[鳥として肉食を考える-2] [鬱ショートショート] 焼き鳥の沈黙
《はじめに:本作は残酷でショッキングな内容となります。全く救いもなく、読むと気分が滅入るかもしれません。ご自身の体調と性格を考え、読むかどうかご判断ください》
本作は「鳥として肉食を考える 三部作」のパート2となります。
本作だけ単独で読むと、本当に「単なる残酷フィクション」となり、私がサイコパスであると結論付けられて終わるだけので、どうせなら三部作を通してお読みいただけますと幸いです(まあ、結構長いんですけどね)。
『食肉用動物』を主人公とした実験的なフィクションとなります。
(パート3で本作の補足と解説ヲ書く予定です)
[本編] 焼き鳥の沈黙
その国を治めるのは、非常に焼き鳥好きな暴君であった。
ある日、『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』は「フンフンフ~ン♪」と鼻歌ヲ歌いながら上機嫌で空を飛んでいた。
彼はとても美しいピンク羽を持ち、いつでも上機嫌で、周りからも好かれる人気者の鳥🐦であった。
そこに焼き鳥好きな暴君と彼の兵士達がやってきた。
「そなたは、たいへん綺麗なピンク羽をしておるな」
『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』は上機嫌な様子で暴君に挨拶をした。
「あっ、王様! こんにちは。ピヲピヲ! 私の自慢のピンク羽をお褒めいただき、ありがとうございます! それにしても、今日はいい天気ですね!」
「先ほど、そなたは上機嫌で歌っておったな」
「そうなんです。こんないい天気の日には、鼻歌混じりでお空を飛んじゃいますよ。フンフンフ~ン♪ フフフンフ~ン♬」
「そして、上機嫌で鳴いておったな」
「はい、王様! 鳥🐦ですから! ピヲピヲ! いつも楽しくて、1年の大半をこのようにピヲピヲ鳴いて過ごしています」
そこに突然、上から巨大な網が降ってきて、『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』はがんじ絡めにされ、すっかり身動きが取れなくなってしまった。
バタバタバタバタバタバタッ~!
網から抜け出そうと必死にもがく『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』だが、網は余計にきつく彼の体に絡み付き、すっかり動けなくなってしまった。
焼き鳥好きな暴君は、ニヤニヤしながら『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』を見下ろした。
「おー、これはこれは、傍でじっくり見ると、本当に見事なピンク羽だ!」
暴君は網の中でなおもバタバタもがき続ける『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』を見て、満足そうに言い放った。
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT 王様! この網は何でございますか。全く身動きが取れないばかりか、網が体に絡み付いて羽が毟り取られそうでございます ToT どうか私を網から解放してください ToT」
「ほう。まだピヲピヲ鳴く元気があるのか? どれ、その見事なピンク羽を記念に1つもらおうか」
焼き鳥好きな暴君はそう言うと、網の隙間から手を入れ、『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦」の自慢のピンク羽を強引に1枚毟り取った。
ブチッ!
