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警察官がやってきた日。

巷で流行している手足口病を患い、保育園をお休みしている次男。
僕は夜勤なので昼過ぎまでふたりで一緒に過ごす。
妻は半休で昼過ぎに帰ってくる。
そんな変則的なスケジュールだった。

何気ない1日のはずだった。

昼過ぎに一旦帰ってきた妻は すぐに長男を迎えに保育園へ。

するとインターホンが鳴った。
外のオートロックではなく、玄関のインターホンだ。

扉の外に誰かいる。

恐る恐る扉をあける。
そこには警察官がひとり。
僕の頭には?マークがいくつも飛び交っていた。
なにしに来た?

すると警察官が「虐待の通報がありまして。お邪魔してもよろしいですか?」と言うではないか。

子どもの泣き声で通報が入ったらしい。

えらいこっちゃ。


追いつかないアタマでとりあえず 警察官を招き入れる。

手足口病でグズっていること、母親が帰ってきたがすぐに出かけてグズっていることなどを説明する。

警察官はどこで判断したのかわからないが、すぐに虐待はないとして無線で応援はいらないと断っていた。
いいのか、僕は大悪党かもしれないぞ。

何に使うのか 家族全員の名前と生年月日を控える警察官。

僕はちゃんと全員の生年月日が言えたことに内心安堵していた。

警察官に人見知りしている様子はないが、泣き続ける次男。

警察官は何度も「こういう時代なんで」と繰り返していた。こういう時代だからすぐに通報が入ると言いたいようだ。どういう時代なのかはよくわからない。

通報されたからとりあえず来ました感がすごい警察官。
大変な仕事だ。
ひとりで来てひとりで判断していた。

僕はもちろん虐待はしていないが、なんとでも誤魔化せてしまうんじゃないかと不安になるぐらいだった。

まぁ僕の爽やかさが 功を奏したと思っておこう。

さて、通報したのは恐らく同じマンションの住人だろう。
よく泣いているからネグレクトかと思ったかな?
それとも身体的に虐待を受けていて泣いていると思ったのかな?
それともただただやかましくて、嫌がらせで通報したのかな?やかましいでは警察は動いてくれないもんね。

ダメだ、心のせまい僕は素直になれない。

通報があることは良いことだ。
こうやって救われる生命もあるんだ。
頭ではそう思っても感情は揺さぶられる。

毎日、必死に育児をしていたつもりだ。
その結果がコレか。

誰かの為に育児をしているわけじゃないけれど、褒められこそして通報されるいわれはない。
これは地域から個人への虐待ではないのか。

ダメダメ、心が荒んでいる。

通報者には虐待はなかったよーと報告がいくはずだ。
しかし、それで納得するんだろうか。
また泣いていたら通報するんじゃないだろうか。
そんな不安が募る。

でも子どもは泣くよ。
そりゃもう全力で泣くよ。
思い通りにいかない。
痛い。
苦しい。
眠たい。
お腹が空いた。
お兄ちゃんがおもちゃを貸してくれない。
色んな理由で泣くよ。

泣かないようにすることが良い育児なの?
なら僕は親として失格だろう。

ぜひとも良い育児方法を教えて欲しい。

なんだか卑屈になっている僕。
なぜこんなにもモヤッとしているのか。
虐待はなかったのだから一件落着じゃないか。

でも、警察官が言ったんだ。

「パパだけだとどうしてもねぇ?」


と言ったんだ。

パパだけだとそりゃ子どもも泣きますよねと言いたいらしい。

は?
なめるなよ。


いつのまにか「子どもも満足に見られない腑抜けの父親」というレッテルを貼られてしまったようだ。

これがモヤッとしている原因だ。

そんなことはおくびにも出さず「ハハハ」と適当に話を合わせる僕。

国家権力に負けた。
地域社会の監視に屈伏したのだ。

名誉毀損だっ!
と騒ぎ立てることもできたかもしれない。
いつもならこんなにも泣かずに楽しくやっていると言い訳もできただろう。

でも僕の心はポキッと折れていた。
ダメな父親として見られているから。
はよ帰って通報者に報告してくれと思っていた。

こちとらこれから夜勤なんだよ。
そんなところに帰宅する妻と長男。

僕が 虐待通報だってさ と伝えてると妻は笑っていた。
警察に労いの言葉も掛けていた。

不貞腐れている僕とはえらい違いだ。
そんないろんなモヤモヤを抱えたまま夜勤へ。
まったく集中できず、上の空だった。

通報は義務だ。
怪しいと思ったら通報しないといけない。
でも、通報された方はモヤッとする。

泣いているからというのはあんまりだ。

泣いている→通報されるかも→泣き止んで欲しい→イライラするという新たな虐待の芽を作ってしまっているんじゃないか。

そう感じた一連の出来事だった。

でもこの一連の出来事は誰も悪くない。

通報者の真意は不明だが、子どもが心配になったんだろう。
ありがとう。

警察官も通報があったからには出動せざるを得ない。
ご苦労さまでした。

子どもはいくら泣いてもいい。
こんなに大声で泣けるのはいまだけ。
思う存分泣いて成長しなさい。

そして僕。
いつまでも不貞腐れてないでシャキッとしなさい。
こうやって愚痴を吐き出す場があるんだから。
noteありがとう。

こんな愚痴を最後まで読んでくれたあなた。
ありがとう。

もし近所で虐待かもと感じる音や声がしたなら、一旦は通報してみよう。
通報者の情報は伝わらないから大丈夫。

助けを持っている子どもは必ずどこかにいるはずなので。

ではまた。

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