(奇妙な話/怖くない話)あいにきた

 僕は双子だったらしい。
 小学校の3年生になるまで知らなかった。
 もう片方は、ママのお腹の中で死んだらしい。

 小学校3年の頃。
 季節は、お盆。死者が戻ってくる季節。
 僕は、ママの独り言を立ち聞きしてしまった。

「あの子のへその緒が首に絡みついて死んだのよ」
 ママは、仏壇に手を合わせていた。

 ずっと不思議だったことがある。
 家の仏壇には、正体不明の遺影があった。
 一つは去年死んだじいちゃんのヤツ、もう一つは僕が生まれる前に死んだばあちゃんのヤツ。
 で、もう一つは?
 これが謎だった。

 そしてママの独り言を立ち聞きしたことで、謎が解けた。

「あの子のへその緒が首に絡みついて死んだのよ」
 僕は双子で、本当は兄貴か弟がいたらしい。
 その子は、僕のせいで死んだ。

 それから、不思議なことが起こるようになった。 
 
 夜、眠れずに目を覚ますと、僕そっくりの男の子が、部屋の片隅に立っているんだ。

「あいにきた」
 男の子はこう言った。
「誰?」
 僕は聞いた。
 聞かなくてもわかっている。

「あいにきた」

「誰なの?」
「君の知っている人だよ。君はママの話を立ち聞きしただろ。だから、もうこそこそしている必要は無くなった。だから、あいにきた」
 男の子はこう言った。
 男の子は、本当に鏡映しに僕そっくりだった。
 
 その日からお盆の間中、夜にやって来て、何度か話をした。

 そして、お盆があけると、男の子はもう現れなくなった。

 あの体験を思い出すと今でも、どこか悲しいような、懐かしいような不思議な気持ちになる。

 

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