読書の夏 ◆8月に読んだ本 その①◆
昨年読んだ本の冊数を数えてみたら、ちょうど100冊だった。
漫画が多かったし、たいした数ではない。
そして今年はさらに読書量が減っている。
いろいろ読みたい気持ちはやまやまなのだが、どうも読書モードに入れきれない落ち着かない時期が続いた。
そんな日々は過ぎ、また調子が出てきたので、8月に入ってからの読書記録を記してみる。
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「新橋アンダーグラウンド」(本橋信宏 駒草出版)
電信柱の陰からこっそりのぞくように、活字を通して、昭和の香りが色濃く残るアンダーグラウンドな世界の人間模様を見つめるのが好きだ。
新橋といえば、SL広場での酔っぱらったサラリーマン街頭インタビューがまず浮かぶが、私にとってあまり馴染みのある街ではない。
新橋周辺は行ったことあるけれど、新橋自体はどうだったかな・・・。
などなど、興味を惹かれる内容が続く。
本書に出てくる男たちの闇社会や娯楽産業の実態も面白かったけれど、新橋で生き抜いてきた女性たちの姿が印象的だった。
ガード下で熟女パブを経営する91歳のママと70代のホステスたち。
40年以上にわたって路上で靴磨きを続けた86歳のおばあさん。
「新橋の食堂で働くおばちゃんが松本清張賞を取った」と、2013年当時話題になった作家の山口恵以子氏。
戦後の新橋のレジェンドと言える彼女たちの生きるエネルギーは桁違いで、爪の垢を煎じて飲ませていただきたいほどだ。
感嘆のため息をつきながら、読了。
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「浮浪児1945ー戦争が生んだ子供たち」(石井光太、新潮社)
単行本(2014年刊行)
文庫本(2017年)
再読。2014年に購入してから、通しで読むのはたぶん3度目。
本棚から取り出すたび、表紙のシケモクを吸う少年の表情、裸の少年の汚れた体に目が釘付けになって、しばらく目をそらすことができない。
本書は1945年3月10日の東京大空襲の話から始まる。
間もなく米軍の本土空襲が全国へ広がり、上野の地下道に各地から人々が集まってくる。
やがて終戦を迎え、すさまじい食糧難により無数の死者が出る中、ゴミ箱をひっくり返したように汚く、強烈な悪臭に満ちたこの場所で、親を失って戦争孤児となった子供たち―浮浪児―が1日1日を生き延びていた。
そのような地下道、そして上野駅近くの空き地にできた闇市における彼らの生活や、そこで出会った大人たち―ヤクザ、テキヤ、愚連隊、パンパンと呼ばれた娼婦、傷痍軍人―との関わりが描かれる。
また、終戦から数年後、警察による狩り込みが激しくなった上野から姿を消し、感化院や孤児院で暮らすことになった子供たちの実態が明らかにされる。
最終章では、それから60余年後の元浮浪児たちを著者は訪ね歩き、戦後の混乱期から高度経済成長期、バブル崩壊へと至る歳月を彼らがどのように生きていったのかを辿る。
言葉にできないような過酷な経験を無数に重ねて、この世になんとか踏ん張って生きた浮浪児たち。
この本を通して、彼らから私が受け取ったメッセージがある。
それは本当にシンプルに、
「生きろ」
という一言だ。
彼らからすれば私のような人間は信じがたいほど甘ったれのおばさんであり、軽蔑の眼を向け、歯牙にもかけない存在だろう。
それでもなお、私はこの子供たちから「生きろ」と言われていると思い込んで、とにかく生きていってみようと思っている。
私にとって、この本に出てくる子供たちの生活はそれほどインパクトがあり、生きていること、生き続けることについて考えさせられる。
これからもずっと、2、3年に1度は読み返していきたい作品だ。