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【短編小説】照れくさくて言えなかったけどさ

こんにちは。そして長らくお待たせしました。今回は、フォロワー50人達成の公約として掲げていた、オリジナル小説を発表します。クオリティに自信はありませんが、ど素人なので大目に見ていただけると幸いです。




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今日はひとつ楽しみにしていることがある。いつもの仲間とリモート飲み会をするのだ。

私田中小夜は、現在大学2年生。せっせとテーブルセッティングをしながら、すっかりリモートが当たり前になってしまったなあとしみじみ思っていた。

大学の授業も、ゼミ以外は全部オンライン。誰とも顔を合わせることなく、教授のやつれた声と淡々とした説明だけが耳を滑っていく。まるで一方通行の片思いのような。そんな感じがして、ちょっとだけ苦手に思っていた。

友人の佐藤マヤ、浜沢しおり、山本駿介、田村大地の4人とは、個々に連絡は取っていても全員集合するのはかれこれ半年ぶり。だから、すごく楽しみにしている。ああ、早く時間にならないかなあ、と思いながら過ごすこの時間さえもいじらしい。

ピコン。SNSの通知音が鳴る。ふっとスマホの画面に目を移すと、マヤからだった。「ごめん!今日、リモート飲み会厳しいかも…」のメッセージ。

嘘でしょう?!思わず叫んでしまった。せっかく、前々から約束を取り付けていたのに…ひどいじゃないか。ふつふつと、怒りの念が沸いてくる。

すると立て続けに他のメンバーからも、「私も!」「ごめん、今日俺バイトあったわ」「許せ!小夜!」とメッセージが来た。うわあ…なんてこった。まさかの全員ドタキャン。これで私の怒りにさらに火は付いた。

どうして?私、何か嫌われるようなことしちゃったかな?いや、してないはず…何を考えているんだ、みんな。怒り心頭の私は、「そうなの。みんなご自由に楽しんで」と投げやりに返信をした後、スマホをソファへ投げた。

ああもう、なんでこんなことになっちゃったんだろうと頭を抱えて考えを巡らせていると、いろいろと不審な点があった。

そういえば、この前マヤとしおりがパーティーグッズをやたらと買い込んでいた。駿介と大地も、リモート飲み会をしようよ、と声をかけたときいつもならノリノリなのに歯切れが悪かったし。他のSNSに、4人が集まっている写真があった。まさか、私に隠れて4人がカップル状態だったのか…?互いの恋バナまでする仲なのに、そんなニオイ、全くなかったしなあ。

あと、これまできっちり約束は守る子たちだったのにどうしたんだろう。おかしいぞ。何か私に隠していることがありそうだ。私の中の名探偵が、そうささやいてくる。

このまま動向を見守ってみようか。いつの間にか私の怒りは静まり、むしろこれから起きるであろうことを注視することにした。

         ***

それから5分後。またSNSの通知音が鳴った。今度は、グループチャットのトークルームに何やら動画が送られている。送り主は不明。unknownのアカウントから、10秒ほどの動画だ。怪しいと思いながらも、思わずタップしてしまった。

「これから、あなたには信じられないことが起きます。その準備はいいですか?3、2、1、スタート」と真っ黒な画面の中から、聞きなじみのある声が聞こえてきた。

何これ。そう思い動画の画面を慌てて閉じると、今度はURLが送られてきた。どうやら、そのページに飛んで何かを見ろということらしい。

仕方ないナァ、とぽちっとURLを押すとそれは動画であった。いや、ただの動画ではない。私のバースデー動画であった。

出会った頃の写真、思い出の場所…たくさんの写真やショートムービーが、私の大好きな曲をBGMにして流れてくる。思い出が、一気に蘇ってくる。それにつられて涙が零れてきた。懐かしさと、みんなに会えなかったさみしさと、普段は抑えていた感情が堰を切ったようにあふれてくる。言葉にならない感情が、嗚咽となって出てきた。

