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クリスマスが近づくと。。。

先日、トスカーナに1泊2日で出張に行った。
トスカーナというと聞こえがいいが、正確には、Firenzeのお隣の町で、観光都市からは完全に外れているPrato(プラート)という町へ行った。

トスカーナと言えば、風光明媚な土地柄で、メディチ家の栄華衰退があり、ウフィツィ美術館があり、bistecca fiorentina(フィレンツェ風ステーキ)やオリーブオイル、トリュフ等の食べ物も有名で、イタリア人からも人気の州だが、Pratoはそのどれにも当てはまらない、というか、誰も行きたくない町と言っても過言ではない。なぜならば、町の一部を完全に中国人に占拠され、中心部にも大きな見どころは一つもないからである。
個人的な趣味として、昨年、Museo del tessuto(生地の博物館)へは行ったが、そこだって、衣料関連の原料を扱っている人や、美術館巡りが趣味の人、特別展の内容が関心の範囲内である場合を除けば、現地の人すら行かない。

※Museo del tessuto(生地の博物館)のサイト

ではなぜそのような町へ行く羽目になったか?

その前に、この町の成り立ちを少し説明しよう。
***タクシー運転手談
この町は中国人が2割、それ以外がイタリア人とその他の外国人で形成されている。
***Prato人=Pratese談、及び1日半行ったり来たりして実際に見たこと
中国人は中華街を作り、そこで中国から仕入れた生地や原料を使って衣料品やアクセサリーを作り、問屋をし、国内・海外の顧客に安く卸し、富を築いている。
***現地で会った全てのイタリア人談のまとめ
中国人らはイタリア人との交流を完全に断っているので、例えば、
・先日の水害でも自分たちのコミュニティの中だけで被害の後処理や備えを行っていた
・彼らの間だけで結婚・出産を繰り返すので、イタリアの他のどの都市の中華街の中国人よりも不細工である
・生まれも育ちもイタリアでも、イタリア語が話せない人もいる
・中国人が経営し、中国人しか泊めないホテルがある
・食料品店やレストランを装い、大量の現金を中国送っている黒い組織がある
はっきり言って、表現の程度の誤差はあれど、イタリア人の口からは一つとしてよい発言はなかった。

さて、中国人街を除くイタリア人街での主な産業は、ウールである。
この町はBiellaと並ぶイタリア有数のウールの産業都市であり、今回の出張の目的はこちらである。顧客に同行し、様々な工場見学をさせてもらい、技術を目の当たりにし、終日の通訳で脳の疲労感はマックスでも、非常に有意義な出張であった。

※Pratoのウール産業についての説明


2日目の朝、8時45分頃まで自由時間があり、折角だから早朝散歩をしよう、と一人、町の中心部を30分ほど散策した。
そこには小さな目的があった。
というのは、中国人と、ウールしかないと思っていた町にはもう1つ、素敵な特産があったことを思い出したからである。

トスカーナの名産の一つに、Cantucci(カントゥッチ)という硬いクッキーがあるが、それを作る有名なブランドの一つ、Biscottificio Antonio Matteiの工場がプラートにあるのだ。フィレンツェにはこのブランドの博物館付き店舗があるようだが、工場のあるプラートが本家である。また営業が8時半からのため、束の間、店舗を訪れる機会を得たのだ。
Cantucciは、イタリアのクッキー(ビスコッティ)のうちの一種類であり、伝統的にはアーモンドがゴロゴロ入ったものだったようだが、最近では、チョコレートやピスタチオが入ったものも定番で、変化球が加わったものだと柔らかいバージョン等もある。しかし基本的には、歯が折れそうに硬いものをVin Santo(ヴィン・サント)、つまり「聖なるワイン」という呼び名のデザートワインに浸して食べるのが主流だ。私のようにお酒がほぼ完全にダメな人は、コーヒーに浸してもおいしく食べられる。

イメージ: アーモンド入りcantucci 

通年で食べらるが、主にクリスマスの贈答用として、ミラノのPanettone、ヴェローナのPandoroと並ぶ人気の品で、取引先からもたまにいただくが、その場合は必ず、このBiscottificio Antonio MatteiのCantucci、と決まっている。イタリアの取引先の数社が選ぶのが、他のどのメーカーのものでもない、このBiscottificio Antonio Matteiであるから、このメーカーは唯一無二と言えるだろう。


イメージ: CantucciとVin Santo の組み合わせ
イメージ: Cantucciと可愛い缶

さて、旧市街(といっても、旧市街とチャイナタウンしかない珍しい構造😆)にある店舗はこじんまりとした建物である。

店舗の外観

中には、イートインのスペースはなく、飽くまで工場兼販売所というイメージだ。
流石に、主張中にCantucci を一パック買う勇気はなく、わざわざここで買わなくてもミラノでも手に入るのと、金額によってはイタリア国内は送料無料にもなるので、今回はミラノでは手に入らない一個単位で買えるアニスシード入りのパンを一つ買った。
食べるのが楽しみでバッグの奥底に忍ばせていたが、生憎、移動に次ぐ移動で潰れてしまい、帰宅した頃には、写真に耐えうるような見た目ではなくなっていた。
しかし、ダンスのレッスン後、脳だけではなく身体もクタクタ、バキバキになった夜更けに、ツナ缶をお供に食べるブサイクなパンは格別に美味しかった。
次回トスカーナを訪れる際には、食べる前に写真を撮ろうと思う。

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