春節を四川省の故郷で過ごす。母は嬉しそうに・・・
中国美人「王紅華」の波乱の半生(5)
中国美人「王紅華」の波乱の半生では、したたかとも思える「王紅華」という女性の波乱に満ちた生き方にスポットを当てています。この記事は中国人少女が内陸部の村から都会に移り住み、家族を想いながら必死に生きる姿を描いた、リアリティーに富んだ内容のフィクションです。
20歳代も半ばを過ぎてていた王は、少し焦りを感じていた。今までは現金収入は得たいがプライドもあり、金のためだけで男を選ぶのはためらっていた。
そして何より四川省の田舎の両親に後ろめたい気持ちもあった。理由はともかく男をだまして得た金を両親に送っていると判ったら喜ぶはずがないと考えた。
王は4年以上のクラブの仕事で理想の日本人には出会うことが無かった。日本人はほとんどが遊び目的でクラブを訪れ、まじめに店の中国人の女とつき合おうなど思っている者は皆無だった。
仕事仲間の女性は、ほとんどが金目的と割り切って男とつき合っていた。金のためなら、平気で男をだまし、二股をかけている者も多くいた。
王はまだ純粋な想いが心の片隅に残っており悩んだ。この男となぜ一線を越えたのか、自分でも理由が判らなかった。自分がこのまま堕落して行くのでは無いか?
そう思いつつも、ついついこの男に誘われるままの関係を続け、毎月5000元(7万5千円)ほどの金をもらうようになっていた。
春節もあと1週間にせまったある日、四川省成都の空港に王は降り立っていた。空港から両親の住む町まではバスを乗り継いで4時間ほど山岳地帯に入ったところにある。
みぞれ混じりの雨が一日中やまず、未だ舗装されていない道路は、ぬかる道になっていた。バスが着くと王の母が傘も差さずに出迎えていた。王はバスを降り母のそばに走り寄り両手を取って、思わず声を上げて泣いた。2年ぶりの再会だった。
旧暦の大晦日には王の両親の家には大勢の人々が集まっていた。王の3人の兄弟が全員集まるのは2年ぶりのことだった。母は足が少し不自由だったが、子供達や孫に料理を振る舞うのにうれしそうに、にこにこ顔で家の内外を絶え間なく動いていた。
王も料理を運ぶのを手伝った。男達は白酒を酌み交わし明け方まで騒いでいた。田舎の家には冷蔵庫もガスレンジもなく、ごちそうも保存食がほとんどで、豚肉・鶏肉やウサギなどの干し肉、川魚の干物、などを一度水に浸してほぐし、野菜と一緒に煮たり、油で炒めたり、スープにしたりして、同じ素材に変化をつけ、美味しく食べる工夫をしていた。
王は、両親や兄弟、甥や姪たちに紅包(お年玉)を一人一人配った。両親には深センのショッピングセンターで買い求めた厚手の下着やセーターを贈った。
末っ子で育った王は、男尊女卑の風習の中で疎まれて幼少の頃を過ごしていたため、深センに出ていって、成功し収入をたくさん得ているということを田舎の兄弟達に印象づけたかった。
また、両親に喜んでもらいたいと思っていた。ほんの一時をふるさとで楽しく過ごす王は、男と関係を結んで得た金で実現出来た事とは、この時は考えてもいなかった。
第1章その6へ続く >>>
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中国美人「王紅華」の波乱の半生(第1章)
中国美人「王紅華」の波乱の半生は、したたかとも思える王紅華の波乱に満ちた生き方にスポットを当てています。この短編小説は2004年、中国人少…
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