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里山歩きのススメ。Part 2

 「山の楽しみ方は、人それぞれ。」と言われる。

 テント泊をしながらいくつものピークを踏破・縦走する人もいれば、山小屋での一夜を楽しみに山を目指す人もいると思うが、私のように手近な里山において季節の彩りを楽しもうという人も多い。

 登山を安全に楽しむためには、自分の体力や技術に見合った計画を立て、相応の山を選ぶことが必要である。そして、すべての山登りに共通する「約束事」は、

  自分の足で「頂き」を目指し
  自分の足で無事に帰ってくる

ということだ。

 たとえ低山であっても、自分の足で登り、無事に帰ってくることで、ささやかな「満足感」や「達成感」を味わうことができるし、それこそが山登りの楽しみなのである。

「里山歩きのススメ。」第2弾では、里山の楽しみ方について少し話そう。


☆ 最初は、無理のない相手(里山)を選ぼう。

 標高が低い里山であっても、そのピークに辿り着くためには、多少の体力が必要であることは言うまでもない。

 今回は、数年前の私のように、体力に自信はないが健康増進のため、初めて里山歩きに挑戦しようとする人をイメージして話を進めよう。

 まずは、山選びである。

 最初からハードルを上げるのはやめて、少し汗をかけば行けそうな山や、小さな子供でもハイキング程度で遊びに行けそうな山を選びたい。

里山の一部は公園として整備されている場所も多い。

 盆地や扇状地を囲むように立ち並ぶ「里山」には、かつての山城だった場所が多く、麓の町を見渡せるような展望スポットや山頂には、神社や祠が祀られていることが多いほか、公園として整備されている場所も少なくない。
 そういった場所になると、遊歩道も整備されていて歩きやすく、朝な夕なには地元のお年寄りなどが参拝や散歩(山歩)に往来しているので、万が一のときにも、比較的安心な場所でもある。

 まあ、「山登り」としては少々物足りない感じがするかも知れないが、最初は足慣らしから始めた方が安全なので、初めての里山歩きにはそういった選択肢をお勧めしたい。

 最初にも述べたが、山は、自分の足で登って、無事に戻ってくることが一番の楽しみであり、大切な「約束事」なのだ。

 いきなりバテてしまって、「もう、たくさん。」では、やらない方が良かったということになってしまいかねないので、最初は、神社の裏山など手近な場所から始め、無理をせず、疲れたら途中からでも戻ってくる気構えが肝心である。 

 自分が暮らす街をはるかに見下ろすことができる山への挑戦は、次のステップにしよう。


☆ 最低限の準備をしよう。

 里山歩きの第1段階では、散歩の延長程度とはいえ、平らな舗装路を歩くわけではないので、靴、ザック、レインウエアなど、最低限の準備はした方が良いだろう。

① まずは靴だ。
 足場が悪い場所を除けば、普通の運動靴やジョギングシューズでも大丈夫だとは思うが、山道には大きめの石がゴロゴロしているところも多く、段差もあるので、念のため、足首をガードしてくれる登山靴やトレッキングシューズを準備したい。

愛用の Caraban(ハーフカット)

 また、下り坂になると、足が靴の中で前方にズレてしまい、つま先を痛めることがあるので、靴は多少余裕のあるサイズを選ぶのがお勧めだ。

 登山靴やトレッキングシューズは防水性が高い上に、通気性にも優れているので、雨に降られたときに水の浸入を防いだり、蒸れも防止してくれる優れものなので、普段歩きにも大変便利である。

 靴に併せて、踵の衝撃を吸収してくれる厚めの靴下も用意したほうがいいだろう。

② 次に、レインウエアである。
 季節にもよるが、夏場には、突然の夕立に見舞われることも少なくない。
 安全な場所に退避するとしても、レインウエアがないとずぶ濡れになってしまい、身体を冷やしてしまうことにもなるほか、万が一のときはウインドブレーカーとして防寒着にも使えるので、軽くて丈夫なものを準備しよう。
 品質は、ゴアテックスを始めとする新素材から旧来のビニール製まで様々で、値段もずいぶん違うが、できるならば、ビニール製はかなり蒸れるので、通気性のある軽いものをお勧めしたいが、そこは、予算と相談して選んでほしい。

ミズノ製 新素材で多少の通気性があり、コスパは良い。

③ 最後はザックだ。
 レインウエアや水などを手に持って歩くのは危険なので、携行するものを収めることができる程度のザックは必要である。

 ザックも、様々な装備に合わせたものがたくさん売られているが、最初は、普段使っているディバックで十分だ。
 但し、雨に濡れることも考えて、防水性のあるものを用意するか、収納用のビニール袋を準備しておくといいだろう。

