えなかった。



 ていうかその日のあと、3日間くらい
「紹介してくれ」
の一言を言うかグダグダ悩んだが(情けねェ)、
「でも恋人いるかもしれねえしな」
とか、
「急に好きなんてキモいって思われるかな」
とか、
「逆に今こそ風俗行ってみようかな」
とか、いらんこと色々ぐるぐる考えすぎて愛の谷底に墜落していった。



 機長!恋心の操縦下手すぎです!


 
 後日、スタバで撮った写真を見てみた。
 鼻の下が、顎の辺りまで伸び切っていた。
 鼻の下増量カスタマイズ。



 びよーーーーーん!



 その後写真を撮り、自分の席に戻り、なんとなく友達の働く姿を眺めていて、ふと、気づいた。


 友達は、信じられないくらい「仲間」(「友達」と書くとややこしいので、「仲間」と表現する)が多い!


 友達は、僕と写真を撮ったように、仲間達と写真を撮りまくっていた。というか、ラストランの日に、大勢の仲間が来店していて、人望の分厚さに慄いた。

 同じように岐阜から出てきて、一切大学に新作の友達を作らず、ずっと大学の図書館か学食に籠っていた自分からしたら、嘘みたいな光景だった。

 こういうことを書くと、明るい友達に対して、
「ひがんでんのか?」
と疑われるけど、そうじゃない。
 

 純粋に凄いなと感じた。


 からっぽの都で、仲の良い人達をたくさん作ったこと。
 バイト先とはいえ、自分の居場所をひとつ作ったこと。
 なんか知らんが、友達がバイト中、エクストラにキラキラしていたこと。



 スタバで働く事が向いてたんだろうな。きっと。人と、場所が、気持ちいいくらい鮮やかにフィットしていた。

 慎ましさの欠片も無いドヤ顔で、
「最高!幸福!なんでみんな私みたいに生きない訳!?若さは使うためにあるんだよ!身体は借り物じゃなくて自分の物なんだよ!!!」と、
大声で叫んでいるような、厚かましい労働の仕方をしていた(失礼)。

 見ていて気持ちよかったけど、鼻にはついた。
 タンブラーで頭どつきたい。

 でも、友達にとって、大事な居場所の1つがバイト先だったんだろうなぁ。
 これがサードプレイスってやつか!?


 そして多分友達は、またどこかに居場所を見つけて、キラリと輝くんだろうな。


 きっとそうだろう。
 そういう力を持っている。

 

 そして、そのキラキラ感が、俺がちょっぴりスタバ苦手な理由だろうな。笑。
 



 白状する。






 コメダの方が好きだ。

 あるいはドトールの方が好きだ。

 もっと言えば上島珈琲店の方が好きだ。



 
 自分がここにいても良いという安心感がコメダにはある。
 

 自分のことを理解してくれる店員さんの母数が、スタバよりコメダの方がなんか多そう。


 スタバの店員さんが僕のnoteを読んだら、
「ぐちゃぐちゃ言ってんなよ!お前のやり方、非効率!非効率!非効率!140字以内で書け!」
と一蹴してきそうな予感がする(ごめんなさい。私の偏見です)。

 
 くれぐれも言っておく。スタバのこと、苦手なだけで嫌いじゃない。


 それに苦手と言ってもほんの少し苦手なだけ。


 敵意はないし、スタバの価値観も、輝いた空気感も、素敵だ。


 でも、キラキラした空気感が苦手って、なんなんだ?


 ガキの頃から苦手なんだよな俺。
 オシャレな飲食店が苦手。
 肩に無駄な力が入る。
 苦手な感覚を、どう表現したらいいだろう?
 そう思索した時に、例えとしてパッと浮かんだのが、インスタグラム。

 僕はインスタグラムをあまり見ないので、周りからよく聞く話を元に書く。


 知り合いの結婚式の写真がアップされていると焦る。
 知り合いが旅行に行っていると自分のインドアさにがっかりする。
 知り合いが美味しいモノを食べていると羨ましい。
 知り合いの充実感に、心がざらつく。



 こういった発言をたまに聞く。


 
 知り合いの素敵な瞬間を、写真を通して見ることが出来るのは、間違いなく素晴らしいこと。
 でも、きっと同時に、不健康なことでもあるのではないだろうか?

