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おい、ワイアレスイヤホン

ワイアレスイヤホン。
世の中に普及し始めてしばらく経つが、僕がワイアレスイヤホン・デビューを果たしたのは一年ばかり前だろうか。割と最近である。長年の有線イヤホンの使い慣れで、ワイアレスイヤホンへ乗り変えるのはしばらく躊躇していたのだが、使い始めてみたら、まあ便利!これは革命だ!と思った。時代の寵児である。

ワイアレスイヤホンによって、あらゆる有線の煩雑さが一気に解消された。
コードが絡まる問題がないのだ。有線イヤホンでこれが一番やっかいだった。イヤホンを使い終わったあと、コードをなんとなく固めてカバンのポケットなりにしまっておくのだが、次に取り出すときには、ギュルギュルに絡まっているのはご愛嬌だ。簡易に絡まっている日もあり、複雑に絡まっている日もある。時には「どうしてこうなった?」と首を捻るぐらい複雑怪奇に絡まっていることもあり、解く(ほど)のを放棄しそうになることも。
あとは、カバンからイヤホンを取り出すと、時折同じポケットに入っているアイテムをご丁寧にも一緒に連れてきてくれることもあったが、あれも中々のありがた迷惑だった。ちょうどそのアイテムを使いたいタイミングであれば「君は気が利くなあ」と感心もしただろうが、そんなことも中々ない。
 これらの問題点が解消されただけでもかなりうれしいが、ほかにも、ランニングやウォーキング中の音楽鑑賞もワイヤレスで今やストレスフリーだ。有線の時は大変だった。時折、腕がコードにぶつかって、バシューンとものすごい勢いでイヤホンが耳から抜けることがあったが、あれにはよくビビらされた。気持ちよく音楽を聴いているのに、急に「バシューン!」と轟音を立てて耳からイヤホンが飛んでいけば、誰だって「ひゃあっ!!何!?何!?」ってなってしまう。
しかし、これももう昔の話。今これを書いていて、「そんなこともあったなあ」と懐かしく思うほどだ。ワイアレスイヤホンを手にした今、僕は無敵。これらの苦悩も、むしろ微笑ましい思い出というものである。

そんなこんなで「最強、最強 ♪」と思っていたワイアレスイヤホンだが、かれこれ1年以上使ってきて、最近になってちょっと「ムムッ!?」と感じる点が出てきた。
付き合い立ての頃は「完璧だった彼女」でも、時間が経つにつれ「ムムッ!?」という点が見えてくるのと同じかもしれない。知らんけど。
とにかく、ちょっとその愚痴を聞いてほしい。
 
一つは充電問題である。ワイアレスイヤホンは充電が必要だ。ワイアレスイヤホンには充電式のケースが付属するのだが、普段はこれにイヤホンを入れて持ち歩き、このケースに入れておくことでイヤホンが充電されるという仕組みである。そのために、あらかじめこのケースを自宅で充電しておかないといけないのだが、これがまたよく忘れてしまうのだ。とくに自宅を出発してから、「さあ音楽を聴いて気分を上げていこう!」と思ってイヤホンケースを開けると充電がなかった時のあの虚しさ。チーンとなる。思わず虚空を仰いでしまう。充電がなければ手も足もでない。昭和家電みたいに叩いたら復活するわけでもないし、ハンドパワーで充電できる訳でもないし、そもそもハンドパワーもない。どうあがいても充電がなければダメなので、帰宅するまで音楽はお預けということになる。気分を上げるどころか、テンションはダダ下がりだ。
もちろん充電を忘れていた自分がいけないのだが、こういうことがある度に、有線イヤホンを使っていたあの頃を思い出してしまう。充電不要、プラグインさえすれば必ず働いてくれる有線イヤホン。なんと心強かったか。
こんなタフな奴が長年パートナーだったこともあるのだろうが、ひとえに充電の有無次第で「働くか、働かないか」を決めてしまうワイアレスイヤホンの勤労意欲のはかなさに、時折、僕は身勝手にも憤りを感じてしまうのである。
これはきっと、今カノへの不満が出て来ると、元カノと比べてしまって、一時的に元カノが恋しくなる現象と一緒なのかもしれない。知らんけど。


もう一つある。これは完全に個人的な都合なのだが、ワイアレスイヤホンのケース。これがジーンズなんかのポケットに入れていると割とモッコリするのがちょっと気になる。ケースサイズはものによって様々だろうが、僕が持っているケースは食卓塩のビンを一回り小さくしたぐらいのサイズだ。(絶妙にわかりづらい例えだが、ほかに良いサイズ例が浮かばない)
そんなものをズボンのポケットに入れれば当然モッコリするのだし、本来リュックやカバンに入れて持ち歩けばよいことぐらいは分かっているのだが、僕は極力、リュックやカバンさえも持ち歩きたくない。いわゆる手ぶら主義だ。なので、ズボンのポケットを最大限活用して、なるべく手ぶらで出掛けるのが日頃からのモットーなのである。

