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【医師コラム】女性医師との忘れられないクリスマス

■THE ALFEEのクリスマスディナーショー
私には忘れられない思い出があります。それは、東京の一流ホテルで行われたアルフィーのクリスマスディナーショーです。

クリスマスディナーショーと言っても、アルフィーはクリスマス当日にクリスマスコンサートを行っているので、正確には25日ではないのですが。まぁ、それは些細なことですね。

どうして私が行くことになったかというと、ちょうど私の所属していた小児科に重症患者が入院したため、ずっと楽しみにしていたアルフィーファンの看護師が行けなくなってしまったためです。その日、たまたま予定が空いていた私に白羽の矢が当たり、急遽先輩の女性医師と行くことになりました。

先輩の女性医師と言っても、つねに見上げているような存在でしたので、気軽に話しかけられるわけもなく、当日は大丈夫かなと思ったものです。それに、私はアルフィーのファンというわけではなかったので、アルフィーの曲を知っているわけではありません。クリスマスディナーショーに行くことが決まった1週間前から、TSUTAYAでアルフィーのCDを借りに行って聞くなどの予習が必要でした。年末のクソ忙しいときに、行きますなんて言わなきゃよかったと、当日が近づくにつれて後悔の思いは強まったものです。

それなのに、「誰かいかない?」と聞かれた時に手を上げてしまったのは、私はあだち充のタッチが好きで、中学2年生のときに映画タッチ2を見に行き、アルフィーの「君が通り過ぎたあとに」の曲を聞いて、映画館で泣いてしまった思い出があるためです。

そんな思いを抱きながら、ついに当日を迎えました。

■魅了されていく特別な時間
クリスマスディナーショー当日。私は正装して予定の30分前にホテルに着きましたが、私は緊張して何度もえづき、何度かトイレに駆け込みました。少し気持ちも落ち着いたところで、先輩が姿を現し合流。一緒に会場に入りました。

高見沢俊彦さんのピアノを聞きながら食事。それから、トークショーの流れでした。インターネットもない時代。アルフィーの情報は音楽番組を見る、音楽雑誌を買う、ラジオを聞く、コンサートに行く、ファンクラブに入るぐらいだったでしょう。知らない話が聞ける。そして、それはこの場でしか聞けない。今じゃ、TV番組は後から見逃し配信で見られるので時代が違います。

クリスマスディナーショーに来る人は、みんながアルフィーのファンです。物凄い圧でした。そこまでファンでなかった私でさえ、学会での有識者の話がスッと自分の中に入ってくるような感覚で虜になってしまいました。

アルフィーのデビュー曲は新聞の1面広告で宣伝されたのにも関わらず、そこから売れず。ずっと下積み生活に入ってしまったそうです。研ナオコさんや吉田拓郎さんについて回ったり、何をやってもうまくいかなかったり、挙げ句の果てに迷走して、桜井さんは高見沢さんに騙されて角刈りにして事務所の社長に震えるほど怒られたというような話をしてくださいました。

まさに緊張と緩和の話術。虜にならない方がおかしいぐらいの魅力あふれる方々です。もとからファンの人たちにしてみれば、もっと好きになったでしょう。

■ショーの後の出来事
ショーでは当然、歌も歌ってくれます。アルフィーの曲はめちゃくちゃよかったです。そして、リクエストのとき、先輩が指名されたのですが、緊張で答えられない様子でした。そこで私が同じテーブルにいるということで、代わりに「君が通り過ぎたあとに」をリクエストしました。リクエストした曲を本当に演奏してくれて最高でした。

後から聞けば先輩は、「メリーアン」が聞きたかったそうですが、緊張して声が出なかった。高見沢さまと何度も何度も目があったけど、視線を逸らすしかなかったと言っていました。
ホテルのラウンジで先輩は、ディナーショーの興奮が冷めやらず。いつも見上げている先輩が、こんなにも話すので、楽しく私は聞いていました。

1997年に心理学者のアーサー・アーロン氏が発表した恋に落ちる魔法の論文というのがあります。私はそれを意識しているわけではないのですが、人の目を見て話を聞くのが癖ようです。そのため、私たちはずっと視線があったまま話をしていました。

そんな時、急に先輩が、
「あなた、私のこと好きなの?」
と、聞いてきます。私は突然のことに戸惑ってしまいます。
「そんな、いえいえ」
「高見沢さまたちの話も目を輝かせて聞いていたけどね。もう一度聞くわ。あなた、私のこと好きなの?」
じっと見つめながら聞いてくるので、「え?これは誘われているの?」と、心が揺さぶられましたが、緊張して声が出せず…。

沈黙のあと。先輩がフッとほほ笑みます。
「あーあ、あなたが結婚していなければね」
そう言われて、私はドキッとしてしまい、思わずその気になるところでした。
高見沢さんに魅かれた先輩に。

後日、クリスマスディナーショーに行けなかった看護師から、
「先輩に誘われたのに断ったんだって?」
そんな風に言われました。何もなかったからでしょう。

今だに忘れられないクリスマスディナーショーでした。

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