「ピヲピヲ〜ッ ToT 王様! いったい何をするのです?! あー、痛い痛い ToT」
「いや、そなたのピンク羽があまりに見事だったものでな。それより、そなたは自分を何だと心得ておる?」
「はい、王様 ToT (あ〜まだ痛い ToT……)私は『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』と申します。今日も気分よく鼻歌を歌いながら、空を自由に飛びまわっていただけでございます ToT ピヲ… 痛い……ToT」
「ハッハッハ! そなたはとんだ勘違いをしておる。そなたは『焼き鳥用ピンク鳥🐦』だ! この世には実に様々な種類の鳥がおり、それぞれが宿命を背負って生きておる。ある者は空を自由に舞い、ある者は美しい鳴き声で人々を魅了し、またある者はその煌びやかな羽で見る者を圧倒する。そなたの宿命は正に『焼き鳥』になることなのだ!」
「ピヲ? や……焼き鳥!」
『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』は驚愕した。
「さよう。兵士達よ。持ってまいれ!」
暴君の号令で、複数の兵士達が巨大な七輪を運んできて、丸網をその上に置いた。
そして、おもむろにガスバーナーで着火剤に点火すると、やがて火皿の上の木炭がパチパチと燃え始めた。
「さあ、『焼き鳥用ピンク鳥🐦』よ。これが何だか分かるな?」
暴君は懐から銀色に光る工具のようなものを取り出した。
「お、王様! それは……トングではありませんか?!」
「ほぉ、さすがに『焼き鳥』という宿命を背負って生まれただけのことはある。ピンとくるようだな。さよう。余は、このトングで焼き鳥になったそなたを大いにつまもうと思う」
「つまむ?!」
その残酷な響きに、『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』はパニックとなり、再び網の中でバタバタバタッと暴れた。
しかし、網は益々その体に絡み、ピンク羽がまた数枚抜け落ちた。
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT 王様! どうかお助けください ToT 私は『焼き鳥』にされたくはありません ToT 私はこれからピンク鳥🐦村に戻り、今後も村のみんなと仲良く暮らしてゆきたいのです ToT」
「たわけ者! 何を言うか! 焼き鳥にされたいもされたくないも、そなたは『焼き鳥用ピンク鳥🐦』なのだ! 即ち、そなたは『焼き鳥』になるためにこの世に生を受けたのだ! 黙って焼き鳥になり、使命を果たせい! さもないと、我が兵士たちがそなたのピンク羽をすべて毟り取り、すっかり飛べなくなったそなたをグツグツと煮えたぎった鍋に放り込むぞ! そうなった場合、そなたは『焼き鳥』になるという宿命を果たすことは叶わず、『茹で鳥』になってしまうのがわからんのか! さあ、大人しく立派な『焼き鳥』になるか、それとも惨めな『茹で鳥』として最期を迎えるか選べ!」
「ピヲピヲ~ ToT 王様! それでは、いずれにせよ私は死んでしまうではないですか ToT」
「お前も話の分からんやつだ。お前はただ死ぬのではない。立派な『焼き鳥』になるという使命を果たすことにより、付随的に死が発生するだけの話である! オイ、兵士たちよ! この『焼き鳥用ピンク鳥🐦』に少し分からせてやるがよい!」
「ハッ! 暴君様!」
先頭に並んでいた5~6人の兵士たちは、規律正しく暴君に返事をした後、網の中でバタバタともがくピンク鳥🐦に近付いた。
そして、網の隙間から手を差し込み、バサバサバサッ!とピンク鳥🐦の羽を乱暴にいくつか毟り取った。
「ピヲピヲピヲ~ ToT 何をするのです~ ToT やめてくだされ~ ToT あぁ~痛い~ ToT」
『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』は涙を流しながら網の中で暴れ回り、彼の周囲には鮮やかな色のピンク羽が飛び散った。
すっかり羽を毟られたピンク鳥🐦は、ピヲピヲと泣き(鳴き)ながら、完全に意気消沈した様子である。
それを観た焼き鳥好きな暴君は、とても満足気な様子。
「ほぉ、これはこれは。まるで散り行く桜の花びらのようじゃ。毟り取られて地に舞い落ちるピンク羽もなかなか乙なものじゃ」
「ピヲピヲピヲ~ ToT 私の自慢のピンク羽が~ ToT これでは、もう飛べませぬ~ ToT」
「まだそのような道理のないことを言うか! そなたはこれから『焼き鳥』になるのであるぞ! もはや飛ぶ必要もないではないか! いい加減に目を醒ませ! これで自分の運命を受け入れる準備ができたであろう。そなたには、空を自由に飛ぶことも、ピヲピヲ鳴くことも求められてはおらん! そなたに求められているのは、ただ1つ! しっかりとした『焼き鳥』になることなのだ! さあ、心を入れ替えて、立派な『焼き鳥』になってくれるな?」
「王様~ ToT 私は何も罪は犯しておりません。ただ呑気にハミングしながら、陽気に空を飛んでいただけでございます~ ToT それなのに、突然『焼き鳥』になれだなんて、あんまりです ToT ピンク鳥🐦村では、皆が私の帰りを待っています ToT 今後も私は鼻歌を歌いながら長閑に暮らしてゆきたいだけなのです〜 ToT 『焼き鳥』はご勘弁ください ToT」
「ええい! 往生際の悪い奴だ! おい、お前! このトングでそのピンク鳥🐦をつまめ!」
焼き鳥好きな暴君はそう言って、持っていたトングを一番近くにいた兵士に渡した。
トングを受け取った兵士は、ピンク鳥🐦を捕らえた網を少し上げ、隙間からトングを差し入れた。
そして、羽を毟られて飛べなくなったピンク鳥🐦をトングでつまみ、それを高々と持ち上げた。
トングでつままれたピンク鳥🐦は恐怖のあまり、激しく抵抗して暴れた。
バサバサバサバサッ!