しかし、そんな手ぶらのプロでも、財布とワイアレスイヤホンを一緒に持っていく時は大変だ。
ただでさえ財布はズボンのポケットでモッコリするというのに、ワイアレスイヤホンまでモッコリすると、ズボンが2か所もモッコリすることになる。こんな感じだ。

 
なんか、いけ好かない。

もちろん、できればこんな格好したくない。
しかし、「手ぶらで出掛けたい」と「ワイアレスイヤホンで音楽聴きたい」を両立させようとすると大体こうなる。

ダサい恰好をしていることは重々承知しているが、ある意味、自分にとって一番ミニマムで実用的な格好ではあるので、「まあ、しょうがない」と諦めていた。

しかし、つい先日、ある出来事がきっかけで、今まで「少し気になる」程度だった、このワイアレスイヤホンのモッコリ事情に本格的に問題意識が芽生えたのである。

その日、友人との待ち合わせで、特にカバンが必要なほどの荷物もなかったので、例のごとく、ジーンズポケットをフル活用し、財布やスマホ、ワイアレスイヤホンを各ポケットに突っこんで上の図ような格好で出掛けた。
飲みの約束だったこともあり、ルンルン気分で、「さあ音楽でも聴くかな~」と思い、ケースを開けて、ギョッとした。
残りのパワー表示が 0 である。

!!!?

充電忘れたっっ!!!

その途端、ワイアレスイヤホンはただのお荷物である。
公共の場じゃなかったら、膝から崩れ落ちていた。

勘弁してくれぇ!!

カバンやリュックがあったならまだマシだ。
そこにワイアレスイヤホンをしまえる。

しかし、今日は手ぶら。
お荷物となったワイアレスイヤホンを収納できる場所がない。

つまり、これから帰宅するまで、充電が切れ、何の役にも立たないワイアレスイヤホンをジーンズのポケットでモッコリさせておくよりほかないのである。当然ポケットの中で四六時中かさばるし、心なしか歩行の際の腿の可動域にも干渉している。
そして、何よりもモッコリしている。

これらの不自由さと引き換えに、わざわざワイアレスイヤホンを持ってきた意味とは??


これは割に合わねえ。

とりあえずワイアレスイヤホンをジーンズのポケットにしまうが、労働を放棄し、ただのお荷物になった挙句、傲慢にもズボンのポケットで堂々と存在感を放つワイアレスイヤホンに無性に腹が立ってきた。

「役に立たないのにこんなにモッコリしやがって!!」

「せめて役に立たないなら、もっとコンパクトであれ!!」と。

僕はやり場のない怒りの矛先をワイアレスイヤホンへとぶつけ始めた。

そうしていると有線イヤホンのことがまた頭をよぎる。

「有線イヤホンなら、もっとコンパクトにポケットに収まるのに!」

「有線イヤホンなら、そもそも電池切れなんてないのに!」

有線イヤホンなら、、、有線イヤホンなら、、、

もういっそのこと、ワイアレスイヤホンなんてやめて、また有線イヤホンに戻しちまおうかと思った。

急に元カノが恋しくてたまらなくなったのだ。

と、そんな出来事があった。
これこそ、まさにワイアレスイヤホンのモッコリ事情への問題意識が芽生えたきっかけである。

しかし、冷静に考えれば分かるが、ワイアレスイヤホンには何に非もない。
ひとえに怠慢で横着な扱いをした僕の非でしかない。

むしろ、こんな主人を持ったばかりに、窮屈なポケットに入れて持ち歩かれる苦行に加え、八つ当たりまでされては、ワイアレスイヤホンも心中穏やかでないだろう。ワイアレスイヤホンにここで一言お詫び申しあげる。

ごめんなさい。

僕はただただ少し愚痴りたかっただけなのだ。
「ワイアレスイヤホンはズボンのポケットに入れて持ち歩くには少しサイズが大きよねぇ」とちょっとした不満を漏らしたかっただけなのだ。
ただそれだけなのだ。

いや何の話してんだ、これ?

***


色々と愚痴も書いたが、結局のところ、ワイアレスイヤホンは偉大である。
やっぱりワイアレスイヤホンは便利で快適だ

もちろん、人によって使用感は異なるし、僕のような怠慢で横着な不届き者が使えば「ああ、もうっ!!」と思う場面もあるだろう。
しかし、たとえそうだとしても、コードレスがもたらす恩恵は大きい。
時折、感じる不自由さもあるが、それを上回る快適さがある。

今回は記事に「おい、ワイアレスイヤホン」と挑戦的な題名を付けてまで、色々と愚痴もこぼしてしてしまったが、詰まるところ、ただ愚痴を聞いてほしかっただけである。誰だってカノジョの愚痴を聞いてほしいときがあるだろう。それである。

ワイアレスイヤホンが便利で快適で非常に優れた道具ということは紛れもない事実である。これからもワイアレスイヤホンのお世話になっていくつもりだ。
ちゃんと忘れず充電して、ちゃんと大切に持ち運び、良きパートナーであるよう努力したい。元カノに未練なんか垂らしていないで、ちゃんと今カノを愛し抜きたいと思う。
 
ワイアレスイヤホン、おすすめである。
まだ持っていない人は、一度試してみてはいかがだろうか。

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