【時短系料理人16】

『ママ、パパが怖がっているよ』 
僕は、後部座席のママに言った。 

言ったと言っても、パパには聞こえないけれど。

僕らはスープ。
死人の声。

『そうね。成功ね。若い頃の格好で、道路の路肩に立って脅かしてあげたから』
ママは、満足そう。

『どうするの?』
僕が聞く。

『どうするって?』

『このままだと、僕ら、隅田川に流されちゃうよ。そのまま、小魚のエサになるのかな?』
『そうね。パパに復讐しなきゃね』
ママは思案している。

『方法あるの?』

『うん。パパは今怖がっているし。だから、もっと脅かせば、ハンドル操作を誤って川に転落するかもしれないね。ひひひひ』
ママは、容器の中でほくそ笑んでいる。


 

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