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT どうか離してください。私は『焼き鳥』にされたくありません~ ToT ピヲ〜 ToT」
暴君は兵士に向かって冷酷に言い放った。
「焼け!」
兵士はトングでピンク鳥🐦をつまんだまま七輪に向かい、勢いよく燃える木炭の上の丸網にトングを近付けた。
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT やめてくだされ~ ToT 私を『焼き鳥』にしないでください~ ToT 熱い~ ToT ピヲピヲ~ ToT」
ついに兵士はトングにつままれたピンク鳥🐦を熱々の丸網に押し付けた。
ジュワ~ッ!
「ピヲ~ッ!! ToT」
暫くの間、激しくバタバタと暴れ、ピヲピヲと泣いていた(鳴いていた)ピンク鳥🐦であったが、やがて動きがパタッと止まり、全く声を上げなくなった。
数分の後、『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』は、その羽の鮮やかなピンク色など見る影もないほどに、きつね色の焼かれ具合となった。
「よし! そろそろよいであろう! 兵士たちよ! 焼き鳥となった元『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』とやらをこちらに持ってまいれ」
「ハッ! 暴君どの!」
「ほぉほぉ、これは見事な焼き鳥だ! よし、お前、この『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』とのたまっていた焼き鳥に、宿命を全うした今の気分を聞いてみよ!」
「ハッ! 暴君どの!」
兵士の1人が焼き鳥に向かって語り掛けた。
「オイ! 生前は『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』と名乗っていた鳥🐦よ! 使命を果たし、見事に『焼き鳥』となった今の気分を述べてみよ!」
「…………」
焼き鳥は何も反応しない。
「お前もピンク鳥🐦村に大勢の仲間がいたであろう。皆とこれからも末永く仲良く暮らしたかったことと思う。また色々と壮大な夢を思い描き、今朝まで呑気に鼻歌混じりで空を散歩していたのであろう。それが罪もなく、ここにこうして、突如『焼き鳥』にされてしまった気分を述べてみよ!」
「…………」
焼き鳥は何も反応しない。
「ハッ! 暴君どの! こやつはすでに『焼き鳥』となっているため、何も喋りません!」
「そうか。哀れな奴だ。兵士たちよ。この『焼き鳥』のために歌ってやれ!」
「ハッ! 暴君どの!」
兵士たちは、地面に無造作に置かれた『焼き鳥』を囲み、皆で歌い始めた。
「ピヲピヲ鳴いてたピンク鳥🐦~♪
ご自慢のピンク羽~♬
いつでも陽気に鳴いていた~♪
人気者の鳥🐦さ~♪
ピヲピヲ鳴いて~ みんなのために~♪
頑張っていた~ 鳥🐦さ~♬
今は~♪
もう~ ♪
喋らない~ ♪
ヤキト~ オ~ リ~♬」
「よし! 兵士たちよ、よくやった! このピンク鳥🐦も使命を果たし、『焼き鳥』となれたことで、さぞ満足であろう! 今日も1つ『必要悪』の名の元に、余はなすべきことをした。かんらかんら」
その夜、焼き鳥大好きな暴君は、ピンク鳥🐦村からやって来た『伝書ピンク鳥🐦』から重要な伝達を受けた。
