見出し画像

余白のある家

重症心身障害児の娘のための家づくりは、娘がどう成長発達していくのか、どこまでできるようになるのか、予測が難しいので、どういう仕様の家にしておくべきかをとても悩みました。

まだ4歳だからこれからきっとできることが増えていくはず、立ったり歩いたりできるようになるかもしれない、と親としては当然期待しているし、それを目指してリハビリをがんばっている娘を見ているし、こちらもそのつもりで一緒に関わっています。

しかし、家は大々的なリフォームをしない限り、あとから幅を広げたり、空間を広くしたりすることは難しいということを考えると、いろいろな場合を想定し、もっと広くしておけばよかった、となるよりも、こんなに広くなくてもよかった、となる方がいい、と考えました。

娘はまだ小さく、抱っこで移動していて家の中でバギーや座位保持椅子を使ったりはしていないこともあり、身体が大きくなった時のサイズ感の想像がつきづらく、こんなに(広さ)いらないんじゃないかな、と思ったり、玄関やトイレ、脱衣所を広くするよりも、リビングや居室を広くしたいと思ってしまいがちでした。しかし、家づくりにおいては、未来に期待せず今よりも発達が進まない、と考えることで、車いすが使えるバリアフリー住宅として、思い切って必要な広さを確保できたと思っています。具体的な数値としては、福祉住環境アドバイザーのテキストを参考にしましたが、家の中で使うのが一般的な車いすなのか、リクライニングを倒したバギーなのかなどによって、必要なスペースは変わってくるので、障害児の状態に応じて考えていく必要があると思います。

脱衣所兼ランドリールームや浴室、こども部屋などに棚や造作収納をつけなかったことも、余白を生み出すための工夫です。今後身体が大きくなったり状態に応じて、お風呂に入る方法が変わる可能性、福祉用具・福祉機器を使う可能性があります。こども部屋の使い方も変わってくる可能性があるので、動かせない棚や収納があると使い方が制限されてしまうと思いました。居室に関しては、娘の日中過ごす部屋、寝る部屋をどうしていくか、いろいろな場合を考えると、今使っている部屋だけでなく、娘がバギーや座位保持椅子ですべての部屋に入れるようにしておこう、と考え、ファミクロを除いてどの部屋も開口の大きなバリアフリー建具を採用しました。

長く住み続ける家は、障害児がいてもいなくてもその時々で必要な使い方ができるように可変性を持たせておくと便利だし、余白のある家は、広々と開放的に見せたり、好きなアイテムだけを引き立たせたり、インテリアとしてのメリットもあります。お気に入りの家具や雑貨を足していくのと同じように、娘の状態に応じて必要なものを足したり使い方を変化させながら、「育てていく家」にしようと思って家づくりしました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?