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AI読みの危惧。読了日記『AIに負けない子どもを育てる』




本の紹介

次の文章は読解力を確認するために本著内で紹介された一文である。

江戸が当時世界最大級の商業都市で、「読み書きそろばん」が就職や出世に有利だったことや寺子屋の普及などにより、日本は 2 0 0年前から際立って識字率が高い国です。

『AIに負けない子どもを育てる』


この文章から何が読み取れるだろうか?

噛み砕くとこのような内容である。

「江戸ってすごい商売が盛んな都市だよ。そこで働いたり出世するためには読み書きそろばんなどの勉強ができることが自分の人生にとって有利だよ。また、寺子屋っていう学習機関が広がったんだよ。つまり読み書き算盤が大事な風土と、学習期間の普及によって、日本という国は字を読める割合が高いよね!」

という意味合いが著者が実施しているRSTと言うテストをもとに推計すると25%は読み取れない!何言ってるかわからない!無理!!となるらしい。文章が何を意味しているかわからない大人、そして子どもがかなりの割合いる現状に警鐘を鳴らし、この課題に対する具体的取り組みについて述べているのがこの本である。AIにセンター入試を解かせる取り組みを通して、読解力について考察している。教育的なアプローチが多いため、学校の先生は読むことをお勧めする。出来ない生徒に対しても、できる生徒に対しても関わり方が変わる人がいると思われる。

考えさせられたこと

以前、同僚と話題になったことがある。「ノートを書かせる必要があるのかどうか。」相手の先生は「必要ない」との意見。板書をする際に、都度都度顔をあげ、その度に時間がかかる。顔をあげて下すというプロセスに無駄があるのではないか。と言う意見であった。私もICTツールを使うことが多かったので、概ね同意したのだが、やや自分の中で腑に落ちかねていた。書くという作業を蔑ろにすることは如何なものかと疑問を抱いた。しかし、その疑問を解消する答えを持ち合わせていなかったし、何より授業でノートを取るという作業は事実膨大な時間を必要とするため、やはりプリントやクロームブックに依拠した授業が多かった。

その答えを著者は学生時代の教授であった阿部謹也の言葉を引用する。

「君たちはノートを写す、ということなど極めて退屈で無意味な作業だと思うのだろう。だが、皮肉なことに、君たちが侮る作業を機械に頼ることによって、実は君たち自身の質を低下させていることに気づいていない」

『AIに負けない子どもを育てる』

プリントを配布すれば、時間はかからないし、差も生まれない。その代わりキーワードだけを検索し、埋める技術だけがあり、文を読み取ることができなくてもキーワードでなんとかなる子どもが生まれてしまうと著者はいう
。手間が時間をかけることが読解力を伸ばすことに繋がると暗に示しているように感じた。

この指摘ののち、著者はこう主張する。

日本の先生は真面目なので、評価が高い先生が使っている方法をすぐに取り入れます。授業中のプリント・ワークシートの多用は、教員 1人 1台ずつのパソコンと職員室にコピー機が導入されて以降急速に全国で広まった現象です。

『AIに負けない子どもを育てる』




この主張については物申したい。さも先生の真面目が皮肉にも・・・みたいなニュアンスで書いてあるが、本質的な課題は現状の教育制度である。限られた字数で取り組ませようというコンセプトが明らかに時間に見合っていないのだ。多すぎる。その中で先生方が苦慮した結果、生まれた手段がプリントやITツールだと考える。決して先生方の怠慢ではないと思う。限られた時間の中で伝え、考えさせなければならぬ多くのことがある中で生まれた苦肉の策がプリント授業だ。文科省なんとかしろよ本当。てかこの最初の文章は著者は教員を馬鹿にしている感じがしてすごく不愉快だった。

使えると思った部分


・塾に通っていないこの思いついたことの多様性を褒め、塾で答えを知っている人間には論理的な説明を求める。
・板書は授業の流れがわかるように工夫する。授業の目標と参照すべき定義は残す。
・教育の科学研究所でRSTいつか職場でやってみたい。
・読解力を上げるための遊び。

簡単な文に、いろいろな言葉を足していくゲームです。ちょっとやってみますね。係雪がふった。白い雪がふった。白い雪がたくさんふった。朝、白い雪がたくさんふった。きのうの朝、白い雪がたくさんふった。きのうの朝、白いこな雪がたくさんふった。きのうの朝、まっ白いこな雪がたくさんふった。  わかりますか。前の人が言った文に、一つだけ言葉を足して、しりとりみたいに次の人にパスします。パスをもらった人は、もう一つ言葉を足して、別の人にまたパスします。  じゃ、 3人ずつのグループでやってみようか。前の人の文を忘れちゃったり、言葉を足せなくなったりしたらアウトですよ。  最初の文は「カラスがとまった」です。

『AIに負けない子どもを育てる』

・1〜4歳の歩きたい時期に親の怠慢でバギーを使う結果、歩きたくなくなる子どもが出来上がる。これは本当に気をつけたい。手を繋いで歩けるようになってので、ガンガン歩かせる。

・できるやつもできないやつもいる方が要領いい生徒や頭いい生徒ができない子ができたと喜ぶまで丁寧に説明する経験を得る。わかったできたを伝えて初めて一人前

・意味がわかって読める人になるために(本文引用)

1.身近な大人同士の長い会話を聞く機会を増やすこと。特に多様な年代の大人同士の会話を聞く機会があるとよい。

2.身近な大人が絵本を開いて、繰り返し読み聞かせをしてあげてほしい。大人にとって繰り返しは往々にして苦痛だが、幼児にとっては繰り返しが楽しい。

3.信頼できる大人に、自分は守られている、という実感を持てること。

4.社会(文字、数、貨幣、移動手段、調理など)に関心を持つようになったら、ごっこ遊びができる環境を作ったり、広告や駅名を読んでやったり、(電子マネーではなく)貨幣で何かを買ったり、簡単な調理を一緒にしたりする機会を増やしてあげたい。

5.日々の生活の中で、子どもが身近な小さな自然に接する時間を取ること。たとえば、水は高いところから低いところへ流れること、そのときに水が物を押し流す力があること、夕方最初に大きく光る星(宵の明星)があること、月が満ち欠けすること、秋になると紅葉し落葉する木とそうでない木があること、花をつける植物は種ができたり実をつけたりすること、鳥が巣をかけてその中に卵を産みヒナを育てること、などが含まれるだろう。子どもが十分に満足するまで、そのことをじっくり観察したり感じたりする時間を取ってあげたい。

6.子どもが自分の関心に集中できる時間を十分に確保すること。

7.同世代の子どもたちと、十分に接する機会が確保されること。また、少し年上の子どもたちがすることを真似たり、憧れたりする機会が確保されること。

『AIに負けない子どもを育てる』

これは本当にそうだなと思う。読む力があれば大体なんとかなる。

教科書と最低限の副教材(地図帳、年表、問題集)を、きちんと読んで理解することができ、学習したコンテンツの全体像とディテールを破綻なく自分なりにはっきりとイメージすることができ、母語である国語の成り立ちを客観的に眺めることを通じて英語の文法の成り立ちを理解することができ、数学の定義を理解し、練習問題を易しいものから徐々に難しい問題へと根気よく解くことができ、自己採点の精度が高ければ、それだけで旧帝大クラスの大学には入学できるはずなのです。

『AIに負けない子どもを育てる』

・教科書をノートに要約することを毎日やったら偏差値10上がったやつがいるらしい。これまとめると同義にすると時間だけかけて、学力上がらん子が相当数出てきそう。

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