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差は歴然!中国高速鉄道と日本の新幹線、メンツと乗客とどちらが大事?

テレビなどで時々紹介される中国高速鉄道(新幹線)ですが、発展はすばらしく、最高時速350kmで、北京・上海間1340Kmを4時間50分で結んでいます。ちなみに東京・博多間は1070kmを4時間46分で結んでいます。

さて、中国高速鉄道と日本の新幹線は実際に乗り比べてみなければその違いは判りません。さあ、どちらに軍配が上がるでしょうか?

■中国のある旅行会社の広告
中国高速鉄道(CRH)および新幹線は中国で革新的な発展を遂げています。輸送はとても便利で早いです。10年間で高速鉄道は最も人気のある交通手段になりました。

高速鉄道は時速200~350kmで、列車にはG、D、Cといった3種類があります。それぞれの設備と外観はよく似ており新しく現代的です。空港が遠い所にも行くことができ、制約なく気ままな旅を提供する中国の新幹線(高速鉄道)は、まさに翼のない飛行機のような存在なのです。

鉄道を使った旅行は、飛行機では味わうことのできない、様々な楽しさを倍増させるものでもあるのです。
と、このように紹介されていますが、実際に乗ってみると日本の新幹線との違いがよくわかります。

■日本の新幹線との違い
中国の高速鉄道と日本の新幹線を比較した結果、両者にはハード分野ではなく、ソフト分野において大きな違いがあると思われます。管理運営のソフト分野では、多くの経験の積み重ねによるノウハウ蓄積が必要で、具体的には、チケットの購入から乗車、乗り換え、到着にいたるまで、乗客の立場で利便性が追及されているかどうかです。
中国の高速鉄道はその点、駅舎の大きさやスピードなど見栄え(担当のお役所のメンツ)が見え隠れします。

【路線】いわゆる高速鉄道路線と呼ばれるのは、下図の路線なのですが、実際には新幹線車両は在来線でもよく見かけます。高速鉄道路線(高架橋)と、一般の在来線を走る日本の秋田新幹線や、山形新幹線と同じ考え方で運行されています。

但し日本と違うのは、もともと中国の在来線は線路の幅が新幹線の線路の幅と同じであったこと(標準軌の線路幅1,435 mm)、日本と異なり、在来線には踏切が無く人や車の立ち入りができない事から日本と違って自由に新幹線車両を高速で(時速200km以上)走らせることが出来るのです。
これは日本にない大きな特徴であり、メリットです。

【運賃】上海、北京間(1340km)所要時間約5時間で、555元(約7000円)ですから、日本の運賃と比べかなり安く設定されています。東京博多間は1070kmで21210円ですから1/3の運賃と言うことになります。これは、建設費が安いことから運賃も安いのですが、所得水準から言うと555元でも中国の労働者にとっては高嶺の花と言えます。

【駅の立地】中国の新幹線の駅は必ずしも都市の中心に位置しておらず、まるで空港へ行くような感覚で、20分もタクシーを飛ばし、やっと駅にたどり着くと言った感じがします。

バスの乗り場が遠かったり、タクシー待ちの長い列が出来たりしていて新幹線に乗るまで、また降りてから目的地にたどり着くまでの時間が結構掛かってしまい、せっかく速い列車に乗っても効果が薄れてしまいます。
まさに冒頭のうたい文句にある「翼のない飛行機のような存在」ピタリそのものです。

【チケット購入方法】チケットの購入は駅まで行って自動販売機で購入するか、窓口で30分並ぶか、あるいは手数料を払って市内の代理店で購入します。(私が赴任していた当時)
但し身分証明書がないと購入出来ません。自動販売機は、中国人の身分証明書だけしか読み取れないため、外国人はパスポートを持って窓口に並ぶしか方法はありません。

広大な面積の上海虹橋駅待合室

【乗り換え】もっとも不便なのは、乗り換えがある場合、目的地までチケットを通して買うことが出来ません。乗り換え駅で一旦改札を出なければならず、セキュリティー上ホームに留まることはできません。改札を出て、チケット売り場まで行き、目的地までのチケットを買う必要があります。
ネットで購入する方法もあるようですが、ネット取引用の銀行口座を開設しておく必要があります。

【チケット売り場】なぜか、チケット売り場は、一般に広大な駅の端の方にあり、チケットを買って改札口まで行くのに広い駅構内を行ったり来たりしなければならず、急いでいて荷物のあるときなどは汗びっしょり状態です。

【チケットの種類】チケットは座席指定が基本で、朝夕のラッシュ時や、連休の時は希望の列車に乗れない場合があります。(立ち席もあるようですが、値段は同じとか?)
定期券や1日券など割引切符などは有りません。

【乗りごこち】時速300kmでも振動も少なく、静かで乗り心地は日本の新幹線とさほど変わらないと思います。ただし、座席の作りはあまりよくないため、座り心地はよくありません。ダイヤの遅れはほとんど無く運行されています。
ただ、降りた人のあとの座席のテーブルや床にゴミがそのまま放置されていたり、大声で携帯電話を掛けたり、音楽を掛けたりする人もいて騒がしく、マナーは良くありません。

【安全性】一番気がかりなのは安全性ですが、中国高速鉄道はコストを抑えたために路線に使用している化学硬化剤の強度が不足している、また鉄道高架の支柱についても強度不足が疑われるとニューヨーク・タイムズ誌は指摘しています。数年後には施設の劣化が進み、大事故につながる可能性も否定できません。

2011年7月に浙江省で発生した脱線事故、こともあろうに脱線車両を高架橋の下に埋めてしまい
世界中から非難を浴び、再び掘り返すという失態を招いた。この事故をきっかけに一時最高速度を350㎞から300kmに引き下げられた。

また工期を短縮するため、測量・設計・施工を同時に進行させるという短期集中方式で建設し、開通してすぐに高速運転を始めています。先進国では、建設後に地盤の沈降など各種の問題点が出現することが想定されるため、開業してもすぐに本格的な高速運転はしません。一定の時間をかけて調整した上で、本来の性能を生かした運転を始めるのが基本です。

安全問題に輪をかけているのが、汚職の問題です。だれかが不正に利益を得た分、手抜き工事などで費用を浮かせていると考えるのが自然ということになのでは???

【まとめ】中国の新幹線は、駅の見た目の豪華さや、列車のスピードに目が行きがちですが、役所のメンツにこだわっている面や、役所間の連携が取れずバスや、タクシー利用なども含めた利用者の利便性が置き去りになっている面も否定できません。

(よく考えてみよう)
皮肉にも、翼のない飛行機のような存在とはよく言ったもので、出発地点から到着地点までは早くて便利で、まるで飛行機に乗っている感がしますが、なぜそのように感じるのでしょうか?

また日本の新幹線は、まったく飛行機とは異なる利便性の良い乗り物と認識されていますが、それはなぜでしょうか?


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