見出し画像

唐突な知らせを逃し、金木犀に感じた2020年。

毎年、9月の終盤から10月の頭になると、昨日まで無かった香りに唐突に出会う。金木犀だ。

だけど今年、その「咲いたよ」という主張を、金木犀がしてくれない。そして10月も半ば迄きてしまった。

そういえば?とやっと思い出し、なじみのある金木犀を見に行ってみることにした。今年はゆっくり目なのかな、なんて思いながら。

あれ、もう咲いていた。それも、もう終わりかけだ。決して主張しない、微かな香りをどうにか感じ、「ギリギリ間に合った」と思った。

金木犀の香りは、いつも澄んだ空気の中にある。まだ暑いと感じる気候のせいで、香りが弱いとか、香りが立ちにくいとか・・・?そういう事には詳しく無いので、よく分からないけど。とにかく、今年は唐突な主張をしてくれなかったなと、しばらくとぼけた事を思ってしまった。

あぁ違う、そうじゃなかった。原因は金木犀ではなく、私側だ。やっと気が付いた。テレワークをするようになって、出社日が減ったことが原因だ。

洗濯物を干しにベランダに出ても、それは香ってこない。買い物や、諸々の用事を近所で済ます時にも、香ってこない。この辺りでは、駅までのその道中で出会う香りだから。

出勤しないから、唐突な香りのお知らせを逃してしまったんだ。

春以降いろんなことが変わったけれど、この金木犀の一件に、あぁ今年はいつもと違う年なんだなと、改めて実感することになった。


そういえば、小学生の頃はあんまり好きな香りじゃなかったな。芳香剤的な、何かこう・・・。大きくなるにつれ、その唐突に香り始める様子に、他の花々とは違う「スイッチ」を感じ、好きになっていった。季節のスイッチであり、記憶のスイッチにもなっていった。

花のサイズに似合わず強く放つその香りが、毎年必ず、何かしらの記憶のスイッチを入れてくれる。だから、ちょっと楽しい通勤路になってたんだけど。今年はそれが無かったんだ。なんか寂しい。

でも。2020年はnoteを始めたわけで。たくさんの金木犀たちの、写真やお話に出会いたいと、気持ちが向かった。

唐突な香りはそこからは来ないけど、思いを馳せた想像の香りから、幸せな気持ちをもらっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?