都議選 立民2つの誤算〝業界ボタン〟を押さなかった自民 総裁選 進次郎氏が急浮上 現時点では〝確トラ〟日米政局 激動の秋へ

 7月17日の日本ジャーナリスト会議(JCJ)オンライン講演には元朝日新聞記者の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏が登場。鮫島氏は小池百合子氏が3選を果たした7月の都知事選で立憲民主党の蓮舫氏がなぜ惨敗したかを語り、国内政局の最大ヤマ場、9月自民党総裁選の行方、そして世界が大注目する11月の米大統領選はトランプ氏とハリス氏どちらが勝つのかなどを大胆に予測した。
 都知事選で東京に選挙基盤がなく「政策の中身もカラッポ」という石丸伸二氏(前広島県安芸高田市長)にも抜かれ3位に転落した立民の蓮舫氏の敗因は、選挙戦略のミスと指摘した鮫島氏はこう解説する。
 
6月解散阻止
最優先の自公
 
「衆院補選で3連勝し5月の静岡県知事選でも勝った立憲民主党は、〝党の顔〟蓮舫氏が都知事選に出馬すれば、アンチ小池の無党派層の票を大量に獲得でき勝てると分析した。しかし立憲民主党が4連勝できたのは、自公両党が手を抜いた選挙活動したのが大きかった。公明の支持母体の創価学会の動きは鈍く、自民党も支援しろという各種業界団体への締め付けが弱かった。〝業界ボタン〟を押さなかった。岸田文雄首相の6月解散総選挙阻止を狙いあえて敗けた。自民党支持者の棄権により投票率は下がり、立憲・共産のコアな支持票が上回ったというのが4つの選挙パターン。それなのに立憲民主党は人気を回復し無党派層を呼び込めると誤解した。戦略ミスの第一です」
 候補者の選択も間違った。これが第二のミスだ。
 「攻撃力がある蓮舫という政治家に対する都民の反応は好きと嫌いがはっきりと分かれる。60代以上のリベラル派に人気は高いが、50代以下の無党派層に感情的に蓮舫嫌いが多い。案の定、石丸氏に無党派層の票をごっそり持っていかれた。小池を倒すことが目的だから好き嫌いの反応が弱い候補者をたてた方がよかった。立憲民主党の国会議員なら長妻昭とか1回生で朝日新聞後輩、山岸一生。首長経験者や学者もいい。こういうタイプならアンチ小池票をかなり集められたのではないと思う」
 蓮舫氏と石丸氏の2位、3位争いが話題の中心になり、裏金自民党のステルス支援を受けた小池氏が楽勝した都知事選だった。
 
異例の大混戦
小林(鷹)も有力
 
 岸田文雄首相(67)が総裁再選をあきらめた理由は①支持率低迷〝選挙の顔〟にならず、来る総選挙では自民党は敗北の恐れがある、②政権生みの親・麻生太郎副総裁(麻生派83)は支持を確約せず見捨てた、③バイデン米大統領が選挙から撤退し、頼みの綱が消えた―。
事実上首相を決めることになる9月自民党総裁選は大混戦だ。菅義偉元首相(無派閥71)が後ろ盾の石破茂元幹事長(無派閥67)、茂木敏充幹事長(旧茂木派68)、麻生氏が支持する自派閥の河野太郎デジタル相(61)、若手の旧安倍派議員が推す小林鷹之前経済安保相(旧二階派49)、林芳正官房長官(旧岸田派63)が出馬。加藤勝信(旧茂木派68)元官房長官、上川陽子外相(旧岸田派71)、高市早苗経済安保相(無派閥63)、斎藤健経産相(無派閥65)らも出馬に意欲示す。そしてここにきて小泉進次郎元環境相(無派閥43)〝電撃出馬〟が急浮上。
 この話が飛び出してきたのは父親・純一郎元首相が心変わりしたという見方がもっぱら。
 「純一郎元首相は『50歳までは首相を支えろ』『今は動くな』と自民党の捨て石にしないため進次郎氏の出馬にストップをかけていた。ところが出身派閥旧安倍派の森喜朗元首相から『進次郎しかいない』と言われた純一郎氏は『そこまで言うなら息子が出るというなら反対はしない』と答えた。土壇場で進次郎氏を担ぎ出し、一気に世論の期待を引き寄せる小泉劇場の再来を予想する声が広がり始めた」(鮫島氏)
 石破氏に次いで国民人気第二位のうえに党内に敵がいない進次郎氏が総裁総理に駆け上がるかもしれない。
 
揺れる7州
ハリス嫌い
 
 11月米大統領選は、民主・共和両党の激戦7州(アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバタ、ノースカロライナ、ペンシルべニア、ウィスコンシン)が勝敗を分ける。この「スイングステート(揺れる州)」は選挙のたびに勝利政党が変わる。16年の大統領選では激戦7州のうち6州を制した共和党のトランプ氏が、20年は6州取ったバイデン氏がそれぞれ当選した。
 「ラストベルト(錆びた工業地帯)と言われるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州の含む7州は、白人の労働者が多い。人種差別が根強く、リベラルは嫌い。アジア系の黒人女性のハリス氏は、リベラル色が強い。ハリス氏への抵抗感が相当にある激戦州は、トランプ氏が優勢です。現時点では〝確トラ〟と言えます」と鮫島氏は予測した。
 自民党総裁選は9月12日告示、27日投開票だ。この総裁選に米大統領選の情勢が、どう影響を与えるのだろうか。
 9月から11月に日米政局は激動する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?