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救国の予言講演 1973~74年 1 国際勝共連合会長 久保木修已氏

久保木修己 くぼきおさみ
1931年中国大陸大連で生まれる。13歳にして初めて日本の土を踏む。その頃より祖国の再建を夢み、慶應義塾大学に学びつつ宗教の道を志した。1963年、世界基督教統一神霊協会に入り、青年・学生を指導し救国救世運動の先頭に立つ。更に新時代をリードするに相応しい新文化建設をめざし、国際文化財団を設立。自ら理事長となって、国際的学術、芸術の交流をすすめた。その間、欧米30数ヶ国、東南アジアの各地を歴訪し、各国指導者との交友関係は実に広範囲にわたっている。世界基督教統一神霊協会会長・国際文化財団理事長・救国連盟総裁・国際勝共連合会長


久保木修己講演・論文集 救国連盟編集局 昭和51年12月17日初版発行 
1973年6月2日から1974年5月12日

マスコミは公器としての責任を

全ての矛盾は人間自身から

この日本と世界の問題を考えてみるとき、どうしても避けて通ることが出来ないのは、共産主義の問題であります。故に私共、勝共連合はこの問題を克服するため、思想啓蒙運動団体として今から七年前に若者達が数名集まりまして出発致しました。その当初から、私共はこの日本が今日みるように破局へと転げ落ちる状態に、残念ながら必ずなってしまうと予測し、考えておりました。
私共は、どんな問題であっても、それを解決するには必ず二つの方法があると考えておりました。一つは現象的な問題を取り上げて、その解決にあたるという、たとえば、政治的方策を使っての方法であります。もう一つは、もっと根源にかかわる本質的な問題においての解決の方法です。当然この二つの面がなければならないのであります。しかし何故か、私達は現象的な問題を糊塗(こと)するあまり、その本質的問題に対してあまり真剣に取り組まないか、あるいは、何故かそれを故意に避けてしまう傾向にあります。しかし、それはすぐに限界が来て、何をやっても無駄であるということに必ずなるのであります。現象的な問題は、いくら人間の小賢しい英知をもって考えたとしても、必ず行詰まりが来るものであります。巷で「出物腫れ物所嫌わず」と云われますけれども、たしかに皮膚の表面に沢山できた『おできの切開手術をしても、その本体に病原菌がある以上は、何の解決にもならないのであります。
こう考えてみるとき、その本質は何か。たとえいろいろと点滅する社会現象、世界現象があっても、それにどう対処するかは、結局、人間それ自身の問題に返ってくるのであります。一人一人の「人間の質の問題」を解決せずして、いかなる政治的政策も、またいろいろな力をもって解決しようとしても、これが根本的な問題解決にはならないということです。私共は、この人間自体の問題を掲げて思想啓蒙団体として出発を致しました。

公開理論戦拒む共産党

さて、日本共産党を頂点として左翼勢力は、「自分達の共産主義の理念は科学的な思想で、さらには、絶対で誤りがない唯一の神聖にして犯すべからざる思想である」そして、「我等こそ日本国民の理性の代表であり、知性の先駆者である」と、このように絶えず豪語しているのであります。それに対して、我々は思想啓蒙団体として出発している以上当然のことながら、「この共産主義思想が国民を本当に幸せにするか」ということをはっきりとさせなければならないのであります。そして、この思想を理論的にみて正すところは正し、また、学ぶべきところは学ばねばならないわけであります。
そこで私共は、具体的には三年前から、日本共産党の代々木本部に宮本委員長あるいは不破書記局長を訪れ、公開質問状を渡したのであります。そして、これまで全国で七十回近くにわたり「あなた方の掲げるあのバラ色の目も眩むような未来像を持ったこの思想が、本当にあなた方がいうように、人間を解放するものであるのか、あるいは、国際勝共連合が提示するこの勝共理念が、永遠という価値をかけて、人類を解放に導くのかどうか。その点についての公開理論闘争を国民の前でやりましょう」「いや、もっと真剣な問題としてこの国家を救い、世界人類を救う決め手となるならば、どうしても行ないたい」と要望書を提出したのであります。
 ところが、共産党から返って来た答えは、ただ一つ「我が日本共産党は、国際勝共連合などという弱小な団体は相手にしない」と『天下の公党”たるものが、勝共連合などと対等に話し合うといういわれはいささかもないと言わんばかりに、一方的に無視するという態度を取り続けて来ました。しかし、それ以前からもそうでありましたが、これ以後は、日曜版二〇〇万部以上、日刊紙五〇万部以上と豪語している共産党機関紙「赤旗」におきまして、一方的攻撃をしてきました。私共の青年達が少しでも行動を起こせば、即刻威圧的な態度で非難、中傷、謀略、捏造といった記事で埋め尽くし、しかも、それは一週間や十日ではありません。なんと一ヵ月位かけて連載、連載のキャンペーンを張るといったぐあいで、昨年中はなんと九十八回にも及びました。