視界は涙でぼやぼや。せっかくの動画もきちんと視聴することができず、うーんと唸っていたそのとき。終わったと思っていた動画の画面が切り替わった。

「お誕生日おめでとう、小夜!」マヤ、しおり、駿介、大地、みんなの声がする。

顔を上げて画面の方を向くと、ひとりひとりからメッセージが読み上げられた。

「いつも、明るくてしっかり者の小夜に私ら助けられてたんだなあって、会ってない時に思ったんだよね。小夜だったらどう言うだろう、どんなふうにしてるだろうって。いつもいつもありがとう。」普段はツンデレで手厳しいマヤが、こんなことを言うもんだからまた乾いたはずの涙が零れ落ちてきた。もう。

「小夜がよく誘ってくれるから、僕らは今も仲がいいのかもしれないね。ありがとう。いつも、気を使ってくれるから、たまにはみんなに甘えてみてね。以上。」真面目で冷静沈着かつ、もの静かな大地まで。余計泣けてくるじゃないか。ずるい。

「小夜~!小夜のみんなを楽しませようとするところ、ひたむきで努力家なところ、ほんとに尊敬してる。大地に先に言われちゃったけど、小夜はもっとウチらに甘えてね。それでいいんだよ。小夜だからみんな離さないよ。大好き!」しおりもそんなこと言って…また涙が出てきた。どうしてくれんの、泣きすぎて顔がぐしゃぐしゃだよ。

「俺のしょうもないボケとかにツッコんでくれてありがとう。たまに?そうでもないな、けっこう助かってる。俺のメンタルがさ。それだけじゃないけど。まあ、ありがとうってことや。それだけはわかっといて。」関西出身でお調子者の駿介が大真面目にありがとう、と言っているのには思わず吹き出してしまった。駿介、ごめん。それだけは許せ。

こうしてケラケラ笑っている間に、動画は最後まで再生され、終わっていたらしく、グループ通話がかかってきた。

「小夜ごめーん!びっくりしたでしょ?」しおりが開口一番おどけて言ってみせると、駿介が「あーーっ!やっぱり小夜、泣いているわ~!」といじってきた。大地は妙にドヤ顔をしているし、マヤに至っては終始ニヤついている。

ああ、いつものみんなだ。

「もう、びっくりさせないでよね!絶交されるのかと一瞬思っちゃったじゃん」とわざと膨れっ面で拗ねたら、マヤがすかさず「絶対わざとでしょ、今の」と冷静にツッコんできた。バレバレだったか。くそう。

こうして、この年の誕生日は私にとって忘れられない思い出となった。

          ***

その後はというと、私たち5人は相変わらず連絡を取り合い、定期的に集まっている。が、ひとつ変化があった。それは、5人全員が、日頃から積極的に感謝の言葉を言うようになったこと。「照れくさくて言えなかったけどさ…」あの日振り絞った小さな勇気が、私たちの中の何かを変えた。

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これにて、フォロワー50人達成企画、完走いたしました。

フォロワー数自体は2020年の12月頃に達成されていたのですが、なかなか小説のプロット(カッコつけて言ってみた)が思い浮かばなくて。ようやく思いついて筆を進めていたら、大学の地獄のレポート期間と重なってしまい、遅れに遅れてようやく完成しました。

高校時代に、実は授業内課題として小説を書いたことがあったのですが、そのときとは緊張感が比べ物にならないほどで。だって、全世界に公開されちゃうんですよ?

そう思ったら、中途半端なものは出したくないなあと途中からこだわりはじめてしまい、一時はどうなることかと思いましたが無事、みなさまにお披露目できてよかったです。

感想等、気軽にください!今後の参考にさせていただきます。批判も、大事な意見ですので。受け止めます。

長くなってしまいましたが、これにて終わりにします。ここまで読んでいただきありがとうございました。





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