『伝書ピンク鳥🐦』はとても働き者で、暴君にも大そう忠実であった。
彼は今日もまた暴君に対し、恭しく報告を完了したところであった。
「私からの報告は以上でございます。それより、王様! 今宵は盛大な宴が開かれるとのこと、楽しい夜をお過ごしください!」
「ほぉほぉ。そなたも宴に向け、気分が高まっているようであるな。今宵は盛大な催し物とともに豪勢な食事が用意されることとなっておる……」
そこで、暴君は何か名案を思い付いたような顔をした。
「おぉ~! そうだ。『伝書ピンク鳥🐦』よ! 豪勢な食事で1つ良いことを考えたぞ!」
「はい! 王様、何でしょうか?」
「せっかくだから、そなたも宴のために『焼き鳥』になってゆくがよい!」
「ピヲ? や……焼き鳥!」
その言葉に『伝書ピンク鳥🐦』は、心の底から恐れ慄いた顔をした。
「さよう! 余は『焼き鳥』が大好きなのである! そなたも、せっかくなので、『焼き鳥』になってくれい。それがよい。我ながら、良い考えじゃ。そうじゃろ?」
『伝書ピンク鳥🐦』は慌てて暴君に尋ねた。
「王様! 『焼き鳥』……と仰いますと……私は死んでしまうのではないですか?」
「まあ、そう悲観するでない。何もそなたを殺すことが余の目的なのではない。そなたには『焼き鳥』になってもらいたい。その過程で、付随的に死が発生するだけの話である。それだったら、よいであろう? よし! 兵士たち、捕らえよ!」
上から急に巨大な網が降ってきて、『伝書ピンク鳥🐦』は囚われの身となってしまった。
バタバタバタバタバタバタッ~!
唐突な出来事に混乱し、網から抜け出そうと必死にもがく『伝書ピンク鳥🐦』だが、網はすっかり彼の体を捕らえ、すっかり動けなくなってしまった。
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT 王様、ご冗談はおやめくだされ ToT 私はただの『伝書ピンク鳥🐦』です ToT ピンク鳥🐦村からの伝言を王様にお伝えするだけの役目を担う鳥🐦でございます ToT」
「そなたも分からんやつだ。宴の日にわざわざ飛んで来てくれたのだ。だから、せっかくだから、『焼き鳥』になってゆけと申しておる。わかってくれるな? よし! 兵士たちよ、『焼き鳥』の準備だ!」
暴君の号令で、複数の兵士達が巨大な七輪を運んできた。
火皿の上では、すでに木炭が勢いよく燃えていた。
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT 王様! おやめください ToT 私は『焼き鳥』になどされたくはありません ToT 私は単にピンク鳥🐦村と王様の間の伝言を運ぶだけのしがない鳥🐦でございます ToT 村では皆が私の帰りを待っています ToT」
「えい、騒ぐでない『伝書ピンク鳥🐦』よ。『せっかくだから』と申しておろうが。わしの発案にケチを付ける気か! ホレ、これを見よ」
暴君は懐から銀色に光る工具のようなものを取り出した。
「お、王様! それはトングではありませんか?」
「そうだ。余は『焼き鳥』となったそなたをこれでつまむことになる」
「つまむ?! ピヲピヲ~ ToT 何て残酷な ToT どうかお助けください~ ToT」
「心配するでない! ホレ、見ろ。串も十分に準備してある。どの串に刺されたいか、希望があるなら今の内に言うがよい」
