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車内広告の話

先日、電車の中でこんな光景を目にした。
5歳くらいの男の子がゲームの車内広告を見ながら、ママにこう聞いた。
「ねえ、なんであの子パンツなの?」
男の子の目の先にあったのは、肩・胸の谷間・お腹・腿が露わになった露出度の高い成人女性のキャラクター。
おそらく、コスチュームなのだろうが、男の子にはパンツと映ったようだ。

子どもから見たら、パンツだ。間違っていない。百歩譲って水着。
パンツだけで公共の場に出るのはNG、お風呂上りだって、早く着替えなさい!と教えられているだろうに、老若男女が利用する公共交通機関に、どうどうと”パンツ姿”で現れたキャラクターに、男の子は驚いたに違いない。大人にでさえ刺激的なコスチューム。子どもたちはなおのこと、目が釘付けになるだろう。

瞳が大きく童顔で、肩幅は狭く華奢、でも胸は大きい。対比するように、細いウエスト。お尻は肉付きがよくて、足は長い。だいたい内股ポーズ。ロングスカートやズボン姿は少ない。時にはツーピースの水着やブルマ姿も(今の子はブルマを知らないかも)。多くはミニスカート。そしてそのミニスカートは風に吹かれていて、今にもめくれ上がりそうだ。
性的な思惑を受け取ってしまう。齢のいった証だろうか。

ふにゃふにゃした、露出度の高い、男性の言いなりになりそうな(イメージの)女の子の絵が、何の制限もなく、街中にあふれている。それは、女性に対するイメージを、また性的思考を、無言で意識づけしている気がして、危惧している。

独特なアニメのキャラクターは、たぶんその世界観が好きな人には魅力的なのだろうし、日本文化の一つとして確立している。でも、現実と非現実の世界の判別が未習熟の幼い子どもたちの目に、たやすく入ってしまうのは、メディアとしても、その広告を掲示することを許している社会の仕組みとしても、少し鈍感な気がするのである。発信する側に、そういった意図がなくとも、女性は軽んじてもいい、という無言のメッセージを受け取ってしまう人がいることも、ぜひ知っておいてもらいたいものだ。そして、この国の、いや、この国だけではない、未来を作っていく子どもたちの目にどう映っているのか、考察してもらいたい。

国会議員に占める女性の割合は先進国の中でも最下位、とか、女性管理職が少ない、とか、東大や医学部の女子の割合が低い、とか、問題になるのも当然のことなのだ。女性が活躍できる場を、と言いながら、女性軽視とも受け取れるメッセージが街のあちこちにあるのだから。この国の未来が心配だ。
(日本だけではないよ、世界が君たちの舞台だよ、と子どもたちに言いたい)

さて、冒頭の男の子のママはどう答えたか。
「 ………  水着なんじゃないかな。」
そうだよね、そう答えるしかないよね、パンツが衣装なんだよ、なんて答えられないよね。心中お察しします。全く知らない方だけど、ママの肩をトントンして励ましたくなった。その会話を耳にしていた周りの方々も、おそらく同じ気持ちだったのではないか、と勝手ながら思うのである。