シン【ソウサクの中毒⇔中毒のソウサク⑫】

「キキキ」
 白塗り人間キョンシーたち(元お袋含む)は、窓をこじ開けてとうとう屋根へ這い出てきた。
 まるで、人間じゃないよ、ホラー映画さ。

「逃げろ」
 俺は屋根を伝って、隣の家に飛び移った。
『バウバウ』
 子牛ほどの大きさのマスティフ犬が吠えている。
 隣の飼い犬は、俺の行く手を阻もうとしているかのようだ。
 
 下手したらガブリと噛まれそうだ。
 このマスティフは、身体ばかりでかくて、何度もドロボーに入られているマヌケ犬だったが、こんな時ばかり、はりきっている様子。

「この役立たずめ」
 俺はマスティフ犬に噛まれては大変だと、物置のように巨大な犬小屋を避けるルートで屋根を走り続けた。
 
 だれもかれもが、俺を殺そうとしている。
 俺は、そんな限りなくブルーな気持ちになっているんだ。
 
 

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