庭師になるまで03 土中環境との出会い

JINENさんの現場見学の際にでてきた”通気浸透水脈”というキーワード。
理解が追いつかないまま検索してみると、高田造園設計事務所の「雑木の庭づくり日記」にたどり着いた。

ここから見えない土中への関心を高め、庭は自然や環境問題とも延長線にあると思うようになる。

ごく個人的な楽しみでスタートした庭が、世の中のことを考えるきっかけになるなんて…

人生わからないもんだ。

雑木の庭づくり日記
高田造園の代表の高田宏臣さんは、造園・土木からスタートし、現在は傷んだ地球を再生する環境再生のトップランナーとして全国各地を飛び回っている。

HPの”雑木の庭づくり日記”には、環境再生活動に注力する前の高田さんの造園の実践が載っており、土中に配慮した庭づくりの手法として、今でも多くのヒントをもらっている。

雑木はなぜ高植えなのか?
なぜ縦穴や横溝が効果的なのか?

庭づくりをしたが、植物の調子が出ずに悩んでいる方はぜひ読んでみてほしい。


辛かった植え直し作業
木の生育不良の原因が掴めると、それまでに植えた植物も浸透性の悪い土壌に深植えではいけないと考えるのは当然のこと。

善は急げと仕事が終わった夜、雨の降る中、照明によるわずかな明かりでの掘り取り・土壌改良。
寒さと不安で心が折れそうになる。

この時が、庭づくりの経験で一番辛かった。
一度植えた植物を掘り上げる不安から、少しだけ泣きそうになった。

でも毎年、春になると白花で満開になるミツバツツジを見る度に、あの時勇気を出して良かったと心底思う。

最初に植えたミツバツツジ

健やかに育つ植物は、生産活動を通じて人に情緒をもたらしてくれるのだ。

土中環境が出版
2020年7月、いつものように本を探していると高田宏臣さんの著書が出版されていることに気づく。

タイトルは「土中環境」
これは…!興奮気味にポチる。

内容は想像を超えたスケールで、見えない土中で何が起こっているのか、土中環境を考えることは庭だけのことではなく、人間も含めた自然の健康に繋がっているのだと衝撃を受けた。

当時の僕は斎藤幸平さんの「人新生の資本論」の影響を受けていて、世の中の問題に対して何かをしなければという感情が芽生えていた。
しかし、大きな問題に対しては出来ることもなく、急激に芽生えた意識が生むのは大抵の場合は周囲との摩擦だ。

家族でのこんなエピソードがある。
当時4歳の娘が僕に言った。

娘「パパはなんで木を植えるの?」

僕「地球に良いことをしてるんだ」

娘「??」

僕「お医者さんてえらいだろ?人を救ってるから。でも地球に良いことをしているわけじゃない。木を植えるのは地球に良いことだから、地球からしたらパパはお医者さんよりえらいんだ。」

隣を見ると、妻が唖然としていた。笑
この先、僕が熱弁を始めたらちょっと危ない奴だろう。

環境問題は水掛け論になれば、政治問題へと姿を変える。
そのような状態に陥らないためには、”目線”を変えて”自分事”にすることが必要だ。

自分事とは”日々の営み”として、ただやり続けるもの。
庭でも畑でも料理でもなんだっていい。

土中環境を知って僕は、環境問題を”自分事”として捉えられるようになった。

土中環境とは?
今の自分の言葉で言えば「生き物の力を活かした方法」である。
ここに落ち葉や枝、炭などの"有機物"を使用する意味がある。

驚くべきことに、有機物の分解過程で生じる「菌糸」と呼ばれる菌類バクテリアの集合体が、植物の根と共生して”水分や養分、情報の伝達”といったやり取りをしているという。

この仕組みを理解して庭づくりに応用すると、生き物が生息しやすい環境として水と空気の動きをつくる”縦穴”や”横溝”が効果的で、そこに有機物を用いることで多種共存の循環する生物バランスが生まれ、”動的な平衡状態”が保たれる。

だから、循環のために落ち葉などの有機物が必要で、生物バランスを壊してしまう化学肥料や農薬は使わない、となる。

ちょっと早足になってしまった。
少しずつ焦点を絞って進めたい。

次回は、良い土、悪い土。


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