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あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法3

 前回述べましたように、右手が力む、弓が震える、といった症状が出た場合、右手に神経が集中します。その結果、出口が見えなくなってしまいます。
 一旦右手のことは忘れて、まず左手の原理から学んでみましょう。
左手も力むとポジション移動がスムーズにいかなくなり、音程を外してしまいます。右手も左手も結局は力みが原因で上手く動作しないのですが、例えば、左手だけでも力みが取れたら右手に良い影響を及ぼします。
 自分は左手に関する論文を発表していますが、そこから少し引用してみます。結論から述べると、左手で弦を押さえていく時、弦が指板に接触する手前でストップさせるのが最も良い結果を生みます。つまり最良の音質を得るためには、弦を指板に接触させてはいけないのです。(写真右)
 写真の黒い部分は指板ですが、常に指板に弦を押しつけなければならないというように思っていらっしゃる方が多いと思います。軽く弦に触っただけではもちろん音はかすれますが、少しずつ圧力を加えていくと、弦が指板に接触する直前で最大の響きを伴った良い音が鳴るのです。このポイントを探すことから始めましょう。ナタン・ミルシュテインは「私は棹を握ったことはない」と言っていました。ヤッシャ・ハイフェッツも同様なことを言っていました。

 このポイントに指を固定して音を鳴らしてみると、指先にかなりの振動が伝わってきます。振動で指先がマッサージされているような状態になります。その振動は弓で擦っていない側の弦、すなわち指で分けられた上部(糸巻き側)の弦も振動させます。このように振動源の増加に伴って音の倍音成分が増加しますから、感覚的にも音の広がりを感じます。
 もし(写真左)のように弦を指板に押しつけてしまったらどうでしょうか。指自体の振動は全くなくなり、弦の上部の振動もなくなります。振動しているのは弓で擦っている部分の弦(駒側) だけとなります。その結果、倍音成分が減少し、全体に響きが硬くなったように感じ、さらに音の広がり感がなくなったように思えます。音量も少し小さくなります。

 以上のことは実験結果としてグラフに出ました。

DATA
使用楽器は1720年製アレッサンドロ・ガリアーノ。使用弓はフランソワ・トルテ。
弦はA.D.G線:トマスティック社製ドミナント。E線はゴールドブロカット0.27mm。
録音機はZOOM社製H2nを使用し、レコーディングモードを96kHz / 24bitに設定。
マイクは90°XYステレオ方式 / 最大入力音圧レベル120dB SPL / 信号処理32bit
入力ゲイン +0~+39dB / 入力インピーダンス 2kΩ(入力レベル:0 ~-39dBm)
調弦はAを440Hzに設定し、なるべく開放弦による共鳴の影響を受けないように、次の各音を選んだ。
G弦はBナチュラル(独:h)
D弦はFシャープ(独:fis1)
A弦はCシャープ(独:cis1)
E弦はGシャープ(独:gis2)
 
以上の設定で、演奏は次の各号の区分に基づいて行った。
1.      指板に弦を押さえつけ、ヴィブラートをかけないで演奏。
2.      指板に弦を接触させず、ヴィブラートをかけないで演奏。

このデータ画像は次回アップロードします。

簡単にまとめると、
とにかく弦を指板に接触させない。
 信じる信じないは個人の自由ですが、これで全ての悩みが解決することは保障します。
では続きはまた次回。

 
 

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