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式子内親王の秋の歌

秋こそあれ人はたづねぬ松の戸をいくへも閉じよ蔦のもみぢば 式子内親王

新勅撰和歌集・秋下・三四十五

平井敬子さんによる現代語訳は以下の通り
「ああいまこそ秋である。秋であるけれど人は誰ひとり訪ねてこない松の戸を、幾重にも閉ざしてしまえ。美しい蔦紅葉の葉で。」

秋になると、思い出す一首です。
山に来て、「蔦のもみぢば」を見ることが多くなりました。木に巻き付いた蔦の紅葉葉がとても美しいのです。
式子内親王は、その蔦もみぢで戸を幾重にも閉じてしまえ、と詠う。
式子内親王独特の、内に内に籠っていく心がある。

「人もたづねぬ」とあるが、内親王はそれを嘆いているのではないと思う。どちらかというと、訪ねる人がない方が、内親王にはいいのではないだろうか。
山の家に住むようになって、この歌に同調していく自分を感じる。もともと好きな歌だったけれど、最近では私自身の声として、この歌が聞こえてくるのです。

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