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金丸耕平の休日--伊勢老舗旅館編--1話〜5話

1話

金丸「後どれくらいでつきそうかな?」仁科「先生もうしばらくでございます。」部下というか後輩の医師である仁科貴一(にしなきいち)は金丸(かなまるこうへい)から東洋の様々な精神療法を学んでいる。
2人は1週間の休みを使って三重県の伊勢に向かった。

バスガイド「当車はもうまもなく、サンセット伊勢に到着致します。長旅ご苦労様でした。」金丸「いやいや、ようやくだね。」仁科「はい、サンセット伊勢は有名な老舗旅館でして、先生も気に入っていただけると思います。」金丸「私はなんでも大丈夫だよ(笑)」

なんとも老舗感そのものの玄関にようやく到着した。旅館店主「お待ちしておりました。長旅ご苦労様でした。」金丸「いえいえ(笑)ありがとうございます」旅館店主「東京からですので、お疲れでしょう、ささ、すぐにお部屋にご案内致しましょう。」
金丸「宜しくお願いします。仁科君いこうか」仁科「はい、先生」旅館店主「おーい、マネージャー」旅館マネージャー「はい」旅館店主「次のお客様頼んだよ。」旅館マネージャー「はい」旅館店主「ささ、金丸様、こちらでございます。」

旺盛な客室に迎えられて金丸は上機嫌の様子で、仁科もつられて2人とも気分はあがっている。部屋に入ると海を一望できる広々としていて、日常を忘れさせてくれるくつろぎ感で満たされている部屋であった。旅館店主「それでは、ごゆっくりお過ごし下さいませ。」金丸、仁科「ありがとうございます。」
旅館店主が出ていき2人は荷物を一通りまとめ始めた。廊下の方からにわかであるが声が聞こえている。旅館マネージャー「こちらでございます。」次のお客様が案内されているようだ。「あなたすごいわねここ」「そうだね」旅館マネージャー「江戸時代からになりますが、まだまだ建物はびくともしていませんよ(笑)」

金丸の部屋に女将が入ってきた。ふすまを開けた女将が「本日は遠い所から来ていただきありがとうございます。」女将は綺麗と質素の間くらいの色使いをした老舗旅館ならぬ絶妙な着物に包まれながら、深々とおじきによるあいさつを金丸と仁科にほどこした。女将「お二人とも端正なお顔立ちでしてね(笑)」金丸「いえいえ、照れますな(笑)」仁科「お上手ですね」女将のお世辞を抜いて見ても金丸は51歳にしては若い、顔立ちは平均よりちょっとだけ端正な方ではある。仁科に関していえば、端正な顔立ちと言える。31歳とまだ若い。2人とも東大卒業生にして外見も割と良いとは嫌味な2人ではある。
女将「伊勢神宮はもう行かれました?」金丸「明日行こうと思っています」仁科「お昼過ぎに行く予定です。」女将「そうですか、おかげ横丁も良いですよ。当旅館は0時には閉めてしまいますのでそれまでにはお帰り下さい。朝は7時から空いておりますので宜しくお願いします。」ひと通りの説明が終わると女将は部屋を出た。
2人はしばらくくつろいだ。金丸「17時から夕食だから、先に私は温泉に入ってくるよ。」仁科「はい、私は散歩してから向かいます。」

ガラガラガラっ温泉の扉を開けると室内と露天がガラス扉に仕切られた老舗感独特の重厚感を感じずにはいられない温泉であった。金丸は身体をひと通り洗うと、露天風呂の方へ向かった。
金丸「プァー気持ちいぃな」露天は最高といった気分に金丸は日々の疲れが一気にふっ飛ぶのを感じた。金丸が露天に入っていると、なにやら動物のような鳴き声が聞こえてきた。

「コンコンコン、コンコンコン」金丸「ん!?犬か?猫か?」しかし、犬ならワンだし猫でも違う。狐か?するとまた、「コンコンコン、コンコンコン」と聞いた事のない鳴き声がした。辺りを見渡しても何もいなかった。

1時間ほど温泉でくつろいだあと温泉を出た金丸は廊下にいた旅館マネージャーに聞いてみた。金丸「温泉気持ち良かったですよ。」旅館マネージャー「ありがとうございます。」
金丸「ところで露天に入っているとコンコンコン、コンコンコンと鳴き声が聞こえてきたのですが、なんの動物でしょうか?」旅館マネージャー「はい!?」旅館マネージャーは不思議な顔をした。旅館マネージャー「確かにこの旅館の露天は林になっていますが、動物は犬の一匹も居ませんよ。道路沿いはフェンスで仕切られていて誰も入れないようになっていますので。ましてやこの敷地に狐はいませんよ。」金丸「そっ!そうですか」金丸は慌てた様子を隠すように、金丸「気のせいですね(笑)」といい部屋に戻った。途中露天に向かう仁科ともすれ違った。金丸「お先に(笑)」仁科「はい」

