フェミニズムを学び始めた私(女性)が、女装さんバーで癒されるわけ

 ここ数年間に、新たに始めた趣味が2つあります。
 一つは、読書。もともと本を読むのが好きだったけれど、ここ最近はジェンダーやフェミニズムに関する本を読むことが多くなりました。
 もう一つは、女装さんとお酒を飲みながらお話をする事。私がつい通ってしまうのは、All Gender Welcomeのバーで、女装さんが多く集う場所です。そこでは、スタッフさんや、お客さんとして来ている女装さんといろんなお話ができます。

 もともと、お酒を飲むのが好きなので、一人でも飲みに行くことは多かったけど、ここ最近は女装さんが多く集まるお店に行くことが増えました。

 なぜ、女性の私が女装さんのお店に惹かれるのかを、ちょっと考えたかったので、自分の頭を整理する独り言のつもりで、書きます。

  1.  安心できる

  2. 「女の役割」「女らしさ」から解放される

  3.  今まで、苦手意識があった女性らしいファッションやメイクについて、「好きだから、する」という感覚を素直に受け入れる事ができた


1.安心できる

 オールジェンダーに開かれた女装さんバーは、女性にとっても安心してお酒が飲める場所だと私は思っています。なぜなら、女装さんは女性と同じようにセクハラや、性犯罪の被害を経験している方も多く、その事の重大性を理解されている方がとても多いと感じるからです。

例えば…、
・    防犯カメラの設置など、性犯罪に対するお店の防犯対策に本気度を感じる。
・    女性客に対するスタッフさんの気遣いが手厚いと感じる事が多い。
(困っていることが無いか気にしてくれている感じ。他のお客さんが下ネタトークを始めた時など、さりげなく座席を変えて、そのお客さんから物理的に距離を取れるようにしてくれたこともあった。)
・    痴漢や同意無く触られることに対して憤りを感じている方が多いせいか、お店全体に「他者への勝手なお触り厳禁」のムードが漂っている。
・    界隈自体が小さいので、揉め事を起こせばお店に出禁を食らって、自分自身の居場所がなくなってしまうという心配もあるようなので、無茶苦茶な振る舞いをする人に出会いづらいのもあるのかもしれない。

 お店にもよるだろうし、その日に来ているお客さんによっても雰囲気は大きく変わるとは思うのですが、別タイプのバーに行っていたころよりは、安心してくつろげています。

2.   「女の役割」「女らしさ」から解放される

 「結婚してないの?」「こんな時間まで飲んでいて彼氏に怒られない?」「子どもは居ないの?」などなどの質問は、女性が一人で飲んでいると、よくよく聞かれる内容で、もはやセクハラだとは思うのですが、未だによく聞かれます。

 でも、女装さんのお店で聞かれたことは一度も無い!
いくつかのお店に行ったけれど、いろんな人とお話ししたけど、一度も無いです。(感動)

 おそらく、「男らしさ」や「男の役割」に苦しめられている方が多く集うから、必然的に「女らしさ」や「女の役割」を女性に求める事がタブーであることを本能レベルで理解している方が多いのだと思います。

 あと、女装男性の女性に対するリスペクトの気持ちが本当にあたたかいと感じていて、居心地がいいです。化粧や服装、仕草や女性の関心事など、多岐に渡って興味を抱いている方も居て、女性の私に色々と聞いてきてくれます。女性の私から学ぼうとしているんです。
 お酒を飲むのが好きなので、バーによく行きますが、男性から「教えてあげる」と言われたことはあっても、「教えてほしい」と言われたことはあまりなかったので、最初は面食らいました。(私自身は普段はあまり化粧もしないし、決して女子力の高い女性ではないため、知識が少ないので焦りました。)
 何より、綺麗になる努力、可愛くなる努力をちゃんと「努力」として認めている方が多いと思います。
 自分がしたことのない努力や、する必要を感じていない努力に対して、人は過小評価をしがちだと思います。男性が女性ともめがちな「化粧に時間がかかりすぎる」というクレームは、化粧をしたことが無い、女性として身支度をした経験が無いから、その工程や過程を「無駄な事」として切り捨ててしまっている結果ではないでしょうか。
 でも、女装さん達はきれいになる苦労と努力を重ねて、その大変さを理解されている方が多く居て、女性の「自分の自己肯定感を上げるために、もっと可愛くなりたい。キレイになりたい。」という気持ちと努力を「すごい事」として尊敬してくれるのです。

3.   今まで、苦手意識があった女性らしいファッションやメイクについて、「好きだから、する」という感覚を素直に受け入れる事ができた

  もともと私は化粧をしたり、ハイヒールを履いたりと、女性らしい恰好をするのは好きな方ではありませんでした。女性らしい恰好は、素敵だな、可愛いなと思うことはあっても、そういう格好をするための準備は面倒臭すぎる。そして、自分には似合わない、性に合わないと思っていたから、避けていました。
 女性らしい恰好をすることが、男性に媚びているようで、なんか気に入らなかった。
 でも、可愛い恰好や女性らしい服装って、実は私も好きなんです。そういう格好が似合う女性に嫉妬に近い気持ちを持っていました。
 「化粧もファッションも自分自身の為に行うもので、男性の為に行うものではない。」という事は、頭ではわかっていたけれども、何となく身に染みて実感ができず、女性らしい恰好をしている自分をどこか本当の自分に感じないような違和感がありました。なので、私は女性なのだけれども、女性らしい装いをするとき、「今日は女装するぞ!」という気持ちが強くあり、それが何となく女装さんへの共感につながったような気がします。
 女装さん達とお話ししているうちに、「いいな。」「素敵だな」と思う服装やメイクをすることにネガティブな気持ちを持つことが無くなりました。
誰かに媚びるというわけではなく、「好きだから、する」という感覚が腑に落ちてきたのだと思います。そもそも、女装さんの多くは、誰かに媚びるために可愛らしい服装をしているわけではなく、好きでその服装、そのメイクをしている方が多いように感じました。
 その「好きだから、する」という、考えてみれば当たり前で、不思議でも何でもない事が、こじれにこじれ、ねじれまくってしまった私には新鮮に感じました。
 自分にとって今日が一番若い日なのだから、着たい服、したいメイク、好きなファッションがあれば、どんどん挑戦すればいいじゃない!と自分に対しても思うことができるようになりました。
 クローゼットの奥にしまってあったけれど、人前で着られなかった服、若いころ買って憧れるだけで着る事さえなかった服…、ここ最近、やっと着られるようになったのは、女装さん達が発するポジティブなメッセージに勇気をもらった結果だなと思っています。

 ファッションやメイクって、楽しいわ…。昔はあまり実感することなかったけれど、好きな服着られて、好きなメイクができて、楽しい。ようやく、「女性に生まれて良かったかもしれない」と感じられるようになりました。

 お店の雰囲気って、集まるお客さんによっても変わるし、一期一会なので、同じようなイメージや雰囲気の時間は二度と来ないとわかってはいますが、それでも私は女装さんバーにたくさんの楽しい時間、ポジティブな気持ち、やりたいことをやる勇気をもらっているな…と、感じています。

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