大分くたびれてきているが、日帰りなら30リットル程度で十分だ。

④ その他の装備について
 このほかの装備としては、帽子やタオル、登山ウエアなども必需品ではあるが、改めて用意せずとも、家にあるもので十分だろう。
 ただし、ウエアは綿は避け、吸汗・速乾素材のものがいいだろう。

 登山スタイルや目的地によって、トレッキングポールや紫外線避けのサングラスなども順次揃えていこう。

随分助けてもらっている
紫外線には注意が必要だ

⑤ 補食や水分について
 補食や水分は、その都度用意しよう。
 短時間のトレッキングなら、ペットボトル1本程度の水分と、ちょっとしたおやつがあれば十分と思われるが、汗をかいたら、水分だけでなく塩分やミネラルを補給しないと、足がつったり、身体が思うように動かなくなることがあるので要注意だ。

 塩分やミネラル補給のためのタブレットなどもあるし、エナジードリンクやゼリー飲料などは保存が利くので、いくつか用意してザックに入れておくのもいいかもしれない。


☆ 気に入った里山を見つけたら、季節や時間を変えて繰り返し登ろう。

 準備ができたら、いよいよ里山へ行こう。
 そして、気に入った山を見つけたら、何度でも、繰り返し登ってほしい。

 里山の楽しみのひとつは、普段見ている山の、季節ごとの変化を楽しむことだ。
 1回だけ行って終わりではなく、何度も、季節や時間を変えて行ってみるといい。

 春夏秋冬で山の景色は全く異なり、低山、高山にかかわらず、何回登っても同じ景色に出会うことは、まずない。

 今日はどんな顔で出迎えてくれるのだろうか

 そんなことを考えながら山行の準備をするのは、なんとも楽しいものだ。
 思っていたとおりの笑顔に出会えることもあれば、思いのほか機嫌が悪いこともある。それどころか、想像を超える最高の笑顔に出会って感動することだってある。

 辿り着いてみて初めて出会う「その日限りの顔」こそが、山登りの楽しみなのだ。

 そして、写真を見れば、感動は何度でも蘇ってくる。
 撮り溜めた写真を整理して、アルバムにして眺めるのも良し。テレビやパソコンで気に入った写真をスライドショーにして、これを楽しみつつ一杯やるのも良し。

 山の楽しみは、人それぞれ。尽きることがない。

戸隠牧場から飯縄山を望む


☆ 山や自然のルールを守ろう!

 里山とは言え、自然のまっただ中である。

 普段は見ることができないような花々が咲いていたり、キジやカモシカなどの野生動物に出会うことも珍しくない。
 熊だって、近くにいて、こちらをじっと見ているかも知れない。

 しかし、彼らが私たちの周りに出てきたのではなく、私たちが彼らのテリトリーの中に入り込んでいるという自覚が必要である。

見返り美人カモシカ

 野生動物に出会うリスクを減らすためには、熊鈴を持ったり、ラジオを鳴らしたり、そんな装備も忘れずに、安心して歩けるようにしたい。

 もちろん、ゴミを置いてきたり、ペットを連れて行ったり、山野草を盗掘したり、入っては行けない場所に入り込んだりするのは禁物である。

 特に、里山には地権者がいる場合が多いので、山菜だって勝手に採ってはいけないのだ。

 出会った花の写真を撮って、帰ってから花の名前を調べるのも山の楽しみのひとつだが、花を持ち帰ってはいけない。
 そんな当たり前のルールを守って里山歩きを楽しもう。

マツムシソウ


☆ 「里山」を侮ることなかれ!

 近年、里山歩きはブームにもなっていて、多くの人が里山を訪れるが、水分が足りなくて歩けなくなったり、地図も見ずに出かけて道に迷ったりするケースも増えていると聞く。

 最初に、自分の足で「頂き」を目指し、自分の足で無事に帰ってくるのが山登りの「約束事」であると述べたが、自分の行動には責任を持つことが必要である。

 里山歩きを始め、近くの山を歩き回れるようになって多少自信が付いてくると、レベルアップして、少し離れた山や少し高い山にも行ってみたくなるのが人情というものだが、ここで注意しなければならないのは、「慣れ」を戒めて、初めての山では、事前の準備を忘れないことだ。

 通り慣れた道ならばいざ知らず、初めて行くルートでは、事前に地図やその他の情報を確認した上、必要な装備を調え、紙地図、GPSなども準備して、万全な態勢で楽むことが大切である。

 たかが「里山」、されど「里山」。
 「里山」を侮ることなかれ!・・・である。

 まずは、近くの里山から、少しずつ足を伸ばして行こう。

こんな場面にもきっと出会える


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