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またみんなで大笑いできたら良い

実家は車で15分程度の場所にあるので
お盆に帰省すると言う概念がない。

それは妹も同様で、だけど母親が毎年「お盆はいつ帰ってくるの?」と連絡してくるため日程を合わせ実家へ行く。


今年もあっという間に、
もうそんな季節なんだな。



テーブルいっぱいの料理を囲み、女3人(母、妹、私)はラルクのライブ映像で黄色い歓声をあげ

男2人(父、妹の旦那さん)はお酒を呑みつつ
仕事の話をする。

それぞれみんな他愛もないことで笑い合う。



その光景を「テレビ見とくよりあんた達見よんほうが楽しい」と笑顔の祖母。

きっと亡くなった叔父、祖父、曽祖父、曽祖母も同席して一緒に笑っていたことだろう。





妹の旦那さんと呑んでいる時の父親は上機嫌だ。昔みたいに陽気で、饒舌で、ユーモアがある。

「結局ね、自信がないのよね、
働きつづけてる人間てのは!
……ま、おれのことですッ☆」
と、ゲラゲラ笑いながら父親が言った。

母を除き、全員がドッと大笑いした。



普段そんなことを言わない父だから、きっと妹の旦那さんには相当心を許してるんだろう。


それじゃあお暇しましょうかと妹夫婦が帰る頃
、居間の片隅には絵に描いたような酔っ払いが爆誕していた。

赤い顔して目尻は垂れ下がり、幸せそうにニマニマと笑っている。

父親がここまで酔っているのは初めて見たかもしれない。



おれも見送りに行くぞ、と立ち上がるも
あっちにフラフラ〜こっちにフラフラ〜。

大丈夫大丈夫〜☆を繰り返しながら転倒し頭を打ち(心配で付き添ってたので大事には至らなかった)

「だから言わんこっちゃない!!!
見送りはせんでいいけんそこで寝ちょきよ!!」と母親にきつく叱られた父はようやくいつもの表情に戻り、はい…と大人しく横になった。



妹夫婦を見送り
後片付けをし一息ついていると
それまで大人しく座っていた祖母が
「ちょっと麻央ちゃん、良〜い?」と猫撫で声で近づいてきた。

イエスノー回答をする間もなく
「ちょっとその髪の毛を触らせて〜」と
私の頭を両手で撫で撫でする祖母。

家族であろうと許可なく身体を触られるのは苦手だ。たとえそれが祖母であろうとも。

いや、まぁ許可は一応取ってくれたのか。


心の準備が出来ておらず
ヒィ・・・・・・・・・と声を漏らす私を知ってか知らずか心から嬉しそうな声で

「綺麗な髪ねぇ〜」と頭を2、3回撫でたあと、祖母は自室へ戻って行った。


祖母は94、私は38。
その差54歳。

頭を撫でられたときのぞわぞわとした感覚に身震いしつつも、彼女にとって私は54歳年下の血のつながった人間だものなぁと思う。


犬猫でさえどれだけ年老いようと可愛いんだから0歳から知ってる私のことを祖母が可愛いと思うのは当たり前のことだし

そりゃたまには頭の一つも撫でたくなるか、と自分なりの落とし所を見つけることに成功した。



そして自宅に帰る頃には祖母の手の感触を思い出して心が温かくなっていた。もっと思う存分撫でさせてあげればよかったか。


次に集まるのはお正月だろう。
誰1人欠けず、またみんなで大笑いできたら良い。


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