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蟻にとっての幸せ

少し離れた場所にあるスーパーは、店員さんが明るく気持ちよい対応をしてくれる。きっと良い商品を扱っているかもしれないと、雨上がりだけれど足を延ばした。

野菜を沢山買ってきた。ゴミ袋が高いので、大きなレタスの外側の葉を捨ててこられたら良かったのだが、仕方がない。家に着いて汚れた外葉を剥がすと、勢いよく蟻が出てきた。

年々アレルギーが酷くなっている身としては、蟻が存在できていることが安心につながった。

この蟻は、どれだけ不安な時間を過ごしたのだろう。
うっかりトラックの荷台で遊んでいたら、ドアを閉められて走り出してしまったような感覚だろうか。


「一寸の虫にも五分の魂」


この慌てぶりを見たら、驚くという感情を持っているのは間違いない。何とか表に出せないか、プラスチックトレーで運ぼうと試みる。しかし、蟻から見たらいつも仲間をつぶしていく巨人にしか見えていないだろう。


昔から祖母に「虫を殺さなくてはいけない時は、一気につぶしなさい。苦しめてはいけないよ」と言われていた。蟻は害がないので、なんとか逃がしたい。


その思いは伝わらず、蟻は排水溝に逃げてしまった。仕方ないので諦めて、レタスを洗って食事の支度をしていた。すると大分弱った状態で蟻が這い出てきた。


もう一度、プラスチックトレーに乗せようと試みるが、弱りながらも必死で逃げる。声を掛けても伝わらない。それでもやっとトレーに乗せてベランダに逃がそうとするも、窓ガラスと網戸の間のレールに落ちてしまいうまく出れなくなっていた。


これ以上触ってしまったら、助けた意味がなくなるかもしれない。そう思い、換気を諦め、窓ガラスだけを閉めた。


この行為は、蟻にとって良かったのだろうか。ケガをしたかもしれない。コンクリートだらけの見知らぬ土地で、餌を探せるのだろうか。一緒に生活できる仲間に合流できるのだろうか。


自然からみたら、私たちは蟻以下の大きさだ。


とりあえず、巨人から逃げられた安心感で、ホッとしてくれていたらいいなと思った。




最後までご覧いただきありがとうございました。


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