松田淳一

ヴァイオリニスト。NPO法人アジア音楽教育者育成プロジェクト理事長

松田淳一

ヴァイオリニスト。NPO法人アジア音楽教育者育成プロジェクト理事長

最近の記事

あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法8

前回、弦を指板に接触させない奏法のメリットとして、シフティングについて書きました。次のメリット3は「ヴィブラート」です。  弦楽器は管楽器や歌のように音が通りません。これはただ単に音量がないということも事実ですが、ヴィブラートにもかなり起因しています。  管楽器も歌も、息を使ってヴィブラートを作ります。それは音程の上下だけでなく、音の強弱の要素の方が遥かに大きいのです。  しかし弦楽器は音程の上下運動に頼ってヴィブラートを作りますから、音量の変化は乏しいのです。  例え

    • あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法7

       音の高低を自分で調節しながら演奏するすべての楽器奏者や声楽家にとって音程は一生つきまとってくる問題となります。「音程は悪いが上手な人」は存在しないし、逆に「上手だけれども音程が悪い」ということもありえません。つまり音程が良いことは、優れた演奏家であることの必要条件なのです。   音程を作る基本は耳です。演奏家が「音を出した瞬間にすばやく音程の高低を察知し、もし少しでも狂っていたら聴衆に気づかれる前に修正を完了させる」ためには、即座に音程の修正が可能な弦の押さえ方を修得すべき

      • あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法6

         もともとピアノとヴァイオリンは似ているようで全く違う方向からアプローチしているのです。起源は同じと考えられていて、棒で弦を叩いていたことも同じでした。しかし、その後、馬を家畜として飼っていたアラビア人によって馬のしっぽで弦をこすることで音を出す、ヴァイオリンの先祖が現れました。それはアラビアやトルコのリバーブやモンゴルの馬頭琴に代表されます。これらの楽器には指板がありません。ではどうやって音程を変えるのかというと、弦(これも馬毛を束ねたもの)を軽く指で押さえるか爪を横からあ

        • あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法5

           まず最初に言っておきますが、信じるか信じないか、これでこれからの文章が生きるか死ぬか変わってきます。  上記写真左は弦が指板に接触した状態で、写真右は弦が浮いた状態です。 どちらも音が出ますが、前回スペクトラムでお知らせしたように、写真右のほうが良い音になります。  とりあえず、このことを信じて、音が出るギリギリのラインを探してみて下さい。最初はかすれます。それは、左手の力が抜けていることにつられて、右手の(弓)の圧力も抜けてしまっているからです。右手の力を抜くのと圧力を抜

        あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法8

          あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法4

          DATA 使用楽器は1720年製アレッサンドロ・ガリアーノ。使用弓はフランソワ・トルテ。 弦はA.D.G線:トマスティック社製ドミナント。E線はゴールドブロカット0.27mm。 録音機はZOOM社製H2nを使用し、レコーディングモードを96kHz / 24bitに設定。 マイクは90°XYステレオ方式 / 最大入力音圧レベル120dB SPL / 信号処理32bit 入力ゲイン +0~+39dB / 入力インピーダンス 2kΩ(入力レベル:0 ~-39dBm) 調弦はAを44

          あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法4

          あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法3

           前回述べましたように、右手が力む、弓が震える、といった症状が出た場合、右手に神経が集中します。その結果、出口が見えなくなってしまいます。  一旦右手のことは忘れて、まず左手の原理から学んでみましょう。 左手も力むとポジション移動がスムーズにいかなくなり、音程を外してしまいます。右手も左手も結局は力みが原因で上手く動作しないのですが、例えば、左手だけでも力みが取れたら右手に良い影響を及ぼします。  自分は左手に関する論文を発表していますが、そこから少し引用してみます。結論から

          あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法3

          あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法2

          第1章  序奏で述べたように、あがりの克服は長い道のりになります。 ただし、これを克服できない人はいません。ゲーテの格言にあるように、 克服できない人は、出来るのにやらない人だと断言できます。  あがりの共通点は力みです。とりあえず力み、の原因を考えてみましょう。昔、チェリストのロストロポービッチが「自己愛を捨てろ」と言っていました。なるほど、人に良く見られたい、というのが力みに繋がるのだな、と思いました。しかし、人間は誰しも良く見られたいと思うのが普通です。 何年かはその助

          あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法2

          あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法1

          「序章」  ヴァイオリンに限らず、舞台上であがってしまい、実力を発揮できない。という現象はほとんどの人の悩みの種ですよね。  私はヴァイオリニストなので、ヴァイオリンを持って舞台に立った時に、あがっていても普段と同じように演奏できるコツと訓練法についてしか書けませんが、そういう悩みを抱えていらっしゃる方は是非お読みください。  ただし、最初に言っておきますが、特効薬的なものはありません。実践していただきたいことは2つです。 1. あがっていても、身体はいつもと同じように弾け

          あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法1