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「空気は読めます」は空気が読めない!?〜発達障害の診察〜


今回は、発達障害かどうかみてほしい、と初めて来院された患者さんの診察場面を一部ご紹介したいと思います。


発達障害の方にはいくつか特徴がありますが、そのうちコミュニケーションの障害は必須と言ってもいいでしょう。診察ではいくつかこちらから質問をしていくのですが、私の場合コミュニケーション障害の有無を尋ねる質問のうちの一つに「空気は読めるほうだと思いますか?」とダイレクトに質問します。この質問に対して「はい読めます」や「問題ないです」、「むしろ空気を読みすぎて周りに気を使って疲れてしまいます」といった答えが返ってくる方は疑ってかかります。

というのも普通発達障害かどうか心配で初めて来院された患者さんが、場の空気を読めるほうかどうか質問されたら、「問題ないとは思うんですけど」や「多分大丈夫だとは思います」と言った具合に多少言葉を濁したり、あるいは人によっては考え込んだり、あるいは隣にいる同伴者に聞いたりします。せめて「読めてはいると思います」くらいでしょうか。「はい読めます」や「問題ないです」と断定するのは、よほど自分に自信があるのか、あるいは空気が読めていないことに気づいていないのかのどちらかでしょう。また「空気を読みすぎて疲れてしまう」と答えるのも、うまく会話に入っていけない受動型のASDか、あるいは今流行りのHSPか、いずれにしても自分は空気を読みすぎてしまう、むしろ読めていると思い込んでいる、ような患者さんは疑ってかかります。因みにこういった患者さんに自己記入式の発達障害の心理検査をやってもらっても点数的には引っかかってきません。

今回は精神科の診察場面の一部をご紹介しましたが、あくまでそういった傾向があるというだけで、中にはコミュニケーションに問題のない方もいるでしょう。いずれにしても精神科の診察ではこのように患者さんの発言を鵜呑みにしないことも少なくなく、表情や視線、体の動きや話し方や声色、第三者の情報などを参考にして総合的に判断していきます。

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