暴君は今度は懐から串の束を取り出し、『伝書ピンク鳥🐦』に見せた。
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT 王様! どうかお助けください ToT 私はただの『伝書ピンク鳥🐦』です。『焼き鳥』にされたくはありません ToT 串に刺すのはおやめくだされ ToT」
「たわけ者! 我がままを言うでない! 『焼き鳥』になることを拒むのであれば、そなたを『唐揚げ』にせざるを得なくなるぞ! それでもよいのか! さあ、『唐揚げ』にされたくないであろう?……大人しく『焼き鳥』になってくれるな?」
「ピヲピヲ~ ToT 王様! それでは、いずれにせよ私は死んでしまうではないですか ToT」
「お前も話の分からんやつだ。オイ、兵士たちよ! この『伝書ピンク鳥🐦』に少し分からせてやるがよい!」
「ハッ! 暴君様!」
先頭に並んでいた5~6人の兵士たちは、網の中でバタバタともがく『伝書ピンク鳥🐦』に近付き、網の隙間から手を差し込み、バサバサバサッ!とピンク鳥🐦の羽を大量に毟り取った。
「ピヲピヲピヲ~ ToT 何をするのです~ ToT やめてくだされ~ ToT あぁ~痛い~ ToT」
『伝書ピンク鳥🐦』は涙を流しながら網の中で暴れ回り、彼の周囲には鮮やかな色のピンク羽が飛び散った。
すっかり軽量化したピンク鳥🐦は、ピヲピヲと泣いた(鳴いた)。
「ピヲピヲピヲ~ ToT あ~、私の自慢のピンク羽が~ ToT どうか私をピンク鳥🐦村に返してください ToT」
「何を言っておる。せっかく宴の日に飛んで来たのであるから『焼き鳥』になってゆけという余の申し入れをまだ断るのか! 『唐揚げ』にはなりたくないであろう? さあ、『焼き鳥』になってくれるな?」
「王様~ ToT 私は何も罪は犯しておりません。王様とピンク鳥🐦村の皆のため、来る日も来る日も懸命にメッセージの伝達に努めていただけでございます~ ToT 『焼き鳥』はご勘弁ください ToT」
「ええい! 何と不条理なことを言うやつだ! 宴の日に自ら飛んで来ておきながら、『焼き鳥』になることを拒むとは! おい、お前! このトングでそのピンク鳥🐦をつまめ!」
焼き鳥好きの暴君はそう言って、持っていたトングを一番近くにいた兵士に渡した。
トングを受け取った兵士は、ピンク鳥🐦を捕らえた網を少し上げ、隙間からトングを差し入れた。
そして、羽を毟られて飛べなくなった『伝書ピンク鳥🐦』をトングでつまんだ。
トングでつままれた『伝書ピンク鳥🐦』は恐怖のあまり、激しく抵抗して暴れた。
バサバサバサバサッ!
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT 私は単に王様に伝言を持ってきただけでございます~ ToT どうか離してください ToT 私は『焼き鳥』にされたくありません~ ToT」
暴君は兵士に向かって冷酷に言い放った。
「焼け!」
兵士はトングで『伝書ピンク鳥🐦』をつまんだまま七輪に向かい、勢いよく木炭の上の丸網にトングを近付けた。
「ピヲピヲピヲピヲ~ ToT やめてくだされ~ ToT 私はただの『伝書ピンク鳥🐦』です~ ToT 私を『焼き鳥』にしないでください~ ToT 熱い~ ToT ピヲピヲ~ ToT」
ついに兵士はトングにつままれたピンク鳥🐦を熱々の丸網に押し付けた。
ジュワ~ッ!
