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日本の労働者の賃金が上がらない理由

日本の未来 若者は「生きがい」を見出せるか?(その2)

賃金の上がらない理由は様々ありますが、いくつかの要因を挙げてみます。
このグラフは、一人当たり実質賃金の伸びを示す国際比較です。他の国に比べ、日本だけが伸び率が低くなっています。その理由の一つは雇用が流動化していないから。

企業が従業員の賃金を上げるには何が必要でしょうか。企業は、材料費や電気代が上がり、利益額が減少する中で、賃金を上げるということは、追加の人件費がかかり、そのぶん、さらに利益が失われてしまいます。したがって、人件費を一定に抑えるためには、逆に企業が従業員の数を減らしやすくする必要があるのです。

欧米の企業のように、会社が人を解雇してもいい状況を作り出す必要がある、ということです。
日本は長い間、「新卒一括採用・終身雇用」をとってきたので、雇用を守ることを最優先にしてきました。他方で、現代の欧米の企業は競争力や利益が落ちてくると、雇用を減らして利益を確保します。これはどちらがいいか悪いかではなく、そういう仕組みだということです。

日本は業績が悪くても絶対に雇用を守るというスタンスをとります。すると人件費の予算を一定内でまかなうには、一人当たりの賃金を抑える必要があります。また、非正規労働者や外国人研修生などを雇用し、全般的に賃金を抑える方向に行くのです。
ですが、欧米と日本のどちらがいいのかは意見が分かれるのです。

次に、人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか?という問題です。
人手不足になれば、賃金が上がるはずです。ところが一番人が不足している医療、福祉、介護、保育などの分野では公的なサービスに近く、介護報酬などの形でサービスの価格が決められています。

なぜなら、子供や老人からはそれほどお金を取ることはできないため、人手不足なのに賃金に反映できないと考えられます。このため、人手不足なのに賃金に反映できないと考えられます。

もう一つは労働力の供給側、働く側の変化です。
このグラフは、正規雇用と非正規雇用の推移を示しており、非正規雇用者比率は年々増加してきました。バブル経済崩壊後の「失われた30年」に、新たな働き手として労働市場に出てきたのは、高齢者と女性でした。

企業に65歳までの雇用が義務付けられ、働く意欲のある高齢者が、労働市場に残るようになりました。一方、女性は1970年代以降、労働参加率が伸びています。高齢者や女性は、終身雇用の正規労働者ではなく、非正規の形で働く人が多く、多少賃金が低くても働いてくれるのです。

働く人の総数は増えていますが、増えた部分のほとんどが非正規の労働者です。好不況、業績の変動に対応する調整弁、のりしろとして非正規労働者の雇用を増減させて対応するようになったのです。

会社はだれのもの?
株主資本主義の台頭で企業は株主のものになった?
1980年代まで、日本の企業は株式の持ち合いによる安定株主と銀行融資に支えられていました。ところが1990年代の金融危機以降、銀行融資に代わって株式発行などの直接金融が中心になり、外資ファンドなどの株主が、短期的な業績向上を求めるようになったため、その成果を社員に還元せずに、株主に分配するようになりました。

そのため、成果が不確実でリターンに時間がかかる人材育成や訓練投資が出来なくなったと思われます。正社員を訓練しスキルアップさせ、賃金を引き上げるのが、年功賃金の制度設計ですから、訓練投資の減少とともに、正社員の賃金上昇カーブも緩やかになってきました。

(その3)に続く

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