心に残る中国映画

<シネマでTOLK&本deコミュニケーション 23>

WOWOWで『小さき麦の花』という中国映画を観た。WOWOWでこの映画を観たのは2回目(2023年2月劇場公開)。

中国の農村を舞台にした地味で寂しい映画。本来明るい楽しい映画が好きなので「好み」ではないが、2回とも熱心に観た。何だか心がホッコリした。

無理やり結婚させられた二人には恋愛という言葉は合わない。けれど互いを慈しみ合う純朴な夫婦の深い絆に心打たれる。

私は結婚を拒否して76歳の今日まで独身を続けている。仕事を失くし家賃が支払えなくなり69年生きた大阪の街を出て見知らぬ地方の町で暮らす貧乏お婆の私は、周囲の人達から同情されているかもしれないが、本人は明るく楽しく幸せに暮らしている。
私は「独り」を選んだが、この映画の二人は、独りの暮らしは考えられない。二人で生きているから幸せ。夫婦っていいなと思った。


土道をBMWで走る豊かな人も登場するが、物も人も運搬にロバが働いているというのが中国の農村らしい。
超貧しい農民夫婦も体を使って実によく働くが、小柄なロバも懸命に働く。「可哀想」「動物虐待」って思う人もいるかもしれないが、私は懸命に働く動物が大好き。

ミャンマーで懸命に田んぼを耕す痩せた白い牛を見た。
いかつい体をした険しい顔の牛だと「怖い」と思うが、優しい顔してひたむきに働いている牛を見ると「可愛いね」って頭を撫でてあげたくなった。「ご苦労さま」って声を掛けてあげたくなった。
働かされているのではなく自ら喜んで務めているという顔をしていた。

3回ビルマに行った母は、庭で寛ぐ牛を描いた油絵を買って帰ってきた。私もミャンマーの動物を描きたいので、写真を撮りにもう一度行きたい。
馬車の小柄な馬も、細長い顔した犬も、動物はみんな優しい顔をしていた。痩せた犬に餌を与えてもガツガツ食べない。上品だった。
車や馬車が通る道路をブタやニワトリも歩いているのが面白い光景だった。


主人公の農夫は最初、頭は悪そうだしテキパキしていない。優しいのが取り柄だけのボンヤリした人物なのかと思ったら、作物を育て家も建ててしまう。最後は拍手を送りたくなる頼もしい人物だった。無口な女房も次第に喋るようになり障害のある体で亭主の仕事を手伝う。彼女にも拍手を送りたい。

家は建ち、作物は実って売れて、お金を得た。
やがて子供も生まれて(子供は生まれなくても)……ハッピーエンドの映画であってほしかった(結末は幸せな成り行きなのかな?)。

幸せとは……。夫婦とは……。愛とは……。
なんて、ちょっと考えこんでしまう映画である。
2011年の物語らしいが、もっと古い時代を想わせるノスタルジーが受けたのか中国で大ヒットしたそうである。

主演はウー・レンリン(夫)とハイ・チン(妻)。脚本・監督はリー・ルイジン。農夫役は監督の身内で本当に農民らしい。プロの役者でないのは驚いた。妻役は有名な女優らしい。障害者の役が見事。

中国映画、また観たい。



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