金丸(何だったんだあの鳴き声は、、)しばらくすると仁科が部屋に戻ってきた。金丸「仁科君露天入った?」仁科「はい、気持ち良かったですよ先生(笑)」金丸「なんかコンコンコンて鳴く音しなかった??」仁科「へっ!?しませんよ、どうしたんですか先生(笑)」金丸「だっだよね、長旅で疲れてるんだね(笑)」仁科「そうですね(笑)そろそろ夕食ですし、ゆっくり癒やされましょう先生」金丸「今日は飲むぞ、なっ仁科くん(笑)」仁科「そうですね先生」

女将「夕食をお持ちいたしました。」金丸「大きな伊勢エビですね。」仁科「すごいですね。」女将「今朝とれたばかりでございます。」女将は小舟に大きな伊勢エビを2尾のせて運んできた。やはり伊勢にきたらまずは食べたい食材ですね(笑)。

2話
翌朝私達は早速伊勢神宮にお参りに来た。金丸「今日は気持ちいい天気だね(笑)」仁科「そうですね。」本日は晴天なり、と言わんばかりの快晴であった。

大きな鳥居をくぐると小さな橋があり、参拝者が広々と観光続きに歩いている。金丸達も景色を眺めながら歩いている。
金丸「伊勢もなんとも言えない自然の雰囲気があるね仁科君」仁科「本当ですね先生。」2人は段々林の中に入り、神宮の近くまで到着しそうであった。
すると後ろの方から声がしてきた。「仁科、仁科じゃないか!?」振り返る仁科「あっ!倉科!!」倉科「ひっさしぶりだな!!(笑)」仁科「高校ぶり!(笑)」倉科「隣にいらっしゃるのは??」仁科「金丸先生だよ、私の直々の上司みたいな感じかな。」倉科「どうもはじめまして!仁科の高校の同級生の倉科太鳳(くらしなたいほう)と申します。」
金丸「はじめまして金丸耕平です。」金丸は倉科のしっかりとした身体つきと硬派な感じの凛々しさに見とれていた。仁科「1人かい?」倉科「嫁さんと息子と一緒だよ。」2人は思い出話にはなを咲かせていた。

「コンコンコン、コンコンコン」金丸(あれ!?また聞こえる)金丸は振り返る。
すると狐の仮面をかぶった巫女さんのような白と赤の格好をした可愛らしい女の子がこちらを見ていた。女の子の隣には白い親狐がお座りの姿勢でじっとこちらを見ている。女の子と白い親狐の前に白い子狐が戯れている。
女の子は金丸に向かって、指で狐を作って、その指でジャンケンのグーパー、グーパーをしてあいさつのような事をしている。金丸は思わず近づいていった。
狐仮面の女の子「おじさん私達が見えるの?」金丸「みっ見えるよ、君と白い狐が二匹!?」狐仮面の女の子「へー珍しいわね」金丸「えっ!?みんな見えてないのか!?」金丸は昨晩の露天の声が目の前にいる白い狐だと理解した。狐仮面の女の子「そうよ、こっちへ来て」

金丸は女の子に手を引っ張られながら林の中に案内されている。
小走りな女の子と金丸の後ろを追いかけるように、白い親狐は子狐の後ろ首をくわえながら追いかけている。
何故か子狐は嬉しそうにしている。
金丸「どっどこに連れて行くくんだぃ?」狐仮面の女の子「いいからついてきて」金丸「勝手だなぁ、、」

しばらく走ると井戸があった、井戸の周りには赤と白の小さな鳥居が交互に井戸を囲むように建てられていた。人が通れるくらいの鳥居を通ると、神格な感じの屋根付きの井戸があった。狐仮面の女の子「覗いてみて」金丸「なんかあるの?」女の子「いいから早く」金丸「わっ!わかったよ」
金丸は女の子に言われた通り神格な井戸の中を前屈みになりながら覗いてみた。しかし中を覗いても真っ暗で深い井戸が続いているだけだった。と思っていたら井戸の中からピカピカと光が湧き出した。
金丸「えっ!まっまぶしぃ」するとまた光が段々消えていき、何故か会議室が現れた。

