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クリスマスの苦しい思い出

去年まで、わたしを悩ませてきた問題がありました。
それは、わが家にサンタクロースが来なくなる日はいつなのか、という問題です。

普通がどうだか分からないけれど、たぶん、来なくなるのは、子どもが「お母さん、サンタクロースって、……」と言う年。それが、いつ来るのかって、とてもドキドキしませんでしたか?

            🎄🎄🎄🎄🎄🎄🎄

15年以上前、とある若者がまだ、とある男の子だったころ、わたしは「サンタさんが来る」とかいうようなことは、言わないように気をつけて生活していました。悪い予感がしたからです。
とある男の子から「サンタさん、来る?」と訊かれても、「あはは、さあねぇ。」みたいな薄~い反応を心がけていました。
クリスマスの日、家のどこかにクリスマスプレゼントは置かれていましたが、クリスマスプレゼントは誰からのものなのか、明言しないように慎重に心がけていました。
とある少女が生まれてからも、そこは気をつけておりました。

なのに、子どもたちは、絵本を読んだり、テレビを見たりして、
勝手に(?)プレゼントを持ってくるのはサンタだ、と強く思い込むようになっていきました。
特に、とある男の子が。

ある年のクリスマスなど、とある男の子は、「○○(←自分のこと)ねぇ、サンタさんが来るの見たよ。まぶしくなってねぇ……」と、うれしすぎて幻覚まで見るようになってしまっていました。

こうなると、うわー、やっぱり……。と、わたしは怖くなりました。
いつか、とある男の子の幸せな夢想を、(物音で目を覚まさせてしまうとか、いろいろ)わたしがぶち壊してしまうんではないか、と、先行きがとても心配になりました。

それでも、子どもたちが小さいときは、わたしもまだ余裕でした。
あの質問が来るのは、まだ、ずっとずっと先のこと。それに、まだほんの子どもなので、わたしが失敗しても誤魔化しようもあります。

とある男の子が、とある赤ん坊に、つまらぬちょっかいを出したがった頃(6歳臼歯が生える頃)など、とある男の子の純真さにつけこんで、即効性のある防御策として「サンタさんに見られるかもよぉ?」と言って止めていた時期さえありました。

直接的にサンタさんの存在に言及したわけではないけれど、あんなふうに言った後では、言いづらいなあ……
と、あとあとそれを後悔しました。

               🛷🛷🛷

ヒヤヒヤしたのは、とある少年が小学校中学年ごろ。
そろそろ、とある少年は疑念を持つに違いありません。
そしたら、あまり配慮のなさそうな とある少年は、とある幼稚園生のいる前で、その疑念をわたしに投げかけてくるかもしれません。
そしたら、わたしは「えーっと、まあ、そうかな……」みたいに答えるしかなく、
そしたら、「そおだったの?!ガーン」と、とある幼稚園生ががっかりするに違いありません。
そう思うと、気が気ではなくなりました。

どちらかの子の口から、あの質問がとびだした瞬間、きっとわたしはびっくりしたときの猫のように跳ね上がってしまうと思いました。
クリスマスシーズンになると、毎年、いつ見つかるか分からない指名手配犯のように、心休まる日がありませんでした。
子ども番組の、そういうくだりになると、それをきっかけに、とある少年からあの質問が飛び出しそうで、チャンネルをかえたくなるのを我慢するのに苦労しました。

わたしは、さりげなく二人に、「○○ちゃん(いとこのお兄さん)は中学生になったから、クリスマスには何にも来ないらしいよ~」という、伏線を張りました。

とある少年は空気を読んだのか、単に本当に気がつかなかったのか、「サンタクロース発言」をすることもなく、中学生になってサンタを卒業していきました。
一人クリアー。


               🎅🎅🎅


次は、とある少女です。

小学生になると、とある少女は、なかなかアグレッシブに、いろいろ痛いところを突いてきました。
ただ、はっきりと口にすると、サンタクロースが来なくなってしまうというおそれを計算して、中途半端な表現でちくちくと、わたしを追い詰め続けました。


しばらくして、わたしは、とある少女は末っ子なんだから、別に事情を説明しても良いことに気づきました。
何となく、とある少年の時の流れで、ひた隠しにしないといけないように思い込んでいたのでした。

ところが、わたしが「クリスマスのことなんだけど、」と、言おうとすると、今度は逆に警戒音を出して、とある少女がわたしに言わせまいとするようになりました。
あれ?と思うわたし。



そして、

月日は過ぎ去り、立派になったとある少女……




迎えた去年のクリスマス前のある日、

とある少女がさらっと、







サンタクロースは、もうよくない?
別に欲しいものないし









ぱんぱかぱーん
心の中で、ファンファーレが鳴り響いて、
ついにわたしは積年の肩の荷を卸しました。
あの頃から、15年。長かった……


(叫びそうになりつつも、
  ホントに何も要らないの?
  今度は(?)お母さんが買ってあげてもいいよ?
 と、ポーカーフェイスで言いました。)

※ ヤクルトさんにこの話をしたら、ウケてました。
絶賛子育て中のかたですが、そんなこと考えたことないって。
すごい強メンタル。

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