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CASE 8 ルノワール 手が変形しても死ぬまで絵を描き続けた男 リウマチは意外と多い!!


”関節リウマチとは” 

・体の免疫システムが崩れ、本来外から侵入する敵を攻撃するはずの抗体が自分の体を攻撃して起こる自己免疫疾患の代表。
・炎症により痛みが出たり、進行すると関節破壊を起こし骨が変形して日常生活に支障をきたす。
・内臓のトラブルを起こすこともある。

今回読者の方に知ってもらいたいことはこれ一つです。
『関節リウマチは意外と多い病気である』



CASE 8 ルノワール 診断:関節リウマチ


【症例】男性(1841-1919)

【主訴】朝のこわばり 疼痛 関節変形

【現病歴】
フランスの元印象派の画家。
47歳の時にこわばりが出現。
56歳の時に自転車で転倒し痛みが悪化。
59歳時から歩行しにくくなった。
手の骨も徐々に変形。
上記経過から関節リウマチと診断。

【診断】
#関節リウマチ

【経過】
約30年にわたる闘病生活を送る。痛みと戦い、手の関節も変形していったが、彼は生涯にわたって絵を描き続け、78歳の時に肺水腫で死去。



今回は人物の病状を詳しく考察とするというよりは、みなさんに関節リウマチで苦しむことがないように、最低限知っておいてもらいたい知識をまとめるとういう形式でお送りしたいと思います。

今回リウマチを取り扱ったのは、意外に多い病気だからです。確かに高血圧や糖尿病などと比較すれば有病率は少ないかもしれませんが、他人事だと考えていると、いざ自分が発症した時に困ることがあります。

そこでリウマチに関してみなさんに知っておいていただきたいことを挙げてみました。

  1. 意外と多い病気

  2. 発症すると痛みが出て、放っておくと関節変形が起こる

  3. 関節だけではなく、内臓もやられることがある(特に肺の合併症は怖い)

  4. 内科的な薬物治療で進行を抑えることができる

  5. 関節リウマチの体質があるかどうかがわかる血液検査項目を含めた健診や人間ドックのプログラムがある


ひとつずつ見ていきましょう


1. 日本にどれくらいリウマチ患者がいるか

今回はとにかくこれだけ知ってもらえればOK!

日本には関節リウマチの患者は70万人以上、200人に1人くらいと言われています。

「200人にたったの1人??じゃあ私は関係ないでしょ!!?」

といったような他人事であるような数字ですね!
ところが中高年の女性にとっては他人事ではないかもしれませんよ!!!

関節リウマチは男女比は1:4で女性に圧倒的に多く、50代から有病率は跳ね上がります

そこで、日本人女性年齢別の関節リウマチの有病率について知りたくなりました。ところが詳しい情報が調べてもなかったため、

『総務省統計局 人口推計2021年』
『公益社団法人 日本リウマチ友の会2015年 有病率資料』

を参考に独自に概算を算出してみました(2つの資料の年代が異なるので参考程度にしてください)

”40代の日本人女性 200人に1人”

多くの人がまだまだ他人事レベルですね!


”50代の日本人女性 85人に1人”

...ちょっと身近になってきました!同年代の知り合いに1人いるかいないか。という感じでしょうか


”60代の日本人女性 35人に1人”

...さらに身近になりましたね!昔の女子校のクラスメイトに1人いるかいないかといったところです。


”40歳以上の日本人女性 66人に1人”
”50歳以上の日本人女性 56人に1人”
”60歳以上の日本人女性 50人に1人”


どうでしょう?意外と身近な病気のような気がしてこないでしょうか?
まずこの事実を認識していただくことが大切かと考えています。
まだ未発症のお若い女性は自分も将来かかるかもしれないという認識をしておくと良いかもしれません。


2. 関節痛 関節変形

冒頭のルノワールの写真は有名な写真ですが、左手は明らかに変形しています。絵を描くときも手が使いづらそうですし、辛い痛みも続いていたと考えられます。画家にとっては辛い日々だったのではないのでしょうか。


3. 内臓病変について

怖いのは間質性肺炎や心臓の合併症です。関節痛や関節変形で人は死ぬことはほとんどありませんが、間質性肺炎や肺繊維症合併による死亡は多いとされています。


4. 治療について

診断された後は、治療しないとリウマチは進行してくるかもしれません。
治療については進歩は目覚ましく、早期発見と適切な治療で関節リウマチの痛みと戦わなくても良い時代が来ています。


5. リウマチはどうやって調べる?

診断は問診と診察、血液検査で行います。問診と診察では痛みの程度、場所などを確認し、血液検査では抗核抗体リウマチ因子などを調べます。
無症状であっても健康診断人間ドックで抗核抗体やリウマチ因子を項目として取り扱っているプログラムもあります。しかし数値が高ければ関節リウマチというわけではなくやはり関節痛などの症状が重要になってくると考えられます。





ルノワールと私からのメッセージ

中高年の女性を集めると、意外と多い病気である(今回一番言いたいこと)

・こんな症状がある人はぜひ関節リウマチかもと疑って医療機関を受診してみて!
 1. 朝のこわばり(朝起きた時に関節が動かしにくくなること)
    2. 複数の関節が腫れて痛いなど(特に手の第二関節や指の付け根の関節)
    3. 手足の変形

・受診する科はリウマチ内科膠原病内科整形外科などを名乗っている病院へ!!それらの科が全て揃っていればなお良し!!

・一般内科・クリニックでも勉強家の先生はリウマチの診察・スクリーニングができます。必要に応じて専門家に紹介してもらいましょう!!


・ルノワールは関節の変形と痛みと戦い続けましたが、現代医学では早期発見と適切な治療により痛みのコントロールや関節破壊の進行を抑えることができます

・ちょっと話の軸がずれますが、リウマチで苦しみながらも愛する絵を描き続けたルノワールからは考えさせられるものがあります。辛いことがあっても、大好きで夢中になれることがある。それが生きる原動力となるんだと思います。




次回予告


1994年(Haruくんは当時8歳です)に公開された不朽の名作『フォレスト・ガンプ』より、フォレストの幼馴染みで恋人?のジェニーの死因についてです。死因の有力な説はAIDS(後天性免疫不全症候群)とされています。

お楽しみに!!


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