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ピン ホール カメラの工作


1. 工作の概要

先週の発明クラブの工作はピンホールカメラだった。上の写真の右がレンズで,左がスクリーン。以下では,その工作の進め方を示す。ここではknow how(詳細な設計データ)ではなく,know what(何を知るべきか)とknow why(なぜ,そうなるのか)に重点を置いて説明する。

2. 工作の手順と実験

2.1 外筒と内筒の作成

黒い厚紙を丸めるか四角に折って内筒と外筒を作成する。白い紙を使ってもいいが,筒の内側は黒く塗ること。その理由は後で説明する。内筒のサイズは外筒より小さくすること(スムーズにスライドさせるため)。

2.2 スクリーンの取り付け

内筒の片端に半透明の薄い紙(セロファン紙など)を貼り付ける。これだけでほぼ完成。早速,実験してみよう!

2.3 実験1

・外筒の中に内筒を入れる
・スクリーンを見ながら,像がはっきり映るように内筒をスライドさせる
・レンズがなくても像が写るのはなぜか考えよう(解答は後で)

2.4 実験2

・外筒の入口のサイズと同じ大きさの紙を2枚作る
・それらの紙の中心に,それぞれ大きな穴(レンズと同じ大きさ)と小さな
 穴(大きな穴の半分ほどの大きさ)を開ける
・最初に,実験1の状態で像を確認する。次に,外筒の入口に大きい穴の  紙を取り付ける。その時,スクリーン上の像はどのように変わるか?
・次に,外筒の入口に小さい穴の紙を取り付ける。スクリーンの像はどの  ように変わるか?
・穴の大きさを画鋲のピンくらいに小さくしたらどうなるか想像してみよう

2.5 実験3

・大きな穴の紙にレンズを取り付けて像を観察する
・レンズがない時と比べてスクリーンの像はどのように変わるか?
・レンズの働きについて考えてみよう

3. 解説

3.1 実験1の解答

太陽からの光(実際には空気の散乱のため全ての方向からの光)を受けた物体の一点(下図のaやb)からは,あらゆる方向に光が反射され,その物体はどの方向からでも見える。

点aからはa0,a1のようにスクリーンに直接届く光は一つではない。その結果,aの像はスクリーンの複数個所に表示されるので像はボケる。

また,a2のように反射して届く光もある。反射光もボケの原因となるので,筒の内側は黒くして反射させないようにする。なお,スクリーン上の像は元の像と上下・左右が反転することに注意せよ。

3.2 実験2の解答

外筒の入口の開口部を小さくすると,ボケの原因であった直接光の一部と反射光がカットされるので像は鮮明になる。ただし,開口部から入る光量が減少するため像は暗くなる。開口部をさらに小さくすると,像はより鮮明になる。同時に,光量がさらに減少するため,像は見えなくなる。

すなわち,像の鮮明さと明るさはトレード・オフの関係にある(一方を良くしようとすると,もう一方は悪くなり,両方を同時に良くすることができない)。

3.3 実験3の解答

3.2で述べたトレード・オフを解決できる方法がある。開口部にレンズを設置すればよい。レンズは全ての入力光を一点に集めることができるので,鮮明さと明るさの両方を同時に改善できる。

レンズという新機能を付加することでブレークスルーを達成できた。

4. まとめ

ピンホールカメラの原理を工作と実験によって体験的に理解できたと思う。

子供達はカメラにレンズが必須だと思い込んでいるが,その固定観念は最初の実験1で吹き飛ぶ。次に,開口部を小さくすること(実験2)で生じるトレードオフ関係を実感する。最後に,レンズを用いること(実験3)で,そのトレードオフの解消というブレークスルーを体験する。

このように物事を基本から段階的に考える経験は,将来,子供達が困難な問題に直面した際に必ず役に立つはず,,

(補足)

スクリーンに感光紙を貼り付け,10~20分程度(陽射しの強さによる)露光した後,紙をアイロンで加熱すると現像できる。感光紙は通販で購入可能。
なお,ピンホールカメラの工作キット(商品名:「箱カメラ」など)も千円程度で市販(通販)されている。


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