【時短系料理人2】


パパ、殺しに来たよ

この前は、鍋で煮込んでくれてありがとう

熱くてすぐに、気絶したからいいけど

僕の全身は、見るも無惨な姿になってしまった

でも、すぐにママに会えたよ

『パパを殺しましょう』ママはこう言っている

――当たり前さ。これは、僕も同じ意見だよ。絶対許さない

『ブロロロロロ』
今、僕たちはパパの車の助手席に乗っている。

スープとなった僕たちは、ドロドロ肉塊となって、高速道度で揺られているんだ。小分けにされて、冷凍されて、フリーザー用のパックに詰め込まれている

パパは、僕とママのスープを、野犬の餌にするつもりだって知ってる

それで、人里離れたあそこに向かっているんだ

ついたみたい

ここは、栃木県の山中。この匂いはどこか、なつかしいな

『ワンワン』
一匹の野犬が近づいてくる。

あの犬は、今は野犬たちのリーダーなんだよ

だから、他の野犬たちはリーダーの命令で動くんだ

――パパ、バカだな

あの犬って、ジョンだよ
忘れたわけじゃないでしょ

パパが僕たちの家で、飼っていたのを捨てたんだからさ

僕ね。ジョンと約束したんだ

お互いに、何かあったら助け合おうね。何かあったら、復讐しようね

知らないのはパパだけだよ

『グルルウ』
野犬たちの群れが、車に近づいてきた。

最後にママと僕からのメッセージだよ

パパ、今までありがとう

「ジョンに食われて、死ね」 

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