すると金丸「私は賛同できません。」あれっなんで私がいるんだ、、金丸はまるで幽体離脱したように井戸から会議室の自分達を見ている、そこには先日の医師会の様子であった。
伊藤「なっ何をいっているんだ君はっ!!」、、伊藤「えー金丸に関しては後日こちらのほうで処分を決めていきたいと思います、、」金丸「おいおい、先日の医師会だなこれ」

金丸は少し苦しくなってきたので井戸から顔を出した。
すると景色は変わり人混みがあり、後ろの方から声がする。仁科「先生、先生!一体どこ行ってたんですか?探しましたよ?」
金丸「んっ!?あぁ、とっトイレだよ!お腹壊したみたい(笑)悪い悪いっ」仁科「もー!倉科と色々話してたら居なくなっていたからびっくりしましたよ」金丸「あっ倉科君は?」仁科「もう帰りましたよ」
金丸「しかし、びっくりしたな」仁科「何がですか?」金丸「んっ?なっ何でもないよ(笑)」仁科「も〜先生最近大丈夫ですか?さっ神宮に行きましょう」金丸「あっあぁ、、」

神宮に向かう道中、仁科は倉科の事を考えていた。
仁科にとって倉科は同じ進学校のライバルと考えていた。といっても仁科はクラスでいつも僅差で2番だった、学問と運動で倉科はいつも僅差で1番だった。たまに仁科が勝つこともあったが、東京で有名な難関校に通う2人は言わば高校生の中の超エリートでもある。仁科「倉科かぁ、、、」道中少し前方を見上げながら仁科は呟いた、その呟きの中には当時のライバルを少し敬うような感覚もあった。
一方金丸の方は(神隠しって大人になっても起こるのか、?それとも、疲れ過ぎているのか?、嫌々、あれは間違いなく現実だったしな、とんだ休日だなぁ、三重県伊勢市伊勢神宮かぁ、、神様でもいるのか、)金丸は頭の中で色々な思いにかられていたのであった。

3話
金丸は眠っていた。
仁科と2人で伊勢神宮とおかげ横丁を歩きまわりヘトヘトになった後2人は旅館に戻り、温泉につかり、おもてなしされた豪華な夕食を頂き、少し雑談でもしながら布団に入った。

金丸は夢の中にいた。
真っ暗な闇の中に仁科が浮きながら歩いている。まるで何もなく暗闇しかない宇宙空間を歩いているように、金丸「仁科、仁科、そっちじゃない、行くなっ、行くな仁科っ!!」金丸は悪夢にうなされるように叫んだ、布団をかきあげ金丸は起き上がる、額には少し汗をかいでいた。金丸「ハァハァ、なんだ夢か、、」金丸は隣で眠る仁科を見て更に安心した。

朝になり金丸は新聞を見ながら朝食をとっていた。新聞には伊勢新聞と書いてある。金丸「物騒だなぁ、、」金丸は呟いた。仁科「何がですか先生?」金丸「いや伊勢市内で2件の殺人が立て続けに起きたらしいよ」仁科「そりゃ物騒ですね、」金丸は少し暗いのでカーテンを全部開けた。
金丸「それは、そうとなんでパトカーがあんなにいるんだ」玄関には唐突に止められた3台の回転灯のついたパトカーが止まっていた。金丸「まさか犯人がいるのかぃ」金丸は少し冗談ぽく言ってみせた。
コンコンと金丸と仁科の部屋を叩く音がする。すると旅館の店主がものすごく心配そうな顔で詰め寄り、旅館の店主「お二人は大丈夫でしたでしょうか?」と聞く、金丸「なにかあったんですか?」金丸は旅館店主の血の気の引いた顔を見て逆に驚いている。旅館店主の後ろからひときわ凛々しい顔立ちの男性がツカツカ歩いて来た。
金丸「あれっきっ君は!?」倉科「昨日はどうも」仁科「くっ倉科じゃないか!?」倉科「仁科、金丸さんも無事で良かった。」警官「倉科刑事、倉科刑事こっちの部屋です!」地元の警官であろう警官が、東京警視庁の剛腕刑事の倉科を呼んでいる。
倉科「まさか休みの日まで事件があるなんてなっ」倉科は少しはにかみながら金丸と仁科に呟きながら隣の隣の部屋に歩いていく。警視庁総本部は伊勢にいる日本の刑事のトップレベルにいる倉科にすぐにヘルプの連絡をしていた。
金丸「隣の隣の部屋って私たちが旅館に到着した後に来た夫婦の部屋だね。」仁科「ええ」旅館店主「そっそうです。非常に中の良い夫婦でしたよ」旅館マネージャーが血の気の引いた顔で走って来て旅館店主に向かって。旅館マネージャー「マスコミも来てます。」旅館店主「そうか、不味いことになったな」サンセット伊勢は伊勢の中でもブランド化された高級老舗旅館、そんな老舗旅館の不祥事はマスコミはほっとかない。
金丸「一体何があったのですか?」旅館店主「殺人です。」旅館マネージャー「困りましたね。」すると後ろから女将も駆けつけていたらしく、女将「私が朝食の準備が出来た事を報告しにいくと2人は血だらけで倒れていました。私は慌ててすぐに旅館店主と旅館マネージャーに報告して警察を呼びました。」

