【時短系料理人9】 

 車は、夜の首都高を突っ走っている。
 
 猛スピードだった。

「本当にどうする?」
 俺は、ハンドルを握ったまま周囲を見回した。
 
 矢印だらけの道路標識!!!
 
 これ以上、俺を困惑させるな。だが、この“時短計”で作ったスープを処分する場所は、簡単には見つかりそうになかった。

 ――どこかに、流す? 
 以前、マンションでバラバラにした恋人の死体を、粉砕して、トイレに流した殺人鬼がいた。

 アイツは、すぐに捕まったはずだ。

 バカめ。
 そんなことをしたら、すぐにバレる。バレるに決まっている。
 
 殺人者は、頭を使え

(待てよ) 
 ここは、マンションから離れている。
(これほど、マンションから離れた川や海なら、ワイフで出汁を取った死肉スープを流しても、大丈夫かもしれんな)

 こんな考えが、一瞬、頭をよぎる。

「ダメだ、ダメダメ」 
 俺は首を振った。
 それでは、普通すぎるから。
 
 俺は、死後もアイツらを辱めたいのだ。 
 だから、今日は、わざわざ野良犬たちに喰わせようとしたのだ。

『アイツらは、せいぜい豚の餌で十分だよ』
 俺は、アクセルを踏み続けている。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?