超こわくない話(ギャグ劇団笑)『登山サークルの恐怖』
僕は寺の息子。
怖がりだが、見えちゃう。
今日、同級生のマリ男が喧嘩を吹っかけてきた。
この小学校ではライバル関係。
マリ男は手ごわい。マリ男のマリは、ミスター「マリック」の「マリ」だ。
大人顔負けの手品もするし、まだ僕らが読めないような大人のミステリー小説も読んでいるらしい。
東野圭吾とか、そんなの。
「超怖い怪談のミステリーだ。解けなければキサマの負け」
放課後、僕を呼び出した。
「どんなミステリーだ」
「ある雪山で遭難した人たちが遭遇した恐怖だ。こわいぞ。小便漏らすなよ。お寺の子。クソ坊主の子」
「うるさい。父親のことを“クソ”呼ばわりされる筋合いはない。いつもマリックのマネばかりしているくせに」
教室には誰もいない。
マンツーマン対決。
「よし、じゃあこの謎を解け。たぶん黒板に図を描いた方がいいぞ」
マリ男が、チョークを渡してくる。
「ある登山サークルのメンバーが5人で山登りしたんだ。真冬だ。そして気の毒なことに“不幸”に苛まれる」
「不幸?」
「そうだ。途中でサークルのリーダーが死んだんだ。足を滑らせて滑落した。いまだに死体も見つかっていないらしい」
「本当か」
この時点で、もう僕は怖くなっている。
「残されたメンバーはテントを張って、夜を明かすことにした。テントの外は猛吹雪だ」
「テントか」
僕はチョークで四角い部屋を書いた。
「雪山で眠ると死ぬが、リーダー以外全員は生還した」
「どうやって?」
「謎解きだ。この4つの磁石使えよ。登山サークルの4人のメンバーだよ」
僕は、いわれるまま四角形の部屋の図に磁石をくっつけた。
「彼らは一人ずつ、他のメンバーが立っているコーナーまで走っていき、相手の肩を叩いて起こした。これをひたすら繰り返して、無事に夜を明したんだ」
「ほう」
僕は磁石を動かす。
「どうだ。何かに気がつかないか?」
「4人じゃ足りない」
「……」
「つまり死んだリーダーがメンバーを助ける為に5人目の役をしていたのか。幽霊になって」
僕は自分で“謎”を解いたのに怖くなる。
「バカ」
笑うマリ男。
「バカ?」
「ああ。初めから4人も必要なかったんだよ」
「え」
「テントだから四角形じゃない」
マリ男は、黒板の図を消し始めた。
マリ男が図を新たに書き加えて全てが明白となった。
「なるほど」
言葉を返せなかった。
「わかったか。つまりテントだから部屋は3角形だったんだ。だから、4人いれば済んだんだ」
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