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秋冷 俳句とエッセイ、他3句


古き書のアンダーライン秋冷る


ネットの古本屋で本を4,5冊買った。ひとつひとつは200円代なので、てっきり文庫本だと思い込んでいたのだけれど、来てみたら皆立派な単行本だったので驚いた。
しかも中々に綺麗な品ばかりである。

送料も300円程度だったし、3冊はまとめて同じところから送ってもらったので、一つ分しかかからなかった。
3冊まとめて送料を加えてもまだ一冊分の元値に届かない。
これはいいなあ、もう新品を買うのが嫌になって来る。

が、しかし、逆に売るとなるとどうなのだ。

そういえば今年になってから、また本を200冊ばかり処分したのだが。
実家から持ってきた愛蔵書の詰まっていた本棚を、中身もろとも処分して、主人のベットを置くスペースを作ることになった。
本棚も非常に気に入っていたもので、これは弟が貰ってくれたので、とてもうれしかった。

しかし本の方は、以前来てもらった古本屋に連絡してみたところ、その程度の冊数では、出張買取は無理、と断られてしまったのである。

2017年には、180冊とCD50枚程度で、なんと1万円以上で売れたのに!
その時来てくれたお兄さんは、「実用書が売れるんですよー、もっとありませんかね?」などと言っていたくらいなのに、たった5年の違いで、事情が違ってきたらしい。

どこへ連絡してみても、出張買取は断られた。
料理本などの実用書も多かったが、現代はネットでレシピを探す人ばかりだから、料理の本は売れなくなっているそうだ。余程マニア向けの希少価値のある本が無い限り、来られないと言われてしまった。

しょうがない、ネットで見つけた親切に段ボールなどを送ってくれるという古本屋に決めて、せっせと荷造りに励んだものの、振り込まれた金額は、のけぞるような安価だったのである。

2LDKなのに、地震の事を考えると背の高い家具を置くのは昔から大嫌いなものだから、本の収納場所は困りものなのだ。あちこちにオープン収納でばらけているが、オープン収納というのは、一冊一冊が埃を吸うから、大掃除の時なぞはホントに大変である。

私は多趣味だし、やっていることも多いので、本は決して文学書ばかりという手合いではない。そういえば数年前に来た古本屋のお兄さんが、こんなに色んなジャンルの本を売る人はかなり珍しい、と言っていた。

スペースが無いんだから、もう買わないぞ!と思ってはみるものの。

電子書籍にすればいいだけの話でしょ?などという、息子の涼しい声が聞こえてくるのだが。

でも私は好きなのである、「本」というマテリアルを持った、「物質」が。

紙の匂い、手触り、本の重さ、そういったものと、中身の内容が、別のものとは思えないのである。

読んでいてしみじみ感動したり面白かったりした本は、読み終わった後にそのを本閉じてふと持ち上げたとき、そのずっしりとした重みが、自分の満足感そのもののような気がするのだ。

そして読み終わってもすぐさま目の前から消え失せずに、ここに来てこれを手に取って開けば、忽ちあの世界がまた広がるのだ、という、安心感。
特に年を取ってくると、何でもすぐに忘れてしまうから、目の前にずらりと「色んな世界」が勢ぞろいしていてくれると、心強いことこの上ない。

物ではないものたちが、手触りや匂いや重さをもつ「物質」として確固たる場所を占めてくれることへの安心感、そんな感じがあるから、

なかなかリアルの本を買う、ということがやめられないのである。



他3句



目薬が光って落ちて秋澄みぬ


台風一過巨き目を泣きはらし


秋冷るバッハの反復快く

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