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外資系企業では進んでいる海外駐在帯同者の就労サポート。つまり、”dual career”共働きの支援。


前回、駐在帯同者への就労サポートについて書きました。働き方が変わり、家族のあり方が変わる中で、企業側の支援が追いついていない、という趣旨でしたが、海外と日本を比べたときの違いもありました。

先日、駐妻キャリア総研の研究員メンバーが共有してくれましたが、EYからこのようなレポートが出ており、外資系企業と日系企業の対比をしています。

海外ではもともと共働きが一般的ですが、海外赴任の際には家族帯同のケースが多いです。つまり、海外赴任の際には、配偶者はそのキャリアを中断し、帯同することになりますが、外資系企業では帯同する配偶者に対して「配偶者サポート」があることが多くなっています。海外赴任に帯同する間に、次のキャリアに備えて自己啓発をする費用を補助するものや、現地で働けるように就職の支援をするもの、ビザのサポートをすることもあるぐらいです。日系企業ではこのようなサポートをする企業は少なく、また現地での配偶者の就労を禁止している企業もあります。共働きが一般的となった今、配偶者の現地就労やサポートについて、検討する時期が来ているのかもしれません。

https://www.ey.com/ja_jp/ey-japan-tax-library/tax-alerts/2023/tax-alerts-01-30

日経新聞でも取り上げられていました。

※DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に関しては、日本生産性本部の言葉を借りると、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」とは、従来、企業が取り組んできた「ダイバーシティ&インクルージョン」に「公平/公正性(Equity)」という考えをプラスした概念とのこと。

「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」とは、従来、企業が取り組んできた「ダイバーシティ&インクルージョン」に「公平/公正性(Equity)」という考えをプラスした概念です。

多様な人が働く組織の中で、それぞれの人に合った対応をすることで、それぞれがいきいきと働き、成果を出し続けるための考え方とされています。

https://www.jpc-net.jp/consulting/report/detail/dei.html

「単身赴任」に該当する英語はない?

私自身もですが、日本において、配偶者の海外駐在に帯同しない(別居生活をおくる)という選択肢をする人も多いのではないでしょうか。

書籍「変革せよ!企業人事部 テレワークがもたらした働き革命」によると、日本人海外派遣者の単身赴任比率が際立って高いようでした。

日本人海外派遣者の「単身赴任」比率は31.3%であるのに対し、日本赴任中の外国人の「単身赴任」比率は3.9%と、明らかに日本人派遣者の「単身赴任」比率は際立って高い。

日本赴任中の外国人の家族帯同比率は82.5%となっている。外国人の海外赴任は家族帯同が一般的で、「単身赴任」は例外中の例外であることを明らかに示している。

白木 三秀.“変革せよ! 企業人事部:テレワークがもたらした働き方革命”.早稲田大学出版部,2023,第二章6,p.103-107.

さらに、面白いことに、以下のような調査結果もありました。

「単身赴任」に該当する英語は存在しない、なぜならそのような概念がないためである、英語であえて表現するとすれば、”business bachelor"(「ビジネス上の独身」)となるのではないか、とのことであった。

白木 三秀.“変革せよ! 企業人事部:テレワークがもたらした働き方革命”.早稲田大学出版部,2023,第二章6,p.103-107.

ここでバチェラーという単語に出くわすとは思いもしませんでした。このように、国やある一定の文化圏に根ざした「家族のあり方に対する価値観」が、企業の家族へのサポートのあり方に影響する度合いは低くないと感じました。

海外の企業における海外駐在時の帯同者就労サポート

permits foundationという国際的NPOが、駐在員パートナーに関する調査を行っていることを知りました。2022年のレポートでは、実に78%の企業が駐在員家族の共働き支援を行っており、3/2の企業でコロナ禍から継続している、という結果を出しています。

また、企業が駐在員家族の共働き支援を行う理由として以下を挙げています。そもそも自社の利益につながるという理由が多いですが、従業員の家族と自社の利益を構造的に捉えてることができているとと思います。

”INTERNATIONAL DUAL CAREERS SURVEY REPORT 2022”より抜粋

また、具体的なサポート例として以下が挙げられていました。

“We offer partner support via a specialized vendor, with an annual budget for partners to spend on career development or education.”
(専門ベンダーを通じてパートナー サポートを提供しており、パートナーがキャリア開発や教育に費やせる年間予算が用意されています。)

"We provide a childcare allowance for families with dual careers."
(共働きの家族に育児手当を支給します。)

https://www.permitsfoundation.com/wp-content/uploads/2022/07/2022.06.30_HR_Survey_Final_Report.pdf

「家族のあり方」を優先度の高い判断軸へ

企業なので、経営判断として費用対効果を理由に帯同者のサポートが限定的になってしまうことも多いと思います。

ただ、その判断をする際の優先順位の付け方に、前述の国や一定文化圏における「家族のあり方に対する価値観」は非常に大きな影響を与えると思います。

帯同者の就労という観点でみると、日本企業においては、2つの側面で海外企業から遅れを取っているなと感じます。

・共働きと自社メリットの構造化
・共働きの支援

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