矛盾だらけの言葉と行動

これは、建て前においては、「国際勝共連合は極めて弱小なる団体であり『こんなもの」は吹けば飛ぶような団体である」と云いながらも、本音においては、共産党や左翼同調者が、その組織を破壊され、侵蝕されることを恐れているのです。『目のうえのたんこぶ」のように考え、理論的にはかなわないとみて、つまらないことを捏造したり、国民大衆の一部の興味を引き、喜びそうなセンセーショナルな表現を使いながら謀略、中傷の記事で埋め尽くしているのが現状であります。しかし、このようにして、勝共連合の信用やイメージをいかに悪くするか、これが彼等の最大の戦略であり、彼等の真の狙いなのであります。

勝共の孤立狙う共産党

昨年六月から始まりました私の講演会におきましても、共産党は、講演会の内容についていろいろなことを悪らつに書いているのです。さきごろも、熊本で講演会が行なわれたのちに『赤旗”で理論家の方が署名入りでいろいろなことを書いておりました。そして最後には、次のような言葉で記事を結んでいました。「久保木の講演を共産党としてよく考えてみるときに、全国的に極めて大きな影響があることを認めざるを得ない。だからこそ、勝共運動(連合)を国民から完全に孤立せねばならない」
すでに御賢察のように、今までの共産主義勢力の世界でのやり口は、自分達は団結していくけれども、そうでない相手団体に対しては、あらゆる相互不信感を抱かせる、疑惑感を起こさせるということで、分離分断工作をたくみにしてきたのであります。
現在、世界にある十四ヵ国の共産化された国々では、その国民が初めから共産党あるいは、共産主義の国にしたいと思ったわけではありません。国民を相互分裂させることによって、へとへとにさせたところで、最後に武力で弾圧していったのであります。これが共産革命の歴史であったのです。そして、自由が失われた国々でふたたびそれがもどった例がありません。

拡がる国民のマスコミ不信

このようなことを私共が考えるときに、この共産党の「赤旗」を頂点として、更には今日、残念ながら共産党の御用新聞のようになってしまった「朝日新聞」その他の商業新聞をはじめとする日本のマスコミの実害・弊害というものが、今日ほど国民的拡がりをもったことはありません。そして、国民相互の間から、このマスコミに対する不信感がこれほどまでに大きくなったということは、かつてみざるところであります。これは、皆様がよく御存知であります。そしてこの新聞、その他のマスコミは、日本国民に正しいことを正しいままに知らせていない、恐るべき実害になっているのであります。
この実害、弊害が極めて顕著なのはここ三年前からの「日中問題」であります。ほとんどのマスコミは〝中共〟、〝中共〟と中共一辺倒で、中共でなければ人にあらずといった勢いで、あるいは、中共との国交樹立を認めなければ日本は滅びていくかのような全く異常と言える記事で埋め尽くした日本のマスコミ界でした。これが最も目新しいマスコミの実害でありました。しかしながら、日中問題とは全く別の所から、確かに、ある一瞬から今日のように日本は世界から孤立していくような状況に追いこまれてしまったのであります。今の石油をめぐるアラブ問題にみられるように、日本に対する世界の不信感がついには日本自身を現在のように全く困り果て、弱り果ててしまうような立場にさせてしまったのです。

