なぜヴェネツィアには「翼のあるライオン」があるのか?#1
はじめに
みなさん、こんにちは。イタリア文化ナビゲーターの吉田・マリネッロ・マキ / Maki Yoshida Marinelloです。私は20年間、水の都・ヴェネツィアで暮らし、現地で子育ての他、 日本とイタリアを繋ぐ様々な活動を行ってまいりました。
このnoteでは、ヴェネツィアをはじめイタリアの文化や歴史をわかりやすくお伝えしていきます。実際に現地を訪れる方々がよりイタリアを堪能できるように、まだ訪れたことがない方については、少しでもイタリアに興味を持っていただけるように、その魅力をシェアしていきたいと思います。
「翼のあるライオン」とは?
ヴェネツィアを訪れたことがある方は、気づかれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。なぜ、ヴェネツィアの街には「翼のあるライオン」の旗や、モチーフがあるのか。実は、この有翼のライオンはヴェネツィアの象徴であり、重要な意味を持ちます。この記事では、その由来や意味について解説していきます。
西暦828年から、それまでの聖テオドーロに替って聖マルコがヴェネツィアの守護聖人になり、かつてのヴェネツィア共和国の、今は街のシンボルです。
聖マルコは有翼の獅子で、彫刻、絵画など美術館の中だけでなく、この街の至る所にレリーフや装飾としても使われており、少し意識してみると簡単に見つけることが出来るはずです。
それだけこのシンボルが、かつてのヴェネツィア人にとって愛着と同時に、とても大切なものだったことが分かります。「旗印」として、自分たちが何者であるかを示すアイデンティティーと主義主張のシンボル、そしてお守り
でもあったのでした。
4つのタイプのライオン
この「有翼の獅子」は主に四つのパターンがあり、写真上のレリーフはその中でも一番よく目にするタイプです。つまり、「獅子が立って前足で本を開いている」タイプのものです。
本を開いているのは、平和であること(戦争中でないこと)を示し、広げられたページにはラテン語で、「PAX TIBI MARCE EVANGELISTA MEUS」とあり、聖マルコがうけた予言でその領土の平和が保証されるという内容が表されています。
サンマルコ広場を少し歩いてみるだけで、あっという間に7つや8つの獅子たちが見つかることでしょう。
写真の獅子は、精悍で均整がとれていて個人的にはいちばん好きですが、他にもちょっと情けない顔つきのや、人面獅子のような色々な顔と形の獅子たちがいます。そんな獅子探しも散策の楽しみです。
18世紀後半以降、ナポレオン統治下のヴェネツィアでは、ヴェネツィアの歴史と栄光をあまりにも象徴する「翼を持つライオン」はいくつも破壊され、あらたに掲げたりすることも禁じられていました。
にもかかわらず、当時のヴェネツィア市民達はフランス人に対する抵抗と、自分たちの誇りを示すために、厳罰覚悟でこの有翼の獅子の彫刻や絵画を讃え続けたのでした。
二つ目がこの「本を閉じて剣を持つ」タイプで、前回の本を広げたパターンで、平和と税金の支払い義務を意味していたのとは反対に、これは戦いの中にあることを示しています。また、ヴェネツィア共和国の国境線の住民には税金が免除されることも同時に表していました。
写真のように、本を閉じ剣を天に向けているタイプの他、剣で閉じた本を指しているもの、閉じた本に前足をのせているタイプも同様に、「いざ、一丸となって戦え」と言う意味があったようです。
続きます。
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