Lucia di Lucianoの胸がときめく作品たち
とある金曜、久しぶりに仕事を早く切り上げられそうな雰囲気があったので、クローズの時間が早くて普段の見学が難しいギャラリーの展示を選び、足を運んだ。
真っ白な、本当に白亜とでも言えるような一面眩しい白の清潔で美しいギャラリーで、オーナーらしき男性も親切な方で、有意義な見学ができたので、その展示をご紹介しようと思う。
今回のアーティストはLucia di Lucianoという高齢の女性である。
まずはその女性についての紹介をしよう。
※アーティストについて
説明を読むと小難しい感じがするが、「かわいい」が大好きな日本人女性ならかなり高い確率で好きな作品が多いと思う。それゆえ、まずはあまりときめかなかった初期のグリッドの作品の飾られた地下階から始めるが、後半戦は鼓動が激しくなると思うので、心がときめくまでの準備体操をしっかりして、暫しお待ちください。
それでは、3、2、1、スタート!
※地下階
1960年代の白黒にこだわった幾何学的な作品から1990年頃までのきっちりとした線や正方形で描かれた作品が展示されている。
入り口が上階にあり、一瞬、ピッカピカに磨かれた真っ白な空間に展示されたピンクや水色のカラフルな作品を見ずにはいられないため、一気に気持ちが高ぶり、「うわ~っ、かわいい~!」と思わず大きな声で言ってしまったくらいだが、原点は構造に重点を置いたお堅い"gestalt"にあり、地階の作品を見ることで、私の心もすぐに沈静化した(笑)
※階段に飾られていた作品
地下階と地上階の中間にあるので、お堅いにも可愛いにも属さない、表現の難しい作品なのかと思う。
※地上階
まずは地上階の遠景を載せておこう。小雨の降るどんより曇った日だったので、時折陽が差すと真っ白さが際立つのだが、雲に覆われている間にはこのように室内もグレーがかってしまった。
ちなみに、雪虫をご存知のない方が多数だと思うが、この虫は雪が降る前日か当日に空から降ってき、地上や車のフロントガラスに着陸してほどなくして死んでしまう、青い目をし、白い綿を羽に付けた、か弱いアブラムシ科の虫だ。「冬の訪れを告げる虫」として、北海道ではなじみ深い虫で、私が唯一、可愛いと思って触ることのできる虫なので、Wikipediaのリンクを貼っておこう。
また脱線してしまったが、上の3連作が「Senza titolo(無題)」の最後の作品で、下が最後のMinimalシリーズの作品である。
彼女にとって重要なのは、絵画表面のダイナミズムであり、絵画空間における記号と線のリズミカルな連続であり、背景と記号のコントラストなのだそうだ。
この展示会では、このアーティストの、当初は幾何学的で白黒だった空間において遠ざけられていた色彩が、おずおずと、しかし着実に自己主張をし始め、彼女のすでに豊かなイメージ・記号の配列を視覚的に多様化・増幅させていき、現在のふんわり軽やかでリズミカルな作品へと変貌を遂げるまでの歴史を十二分に堪能させてもらえた。
華やかででキラキラした青春時代、青年時代を経て、堅苦しい中年・老後を送る人もいれば、堅苦しく抑圧された子供・青春時代を経て、次第に自分の殻を取り除き、活き活きとした老後を送る人もいる。
彼女の作品には、そんな幾多の人生の歴史がクロノロジカルに、またはリバースして描かれているように思えてならなかった。
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