「ピヲ~ッ!! ToT」
『伝書ピンク鳥🐦』は熱い丸網の上で暫くの間、激しくバタバタと暴れ、ピヲピヲと泣いていた(鳴いていた)が、やがて動きがパタッと止まり、全く声を上げなくなった。
数分の後、『伝書ピンク鳥🐦』は、その羽の鮮やかなピンク色など見る影もないほどの焼かれ具合となった。
「よし! そろそろよいであろう! 焼き鳥となった『伝書ピンク鳥🐦』をこちらに持ってまいれ」
「ハッ! 暴君どの!」
「全く往生際の悪いピンク鳥🐦であった。最初から素直に『焼き鳥』になりますと返事をしておけばよかったものを……。ほぉほぉ、それにしても、見事な焼き鳥だ! よし、お前、さっきまで『伝書ピンク鳥🐦』としてピヲピヲ鳴いていた焼き鳥に、今の気分を聞いてみよ!」
「ハッ! 暴君どの!」
兵士の1人が焼き鳥に向かって語り掛けた。
「オイ! お前はこれまで『伝書ピンク鳥🐦』として雨の日も風の日も鳴き言も言わず、一生懸命に王様とピンク鳥🐦村の皆のために尽くしていたな! みながお前の働きに大そう感謝していたことと思う。それが、今宵の宴のため、急遽『焼き鳥』にされてしまった今の気分を述べてみよ!」
「…………」
焼き鳥は何も反応しない。
「ハッ! 暴君どの! こやつはすでに『焼き鳥』となっているため、何も喋りません!」
「そうか。とてもマジメで優秀で忠実な『伝書ピンク鳥🐦』が、ついに何も言えなくなったとは……哀れな奴だ。兵士たちよ。この『焼き鳥』のために歌ってやれ!」
「ハッ! 暴君どの!」
兵士たちは、地面に無造作に置かれた『焼き鳥』を囲み、皆で歌い始めた。
「働き者の伝書ピンク鳥🐦~♪
ご自慢のピンク羽~♬
みんなのために尽くしていた~♪
大切な鳥🐦だった~♪
ピヲピヲ鳴いて~ みんなを助け~♪
親切だった~ 鳥🐦さ~♬
今は~♪
もう~ ♪
喋らない~ ♪
ヤキト~ オ~ リ~♬
ピヲピヲ焼かれたピンク鳥🐦〜♪
黒焦げのピンク羽〜♬
お別れのときが来たので〜♪
串に刺されたのさ〜♬
家族を愛し〜 仲間を愛し〜♪
愛されてた〜 鳥🐦さ〜 ♬
今は〜♪
もう〜♪
喋らない〜♪
ヤキト〜オ〜リ〜 ♬」
「よし! 兵士たちよ、よくやった! この『伝書ピンク鳥🐦』は、とても優秀であった! しかし、すでに『焼き鳥』となってしまったため、残念ながら、代わりの鳥🐦を探さなくてはならん! 宴のために『焼き鳥』になってくれはしたが、コレに代わる鳥🐦を探さなくてはならんとは。あぁ、たいへんなことだ!」
暴君は嘆いた。
そして、今一度、元『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』と元『伝書ピンク鳥🐦』だった2串の『焼き鳥』を見下ろした。
「あー、今日もこうして罪のない2羽の鳥🐦🐦が哀れなことに『焼き鳥』になってしまった。。。」
暴君はさめざめと泣いた。
そして、2串のモノ言わぬ『焼き鳥』に語りかけた。
「おい! 元『ご機嫌鼻歌ピンク鳥🐦』! そして、元『伝書ピンク鳥🐦』! そなたたちは、今やすっかり『焼き鳥』となってしまった! 散々『焼き鳥』になるのを拒んでいたが、もうどこからどう見ても正真正銘の『焼き鳥』である! 今の正直な気持ちを申してみろ!」
「…………」
2串の焼き鳥は何も反応しない。
「コレ! 黙っていては分からぬではないか! 晴れて『焼き鳥』になった気分はどうかと聞いておるのだ! 何か申せ!」
「…………」
2串の焼き鳥は何も反応しない。
「ほぉ……あれほどピヲピヲ鳴いていたピンク鳥🐦たちも、『焼き鳥』にされてしまっては、やはり何も申せないということか……仕方がない……余はもうお腹いっぱいじゃ……」
そう言って暴君は、2串の『焼き鳥』をゴミ箱に捨てた。
(完)
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