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Erik Oldenhofの「The power of minimal」を鑑賞する

先日、会社の近所にある、もはや行きつけともいえるギャラリーへオランダ人アーティストの展示を見に行った。
2つ展示を見逃してしまい、久しぶりだったのだが、いつも説明をしてくれる男性がおらず、「あれっ、今日はあの人は?」と尋ねると、「彼は今Stockholmに彼の父親の彫刻の展示の交換に行っていて、明後日戻ってくるよ」と言われ、早速Stockholm話しに花が咲くシマ子。最初から飛ばしまくりだ、、、やっぱり、ここ好き、行きつけで正解、と思ってしまう。

さて、本題に戻ろう。


※アーティストについて

今回のアーティストErik Oldenhofは、建築家出身の画家だ。
特に抽象的な幾何学模様のバウハウス・スタイルの建築に影響を受けた彼の作品は、マス目のような線を用いたものが多く、たまに遊び心で斜めの線も加えはするが、曲線を用いることはないようだ。またThickening(英語の「厚み」からきている、という説明を受けた)という方法を用い、描いているマス目のような線に立体感を付けているのも特徴の一つだそうだ。

Thickening(シックニング)
コーンスターチやチョークのような増粘剤として機能する添加物を混ぜ、絵の具の厚みを増し、扱いやすさを変える方法。これによりアーティストは、作品に独特のボディと質感を出すことができる。

ネットより

※Bioと作風

Erik Oldenhof(Nijmegen 1951-)
制約の力を絵画に応用する画家。最小限のイメージで最大の芸術的能力を達成することに重点を置いている。彼の作品の象徴は、キャンバスを覆うように描かれたペースト状のラインワークである。彼の絵画は、描くことと塗り替えること、加えることと引くこと、表面と奥行き、光と影、物語を創り出すことと脱線させること、秩序を創り出すことと混沌へと変化させることのプロセスをテーマにしている。
最初、彼の絵のほとんどはモノクロに見えるが、より深く見ていくと、様々な白の色合いが隠されていることがわかる。これらのモノクロの絵画は、3つの異なるレイヤーでウェット・オン・ウェットに描かれる。幅の広い筆と狭い筆を交互に使い、パレットナイフも使う。木製のパレットナイフで絵の具の跡をなぞるのに加え、最近はマスキングテープも使っている。このテープは絵の具のストロークと反対方向にはがされ、絵の具の肌にリズミカルな光学的効果を生み出し、絵に特別な緊張感を与える。
無限の線の幻想は、作品にスピリチュアルで宗教的な効果を与える。

本人のHPと展示案内より抜粋・意訳

それでは作品の紹介へ移ろう。

※カテゴリー① 制限による最小限の抽象表現

まずは、ベルリンの森林地帯にある人里離れた静かなアトリエで2018~23年の夏の間に制作を行った作品を紹介しよう。
アトリエへの出発前に、彼は素材と技法の選択を制限することにし、筆、墨、墨ペンを選び、全てA3サイズの紙に描くことに決めた。この制限により、完全に制作に集中し、自分自身の内なる世界の創造に成功したそうだ。
静謐な場所で、絵画的手段を根本的に削減することで、彼は最小限の抽象表現を作品に追求した、ということだろう。

近景①
近景②
かなり和の要素が入っていますよね?
説明文にも、「彼のブラシ・ドローイングは、日本の書道を思わせる繊細な抽象画である」という一文あり。


※カテゴリー② 分厚すぎるThickeningの作品

年代が逆行するものもあるとは思うが、この先はThickeningのバリエーションを、シマ子の独断と偏見でお届けしたいと思う。
まずは分厚すぎる作品から行こう。
厚塗りなだけで、マスキングテープが使われている様子はなく、「大味」な作品のためか、これらは現オーナーの小部屋の片隅に飾られており、いわゆる日陰作品だなぁ、という印象を受けた。

本当に「Thiiiick」と低い声で吠えたくなる感じ。
下の作品は、申し訳ないけれど、ティッシュボックスの蓋にはよさそう。。


※カテゴリー②-1 黒と赤のモノクロシリーズ

次は、ZEROとミニマル・アートに触発された1988~89年製の黒と赤のモノクロシリーズだ。

近景
よく見ると、下書きの鉛筆の線のようなものまで見える
ナイトクラブのトイレに使われそうな雰囲気🤭


※カテゴリー②-2 その他のモノクロシリーズ

黒と赤以外の制作年代がよくわからないので、別カテゴリーにしたが、②-1の別色をまとめてみた。

青バージョン
本当は「青の世界」と書きたかったけれど、「それは東山魁夷の真似じゃないか」と言われそうなのでやめました😅
横から見た図
もっと細かい青のバリエーション
黒と白

※カテゴリー②-3 単色シリーズ

一部、土台もThickeningも同色の作品が幾つかあった。その中で白ではないものをまとめてみた。

これは鮮明に刷毛の動きがついていて、作業方法が見えやすいですよね

※カテゴリー③ 白のバリエーション

展示案内によると、黒と赤のモノクロシリーズの後、イメージの急激な縮小が続き、白の濃淡の多さが目立つ作品へと移行した、とある。
彼にとって白という色は、光の静けさと純粋なエネルギー、そして空間のイリュージョンを物語っており、その白を使うことで、彼は見る者に美、空間、静寂の幻視的な形を提供しようと努めているそうだ。

それでは、この日、いつもの方に代わって説明してくださった女性の一番のお気に入りの白から行こう。

近景
結構Thick😆
縁にゴールドを配している
シルバー系のバリエーションの線入り

※カテゴリー④ その他

今回はかなりシンプルな作品の紹介となり、シマ子のタイプとは違うのでは、と思われる方も多いかと思う。勿論そうなのだが、行きつけの場所でしっかりとした説明と共に観たからこそ、馴染みのないものにも興味が沸くというものだし、今後は、こういうくっきりぱっきりしたものをたまには見ても良いかな、という思いを起こさせてもらったのもまた事実だ。




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