老舗旅館は朝から異様な空気に包まれていた。倉科は大声で指揮をとっている。倉科「この部屋の隅々まで調べろ、そして、旅館全員のアリバイを洗え、まずは一人ひとり聞き込みにまわれ、外部の人間は1人も旅館に入れるな!」地元警官7人「はい!!」

4話
サウンドがデジタルテレビから流れだす。「チャラララリーラリィ」CMが終わると伊勢テレビのマークが映り終わり画面からアナウンサーが話しだした。
宮崎アナ「剣持さん、剣持さん、聞こえますか!?」伊勢テレビの名物中年男性アナウンサーの宮崎は話しかけた。
剣持リポーター「はい、こちら現場の剣持です!」
中継先へと画面が切り替わる。剣持は中堅男性リポーターである。宮崎アナ「現場どういった状況でしょうか?」剣持「はい!事件は2時間前に発覚したばかりで、私くし一同は現場に踏み込むことは出来ていません!ですが警察車両が時間ごとに増しておりまして、非常に緊迫したじょっ、んっ、あっ!たった今、倉科刑事、倉科刑事が玄関から出て来ました!」宮崎アナ「接触できますかっ!?」剣持リポーター「倉科刑事!倉科刑事!」倉科「なんだっ!」剣持リポーター「どういった状況でしょうか!?」
倉科「マスコミ説明はまだだ!!」倉科は際立った表情で刑事用紺のクラウンに乗りそそくさと立ち去っていった。

倉科が出た数分後にパトカーがやってきた。後部座席からベージュのコートを羽織った男が降りてきた。川下「すごいマスコミの量だな(笑)」カメラのシャッターを押すカシャッパシャというシャッター音が無数に散らばっている。川下は車から降りるとマスコミを避けそそくさに玄関に入っていった。ガラガラガラ自動ドアが開いた。
旅館店主「川下さんお待ちしておりました。」川下「鳥羽ちゃん久しぶり!」旅館店主「お久しぶりです。ささ、皆様待ち構えておりますので。」伊勢警察では年間の行事でも利用している老舗旅館サンセット伊勢は馴染み中の馴染みであり、川下は旅館店主を鳥羽ちゃん呼ばわりするほどの常連である。
川下は2階の事件現場へと向かう、エレベーターの前で敬礼をする警官、川下「お疲っ」地元警官「川下警部ご苦労様です!」

川下は現場に向かう途中妙な感覚に襲われていた。川下(なんなんだこの異様な空気は、、この事件嫌な予感がするな、)川下は50歳を過ぎたベテラン警部である。数々の事件を見てきた彼ならではの勘ともいえる。

2階に上がると扉のあいた部屋に立ち入り禁止のテープやコーンがあり、ひと目で現場がわかった。中に入るなり、地元警官芝井「川下警部!」川下「お疲っ!倉科さんは?」芝井「たったさっき、帰られました。」川下「帰った?、そうか、そんで状況説明してくれ」芝井「はい、女性の方は心肺停止してもう帰りません、ですが男性の方は重症ではあるが、一命を取り留めているみたいで、現在の所病室で意識は戻っていません。」川下「そうか、凶器は見つかったか?」芝井「いえ、見つかっていません。」川下「刺し傷は何箇所ある?」芝井「女性は4箇所男性は3箇所あります。」川下「チッ!殺人鬼め」川下は思わず下打ちをした。川下(この事件だけだな、他の2件の殺人は女性のみ、この事件だけ、男性がいるか、、匂う嫌な匂いがプンプンする)
川下は最近起きた2件の殺人犯も追っていた。川下「どう思う?2件の殺人と関連していると思うか?」芝井「わっわかりませんっ!」川下「そうか、」川下はなにか考察している表情で渋い声を出した。