 
 だって、自分の地味な日常と比較して落ち込んでしまうから。嫉妬してしまうから。もちろん、そうじゃない人もいる。


 それに他者との比較なんて馬鹿らしい。
 発想が資本主義すぎて心がダークロースト。

 

 けど、他者のハレの日の写真、あるいはハレの日のように見せかけた日の写真(言い方が露悪的だったらごめんなさい)を、自分のケの日と比べて、ちょっぴり黒い気分になってしまう人も一定数いるはずだ。


 そしてそういうちょっぴり黒い気分を味わってしまうような、価値観と性格と人生の人(僕とか)は、スタバの明るい雰囲気の中で、リラックスしにくいんじゃないか?たじろいでしまうのではないか?


 「ここは自分の来る場所じゃ無い」
と肩を落として帰るのではないか?
 そう考えた。



 でも、友達を見て少しだけ、そんなのどうでも良くなった。

 友達が、鮮やかに光を放っていて、少し感動してしまったから。

 スタバ嫌いな人も、スタバ苦手な人も、スタバ普段行かない人も、きっと、輝いている人間の姿を見れば、誰もそいつに文句は言えない。

 本人が楽しくやっているのならそれでいい。

 それが絶対的な正解だから。

 そこに他者の黒い感情は侵入してこない。

 そこに他者の穿った目線は侵入してこない。

 そう言い切れるだけの光量がある。

 で、繰り返しになるけど、俺はたま~に、そのまばゆさに耐えられず、目と心がチカチカしてしんどくなる時がある。笑。

 心のタイプの問題だ。

 でもタイプの異なる友達も、スタバに携わっている方のことも、本当に、混じりっ気無しで、オールミルクで、リスペクト出来るなと、その日だけは思えた。




 
 後日、友達に、
「店員が勤務中に写真を撮るのって良いの?店長さんや社員さんから怒られたりしないの?あとお客さんから店員が遊んでるってクレーム入ったりしないの?」
と確認した。


すると、
「店長や社員は、ラストランの時に限っては、理解があるから大丈夫。写真撮ったりしても許される文化がある」
みたいなことを教えてくれた(違っていたらごめんなさい)。



 それを聞いて僕は、企業側が店員のことを大事にしてるから、スタバには寛大でベンティな文化があるのだろうと推測した。


 また、客から写真撮影に対してクレームが入ることもあるらしいが、それでもバイト中に、働き手が写真を撮ることを、その雰囲気を、企業は認めているらしい。




 それを知って僕は、スターバックスの、客の負の意見におもねらない感じに、痺れた。




 多分、他の飲食店に比べてスタバは、従業員を大事にする価値観が強いんだろうな。もはや、少し客をおざなりにしてでも、従業員を大切にしたいという考えを持つ方すらいるんじゃないか(僕の推論です)。


 当然客のことも大事にしてくれるだろうけど。


 そしてそういった価値観が、スタバで働くことのブランド性を作ってるのではないか。そしてそのブランド性や、企業の価値に魅せられた人が働くから、スタバは眩しいのか。 
 


 しかも、その眩しい空気が苦手な客(何度も言うが僕のような奴です)に、おもねらない空気まで出来あがってやがる。

 

 いや、すっげえな。
 凄すぎて、好きになっちゃうな。


 なんたる覚悟!なんたるブランディング!


 ほんの少し苦手だったけど、企業としての強さを見せつけられると、格好良さに惚れてしまう。


 おもねらない感じと積み上げたブランド性。


 俺に媚びてこない感じが最高!笑。


 本当にイヤミじゃなく、好きになりました。
 一目惚れじゃないけど。恋じゃないけど。
 俺はロイヤルカスタマーになれないけど。



 ちょっぴり苦手だけど、もし機会があれば、その時は積極的に行ってみようかな。



 もし行った時は、ラプソディでも聴きながら、カフェモカとスコーン以外を味わいたい。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?