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あれが僕にとってロックが本当に面白かった時期なのかもしれないって話

1980年代の前半は、僕にとって
目まぐるしいことのオンパレードだった。

まず、当時中学生だった僕は、
びっくりするほどのド田舎で
友人とハードロックバンドを結成して
ドラマーの座に就いたことだ。
当時はNWOBHM(ニューウェイブ・
オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタル)
のムーブメントが起き始めた頃。
それまでは「ハードロック」
と言われていた音楽が、
「ヘビーメタル」に変わっていった頃だ。
はっきり言って僕には何度聞いても
その違いがよく判らなかった。
僕らのバンドのギターの黒川(仮名)は
ヘビーメタル好きで、僕らに
ジューダスプリーストを教えてくれのだが
どちらかというと「ハードロック」という
響きが好きだったらしく、
よく僕らのバンドのことを
ハードロックバンドだと言っていた。
まぁ結局、僕たちは
好きな音楽のジャンルなんて
大して気にもしてなかった。
好きなロックが目の前にあってそれを聴く
ただそれだけのことだった。
バンドに夢中になっていた僕たちは
先輩バンドのライブを
見に行くようになった。
とはいえ、僕たちが住んでいたのは
超マイナーな県の、さらに山の方の町。
ライブハウスなんて洒落たものは無く、
町の小さな公会堂を借り切って
手作りのライブを行っていた。
誰に借りたのかは知らないが、
それなりのPA機材があり、
(確か個人所有だった)
今思えば大学の文化祭なんかよりは
いい音がしていた気がする。
そして、僕たちはそこで、
バンドの師匠とも言える
憧れの先輩バンドと出会った。
僕たちは、どういうふうに演奏して
どういうふうにパフォーマンスするか
そのほとんどすべてを彼らから学んだ。
彼らが演奏していたのは
UFO、スコーピオンズ、シン・リジー
ジューダス・プリーストなどで、
少しづつ僕たちも同じアーティストの
曲をコピーし始めた。
この頃が人生で一番音楽と
接していたような気がする。
そして、目まぐるしいことの
オンパレードの二つ目が
新しい音楽との出会いだった。

先にも書いた通り、僕たちは
ちょうどNWOBHM全盛のころに
バンド活動を始めた。
日本のニューミュージックと
外国のNWOBHMは、僕にとって、
とても刺激的だった。
出てくるアーチストのほとんどが
聴いたことのない新しいロックだった。
それはまるで、誰かと似ていることや、
誰々風の音楽を演奏することが
恥だとでもいうかのように、
みんな個性的でキラキラしてた。
洋楽ではマイケルシェンカーグループが
結成され、「神」を、
オジーオズボーンが
「ブリザード・オブ・オズ」を発表し
アイアンメイデンや
デフ・レパードがデビューした。
日本ではゴダイゴに
サザンオールスターズ
佐野元春なんかが売れまくり、
アイドルバンドだったレイジ―が
「宇宙船地球号」という
ハードロックアルバムを発表した。
しばらくするとモトリークルーや
ラウドネスなんかもデビューした。
もう、中学生という
頭が柔らかい時期じゃなかったら
窒息死していたかもしれないほど
1~2年で息もつかないほど
音楽が僕たちに襲いかかってきていた。
いままで聞いてこなかった
ハードロックのアルバムを
掘り起こしながら、
新しいバンドの曲を聴くのだから
そりゃあ大変だった。
しかも、僕たち田舎の中学生は
当然お金がないもんだから、
誰かの家に行って聞いたり
テープにダビングしてもらったり
ほぼ毎日のように新しい音楽を
何曲かずつ聴いていたような気がする。
(ちょっと大げさだけど)
しかも歌謡曲や大好きなアイドルの
曲なんかも聞いているんだから
本当に我ながら驚きである。

でも、この頃が僕にとって
ロックが本当に面白かった時期
なのかもしれない。

粗削りな新しいロックは
確実に僕たちのハートを揺らして
なんだか知らないが
僕たちを熱くさせた。
当時のロックアルバムなんて、
リズムが走ろうが
ちょっとミスしようが
お構いなしにリリースされていた。
ライブなんて行くことができない
僕たちにとって、
それは本当に生身の音楽だった。
そんなだからこそ
僕たちは夢中になれたのかもしれない。
当時バンド仲間のドラマーが、
自分はうまく叩けないから
「メトロノームを聞きながら叩いてる」
って話していた。
でも、その子の叩くリズムは、
なんだか個性的で、とても魅力的だった。
僕はその子の、エトロノームなしで叩く
ドラムが好きだった。
ほとんどのドラマーがクリック音を
聴きながら叩くことが常識になった
現在では考えられないことかもしれないが
リズムが不安定だった(揺れていた)
頃の方がバンドは面白かった。
今は、ドラムに個性がなくなって
バンドが平均化してしまっている
のかもしれないなぁ…
なんて考えてしまったりしている。

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