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QOLを上げる意外なモノ
自己紹介に続いて初めての記事投稿です。
読者の方のお役に立てる記事はどれかな…と、僕が介護保険サービスで関わってきた爺様婆様たちのことを色々と思い出して箇条書きにしたりしてました。
爺様婆様は愛を込めての表現です。
で、どれを書こうかなと考えている間に時間が経過してしまったんです(汗
これはイカン!と思って、気軽に好きだったあの婆様のお話から書いてみようと思います。
引きこもっちゃったシズエさん
シズエさんは僕が出会った時は70代後半の元気な女性。社交的な性格で誰とでも本音で喋る明るい人でした。一人暮らしでしたが、近所にいる娘夫婦が時々訪問してくれていました。
ところがある日、庭で転んじゃって怪我をしてから自宅に引きこもりがちになっちゃいました。
当時は要介護1の認定がついて、社会参加と筋力維持のために買い物同行のケアプランを提案しました。歩行器を利用して外出するようにみんなで関わりました。
サービスが始まった数回は一緒に買い物に行ってくれたんですけど、回数を重ねるとヘルパーが誘っても一緒に行かなくなりました。色々なヘルパーが色々な声かけをしてくれたんだけど、ダメでした。そして、どんどんと引きこもりになってしまったのでした。
外に出ない理由は?
シズエさんは、ずっと同じ村で過ごして大きくなって近所に嫁入りされています。いわゆる地元育ちの婆様です。
買い物に出かけると、知り合いに見られるから恥ずかしいという気持ちがあったんでしょう。
さらには、家から近所の鳩のマークのスーパーまでは、途中に整備されていないガタガタの道があったんです。歩行器では歩きづらくて、精神的にもしんどかったのかもしれませんね。
カンカンは宝箱
「今日も一緒に買い物いってくれないかなぁ」とヘルパーがその日も自宅へ訪問しました。シズエさんは、衣替えか何かで押し入れからものを出して、布団や衣類の整理整頓をしようと動いていました。
「手伝いますよ」
と重たいものは手伝って、シズエさんができることはやってもらうというスタイルで衣替えをしました。自立支援が大切だからね〜。
作業を進めていると、カンカンが落ちて、中から細かいキーホルダーなんかのものがバラバラと散らばってしまいました。一緒に、綺麗な鈴の音が聞こえました。
ちょっと古くなっていましたが、大きな赤い鈴でした。ばらばらになったほかの小物と一緒に「きれいですね」と鈴を拾ったヘルパーが思わずことばをかけました。
シズエさん
「あら〜こんなところにあったのね」
「これはウチが小学校時代にカバンにつけていた鈴なんよ」
「懐かしいわ〜」
と、自分はどんな幼少時代を過ごしたのかも含めて、嬉しそうにお話をしてくれました。
その日の最後にヘルパーから
「この鈴、歩行器につけませんか?」と提案をして、その日はサービス終了しました。
勇気の鈴がリンリーンリン
次のサービスの日「今日は一緒に行ってくれるかなぁ」とヘルパーが自宅へ訪問しました。
するとシズエさんから元気な挨拶が聞こえてきたと思ったら
「さぁでかけよう!」
「幼馴染みのみさちゃんに会ったら鈴を見せたいんや」
と、まだかまだかとヘルパーが来るのを待っていたようです。
ヘルパーも嬉しくなって「行きましょ!」と飛び上がりました。
その日はみさちゃんには会えませんでしたが、鳩のマークのスーパーからの帰り道にシズエさんがこんなことを言ってくれました。
「ガタガタの道は嫌やったけど、鈴があると音が余計になって嬉しいな」
見せたくない歩行器の姿や通りたくないガタガタの道が、懐かしの鈴によって60年の時を経て「勇気の鈴」に変わったのでした〜。
まとめ
いくつになってもお気に入りはあるもんです。
気にっているものや歌、料理などは、ケアをする人にとっては格好のコミュニケーションのきっかけにもなります。
僕たちもそうですけど、気に入っていて愛着があるものを他人から認められると嬉しいものですよね。また、誰かに勧めたり見せたくなるものです。そんなものを1つでも持っている人は幸せが1つ増えるのかもしれません。
爺様婆様によっては、「なんでこんなものが…?!」と僕たちが思うものを大切にしていることもありますからね。ライナスが汚い毛布をいつも持っているみたいに。
追伸
個人情報の保護のために、エピソードには若干…の脚色がついていることをお許しください。固有名詞も仮称です。
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