川下「なにか出たか?」芝井「部屋から何故か蛇の抜け殻の鱗の破片が落ちていました。」川下「なにっ!?どこに落ちていた。」芝井「2つあるベッドのこちら側の下の床に落ちていました。」川下「争った時に落ちたのか?念の為旅館側に蛇を飼っていないか、持ち込みはないかも聴き込んでくれ。」芝井「はい。」川下(なぜこんなところに蛇の鱗が、、)川下は少し考えながら、周りを見渡している。他の地元警官7人も指紋取りや毛髪採取などやれることを徹底していた。 

5話

2022年4月27日、老舗旅館サンセット伊勢でおきた事件のその日、伊勢市内は薄暗い空に覆われていた。地上付近にも薄暗い霧がかった天気に包まれていた。伊勢にしては珍しい天気であった。

話の続きは事件発覚から4時間後……金丸「仁科くん、仁科くん行こうよ、、」仁科「いやぁ、今日はやめたほうが、、」金丸「せっかく伊勢に来たんだから、ね。」仁科「確かにそうですね。」2人は3日目に予定していたスケジュールを渋々行う事にした。警察のアリバイ捜査も終わった2人は、夫婦岩のある二見興玉神社を目指した。

サンセット伊勢から二見興玉神社へ直通の小型バスに乗った2人、少し走った所で金丸が仁科に話しかけた。

金丸「仁科くんも早く結婚しなよ!」仁科「先生も早く過去は忘れたほうがいいじゃないですか?」売り言葉に買い言葉とはこの事と言わんばかりで仁科は返した。思わず作者の私も笑ってしまった。(笑)

仁科「先生たちは子供さんもいらっしゃられなかったんですよね?」金丸「うん」仁科「なら天国の奥様もきっと、」キィッ!キキィィィ!、金丸「あっ!危ない!!」仁科が話している途中だった、突然運転手はハンドルを急旋回した!?バスは道路の二車線の真ん中辺りで斜めに停車している。運転手「なんだ、猫かっ!?」運転手は金丸と仁科に謝った後、目的地の二見興玉神社に向かった。

二見興玉神社に到着した2人は運転手に手を振り神社の入口へと向かった。

海に面している神社とは珍しいものだなと思いながら歩いている金丸はその景色に見とれていた。

金丸「もうすぐ見えてくる筈だよ。仁科くん。」仁科「夫婦岩ですか?」金丸「うん、富士山が見えたら縁起がいいらしいね。」

金丸は事前に調べておいた情報を後輩に教えているつもりで話している。仁科「富士山ですか。」仁科はその金丸の心中を察していてあえて合わせ言葉をしていた。

金丸「ごめん、トイレ」仁科「え?待ってますね」金丸「ごめん、ごめん」

金丸は神社にありがちなコンクリート打放しのトイレで立ちながら用を済ましていた。

もうすぐ終わる瞬間だった。金丸はふいに窓の方を見た。金丸「え!!」

金丸は慌てながら目をこする。何度こすっても白い親狐が窓にお座りしてこっちを見ている。

金丸「あれっ!?」金丸が話しかけた瞬間白い親狐は窓からピョイッと降りて林のほうに走っていく、金丸はズボンを直しながら窓からころげそうになりながら追いかける。

金丸「足早いな、あの狐…」50歳を過ぎた金丸が遅いのである。金丸は仁科をも忘れていた。

しばらく走っていると、またあの神格な井戸にたどり着いた。

金丸(なんで、伊勢神宮にあった井戸がここにあるんだ?)

狐仮面の女の子「バァ!」金丸「ウワァッ!なんだよぉ」狐仮面の女の子は神格な井戸の真後ろにかがみながら隠れていて、金丸が来た瞬間顔を出した。その姿には幼子の愛らしさもある。

すると、狐仮面の女の子の背後の10メートルはある木の5メートル辺りの枝に若き青年がぶら下がっている、まるでブランコにぶら下がっているように。しかもその青年は段々こっちに近づいてきている。

金丸「えっ!!?えー!浮いてんじゃん?!」金丸の目は点になってる。青年は木から階段を降りるように空中を歩いている。青年が歩くたびに足に波紋が現れたり消えたりしている。まるで海を歩いているように波打つ青白い波紋が見える。

狐仮面の女の子は振り返る。狐仮面の女の子「お兄ちゃん!いたの?」青年はゆっくり地上に降りてきて、狐仮面の女の子の頭を撫でるように触って「いたよ」と微笑む。

ヤマトタケル「金丸さん、妹を見つけて下さってありがとうございます。ミコも喜んでいました。」

金丸「えっ!!あっ!はい。」金丸はその青年の神々しさに見とれていた。青年は透き通るような白い肌に、綺麗すぎる瞳、髪は女性のような艶があり、男性なのにロングの髪の毛が似合い過ぎている。





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