国益より利益に走る新聞界

 さて、私共国際勝共連合には、多くの顧問の先生方がおられますが、その中のお一人に広田洋二(元駐米総領事,現在国際問題外交評論家)先生がおられます。先生は極めて、日本のマスコミの偏向ということに関して敏感な洞察力を持たれ、このままいけば日本は、アジアから孤立することは必定であり世界の物笑いになることは必然であると考えておられるのです。先生は救国、憂国の外交評論家として活躍しておられ、以前から毎日新聞では、先生の外交論文を取り上げていたのであります。ところが、あるときその知り合いの編集責任者が先生の原稿をみて「この論調の云うとおり日本は、これに基づかなければおかしな方へいかざるを得ない、確かにその通りですが先生、あなたの論文は今回、毎日新聞にのせるわけにはいかないのです。なぜならば、わが毎日新聞としては現在どうしてもやらなければならないことがあります。「北京」に特派員を送らなければならないのです。その為に、この論文をのせることは出来ないのです」と話したのです。先生は、「なんたることだ。天下の公器マスコミともあろうものが、国民に正しいことを知らせないで済むと思っているのか。毎日新聞たるものが単なる商業新聞に成り下がって北京に特派員を送らねばならない。特派員がいないと講読者が減ってしまうという、そんなことでは国民をおかしな方向へひっぱっていくことになる。それでいいと思っているのですか」と問い正したところ、その責任者は――。
「先生、そんなことを云われても困ります。私の立場にもなって下さい。上の方からは、『絶えず記事をチェックしなさい。もし、いささかでも北京の御機嫌を損じる記事を書いたならばとんでもないことになってしまう』そして下からは、もし記事をのせたらただちに新聞労連から『何でこんな記事をのせたか』と言って大挙してつきあげられるのです。上から下からやられている自分の立場になってもみて下さい」
そう言われて、やむなしということで広田洋二先生は、読売新聞の編集のところへ行ったが、そこでも同じことを言われたのです。こんなことは皆様も御存知でしょうが、これは、ほんの氷山の一角でございます。日本のマスコミは北京の御機嫌を伺うために、国民には正しいことを知らせない、あるいはまた、北朝鮮の御機嫌をうかがうためにさきごろ「金大中事件」などでも、極端に国民の反韓国感情をあおりたてたのです。

閉じ込められた日本人

このように日本の新聞というものは、国民に正しいことを知らせていない。これが日本のマスコミの実態このような日本の状態を船で喩えてみるならば、「潜水艦の中に入れられてしまっている一億一千万」という姿に思えてならないのであります。それは、戦闘状態でありますから、もちろん海の中に深く沈んだまま、そして、潜望鏡一つだけを水面の上に出して、艦長と数人の指揮官だけがそのたったひとつの潜望鏡をのぞいて海上の状況を知ることができるのでありますが、その他の人達には海上のことは、まったく知らされていないのであります。
現在の私たちの日本はちょうど、これと同じ状況下にあると思えてなりません。一握りの人々が、ある目的のもとに国民をおかしな心理状態にあおりたてるということがあったとしたならば、この狭い空間でひしめいているだけに、国民は必ずパニック(恐怖)状態に陥るのであります。この潜望鏡の喩えを通じてみても、日本においては、一部の人々によってあらゆる謀略、中傷をもって国民をある一定の方向へあおりたてていくことができるのであります。

日本語しか出来ない弱点

さて、これが世界中の国々が同じく船に乗っている状態とみたら、どうなるでしょうか。それは、日本の場合とちがって、海の上に浮いた大きな船に喩えることができるのであります。いま、その船に十二の部屋があるとすれば国民はそれぞれの部屋の窓から自由自在に外国の様子を見て知ることが出来るという状態になっているのです。これは、どういうことを意味しているかと申しますと、諸外国におきましては、ほとんどの国民は自分達の母国語以外に通常一~二ヵ国語は読んだり、聞いたり、見たりすることができるようになっているのであります。
たとえば、英語の他に、スペイン語とか、ドイツ語、フランス語とかいうふうにして通常二~三ヵ国語を理解出来るのです。すなわち、それだけ必要な情報を得る際に幅広く、偏らないで選択できるわけであります。しかし、我々日本人は残念なことに、内外のあらゆる情報がゆきから中において日本語だけしかこれを受けとめることが出来ないのであります。ところが、日本における情報伝達機関は、一つの新聞社なら新聞社がじつに全国的な影響を及ぼすようになっているのです。ゆえにもし、一部の煽動家が、一部の者の目的のためにこのマスコミを操作していくならば、我々国民はどのようにされてしまうかわからないのであります。
しかし、諸外国の国民は自分の国以外の言葉で新聞やラジオ、テレビを通じて読んだり、聞いたり、見たりすることが出来るためにそういう心配が日本に比べて比較的少ないのです。すなわち、そういう国々で国民がマスコミはどうもおかしな方向へ我々を動かそうとしているけれども、「これは一体どういうことだ」とまったく別の角度から自由に追求することができるので、マスコミのごまかしは効かないのであります。東南アジア各国ではどうなっているかといえば、御承知のように、今日まで東南アジア各国は長年植民地であったため、フィリピンでは母国語以外に英語とスペイン語が、インドネシアは英語とオランダ語が、ベトナムではフランス語が、というふうにそれぞれのどの国においても二~三ヵ国語を使いこなせるのであります。故に、日本のような国民は、すべて潜水艦の中に入れられてしまって何もわからないままに、おかしな方向へ引っ張っていかれるというようなことは防げないのです。このことが今日の日本にとって、大きな問題であります。

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