イトマケイ

創作小説を書くのが大好きな人。 読むのも大好き。絵も描く。

イトマケイ

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最近の記事

くびがおちました

くびがおちました ぽとりと椿のように落ちました くびがおちました 両の手に頭がころりと落ちました くびがおちました 逆さまに、横に、くるりとしました くびがおちました これでようやく真っ平だと笑いました くびがおちました ポトリと落とされてしまいました これで一安心です

    • アパタイトを砕く。

      瞳に魅入られた狂信者の話 (部誌に載せた物です)                   汗が流れ落ちる、暑くるしい夏の日だった。蝉の声が脳内で木霊する。遠くから聞こえる運動部の声が、日常を思い起こさせた。眩しい夏日が、硝子戸越しに彼女を映す。彼女の青い瞳が映る。酷く、冷えた色をしていた。冷えた教室の所為ではない、夏の暑さに侵されないそれを特等席で見ていた。      人形のようだと思った。艶やかな黒髪に、透けるような肌、そこに映える赤い唇。そして何より、冷たく輝くシアンの瞳が

      • 嘘を食らわば愛まで

        とある少女と誘拐犯の会話 ※部誌に載せたものの再録  ええ、ええ、申し上げます。  わたくしは貴方に何でもお伝えしましょう。  貴方が知りたい家のこと、お金のこと、わたくしが話せることならいくらでもお話しましょう。  それが、わたくしにできる最大の方法でございます。  ……え? あまりにも平然としすぎて怪しい?  それは、それは、申し訳ございません。少し喋りすぎましたね。  わたくし、これでも一令嬢で御座いますから、このような状況に出くわす機会が多いのです。そのせいでしょう

        • 真夜中のオムニバス

          「ねぇ、知ってる?真夜中の映画館の噂。  真夜中の映画館に迷い込んで、そこで存在しない映画を見る噂」   「知ってる、有名な話だよな。  ところでさ、この映画ってどういうのなの?」   「さあ?詳しくは知らないけど、オムニバス形式らしいよ」   「オムニバス?」   「短編集みたいなものだよ」   「へぇ、面白いかな」   「そうだといいね」   「あ、もう始まる」    ブ————————————  ざばん、ざばん  潮の匂いが辺りを包む。  さらさらした波が椅子の脚を

        くびがおちました

          無題

          色んな物になる夢の話 がぱっと空を開ける音がした。 大きな何か、やわっこい様で妙に硬っ苦しい先っぽが遠慮なく世界を漂う。そいつは俺を選んだ。 今日の使い捨ては俺だった。 空の向こう側にはまた空があった。世界はこうやってマトリョーシカ式なのかと感じた。はて?マトリョーシカとはなんだったか。 そうこうしてるうちに、そいつは俺の体を押し潰しそうになりながら足に火を付ける。皆そうだった。皆火炙りの刑に処された。そいつはそれを見るのが大層好きらしい。一日に一体何人連れて行かれたか。

          ココアシガレット

          半年ぐらい前に書いた話です。 大人に成りきれない子どもたちの、恋のような話 「こーら、煙草は校則違反ですよ」  青が視界を染める中に艶やかな黒が映る。さらさらとした絹糸の奥に彼を覗く瞳が輝く。 「……煙草じゃねぇよ」  からついた口を動かして、咥えたそれを見せつける。 「ココアシガレット」 「なにそれ」 「煙草の形した菓子」  彼女はそれをまじまじと観察する。 「ふーん、それって美味しい?」 「さあ?——食う?」  彼女の目前に子供っぽいパッケージが晒される。

          ココアシガレット

          隣人に壁ドンされた。

           なあ、聞いてくれよ。こないださーめっちゃ大変だったんだよ。え?面倒臭いとか言うなよ〜。てか話すわ。  俺ん家の隣にさ、新しい人が引っ越してきたんだよ。そう!あのオンボロアパート。俺と入れ違いになった端の部屋。いやー、もうちょい待てば端っこ狙えたのにな〜!  まあそれは置いといて。引っ越しの挨拶とか今のご時世じゃほとんど無いじゃん?だからそのお隣さんとも会うのは、たまたま出かける時が一緒ぐらいしか無いわけ。あ、美人さんだったよ。女の人。いやいや、そんな少女漫画みたいな展開、

          隣人に壁ドンされた。