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日本の教育や就労がグローバル水準になることは、駐在帯同家族にとって喜ばしい?

コロナを終わりかけの頃、初めてニセコに行った時は、外国人の多さに驚きました。噂には聞いていましたが、ホテルでも英語がスタンダードになっていました。ただ、なんとなく、地域と海外の観光客が融合しているとは見えず、ただただ外国人が多すぎて日本人が見えなくなった街、という感覚でした。日本にいるのに不思議な感覚・・・。

また、インター出身者が日本の中学校入学へ門戸が開かれたり、従来の外国人技能実習生度が明確に「人材育成・人材確保」を目的とした新制度に変わる検討がされていることを最近ニュースで知りましたが、ジワジワと日本の「教育」や「就労」市場がグローバル水準になっているなーと感じます。

ただ、それは、駐在帯同家族にとっては(ひいては、日本で暮らす日本人にとっても!)とても良いことなのでは、と個人的には思っています。


日本の国土に海外資本が入る

昨年、一昨年とニセコに行きましたが、まさに外国。コロナ禍であっても、特に昨年は海外からの個人旅行が緩和されたので尚更、海外のスキー客がほとんどでした。むしろ、ホテルでは英語で話しかけられるし、レストランでも英語がスタンダードな雰囲気でした。まだまだ開発中、これから開発予定の土地には、海外不動産会社の看板が並んでいました。

日本の自然に魅了されて観光客がたくさん来日することは、嬉しいことですが、日本の土地や不動産を海外の方々に所有されることには、もっと敏感になった方が良いのかと思います。

以前、NHKの番組でニセコの話題が出た際に、「急激に増える超富裕層向けリゾート地帯にインフラ整備が追いつかない」という話を聞いて、ほぼ海外資本で開発しているところへのインフラ整備費を日本の自治体が負担せざるを得ないのは、なんともおかしな話だなと感じました。

財政のひっ迫を招く大きな要因の一つが、上水道の整備費用です。外国資本による建設ラッシュで、リゾートエリアへの水道の供給量を大幅に増やす必要が出てきたのです。

川南冬樹課長
「世界のセレブが開発した部分を、水道はじめ道路とかを整備していかなければならないというのは、長く住んでる人間としては思ってもみなかったこと。この先またどういうふうになるかも、なかなか見えないところ」

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4690/#p4690_05

気軽に購入できてしまうが故でしょうか。インフラ整備や地域コミュニティを保つため、観光資源を保つため、必要な規制をかけることは大事だと思います。また、住居や農地など生活の最低水準を維持するのに必要な土地・不動産に海外資本が入ることは、日本で最低限の生活を脅かす事になりかねないのでは・・・と思ってしまいます。

海外水準の教育レベル・方針

開成中が7月に公表した2024年度入学向けの募集要項。一部の関係者に驚きを持って受けとめられた。去年まで応募資格を「小学校またはこれに準ずる学校を卒業見込みの男子。ただし、これに準ずる学校とは、学校教育法第1条に定める学校」としていたが、今回は後半部分のいわゆる「1条校」を条件とする記載が消えたのだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE264UW0W3A021C2000000/

駐在家族が受験を機にするというのは見聞きしたことがあるので、帯同家族にとっては選択肢が増えて、朗報に思えました。ただ、言語の壁は高いので、インターに通いながら日本語のレベルを維持し、さらに、難関私立中学校の受験を突破する能力もつける、というのはかなりハードルの高いことだと思いますが、それをやってのける子供であれば、(学校経営目線からすると)海外を含めた難関大学への進学率を上げる可能性があり、将来、世界を背負うような人物に成長する可能性もある、と踏んだようにも見えます。

個人的には、様々なバックグラウンドの学生が集いながら学ぶことは、良い影響しかないなと思っていますが、その一方で、私立と公立、都市と地方の格差が広がる懸念も大きくなりそうだなと思っています。


労働力としての海外人材

外国人材の技能実習制度を廃止し転職を認める新制度が検討されており、新制度の目的から、「国際貢献」が消え、国内の人材不足に対して人材確保と育成に重きを置いています。さらに、名称も「育成就労」とすることも検討されているようです。建前と実態の乖離が少しでも埋まる新制度になると良いと思います。

記事の例にあるように、特に、一次産業やサービス業など、外国人材に頼らざるを得ない現場では、「個人の能力が評価され、企業は待遇で報いる。より良い待遇の企業に人が流れる」というシンプルな原理がより働かざるを得なくなっているのだと思います。

これまでの日本社会にあった「新卒一括採用」「終身雇用」の枠組みでは働き得なかった原理だと思いますが、前述の教育や就労環境に広がるグローバル化は否応なしに、従来の枠組みの早急な見直しに繋がりそうな気がしています。

「安定的に食料生産するために外国人労働者が欠かせない現状は『第2の食料安全保障問題』とも言える」。こう指摘するのは水産政策審議会会長を担う佐々木貴文北海道大学准教授だ。外国人材に長期就労してもらうには、日本人と同様に能力を適正に評価し賃金をベースアップするなどの処遇改善が欠かせないという。「転職容認の新制度を、変化への契機とした方がいい」と呼びかける。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC181G80Y3A111C2000000/

また、新制度の検討においては、外国人材の転籍可否が大きな論点でしたが、その点もポジティブに受け止められれているとのことで、人材の流動性を高めることが、社会全体に取って良いこと(国や企業としての競争力、評価が上がる)と捉えられています。良い意味で”適度な緊張感”があることが良い環境ということでしょうか。

転籍の自由を認めることが実習生の人権擁護、職場環境の改善につながる

転籍するかどうかは、実習生の希望を最優先とすべきだが、企業での技能の習得と給与、労働時間などでの処遇が十分に満足できるのであれば、実習生はそもそも途中で他企業への転籍を希望しないはずだ。転籍の自由を認めることが、市場原理を通じて実習生の人権擁護、職場環境の改善につながるのである。

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2023/fis/kiuchi/1124_2

帯同家族にとっては喜ばしい??

日本社会がグローバルスタンダードになっていくことは、結果的に、駐在帯同家族にとっては、ポジティブに働くのではないかなと思います。

やはり、現地の社会や文化の中で生活していた経験は価値があるものだと思います。それがより評価されるには、社会自体も同じ土俵にあることが必要です。移民受け入れを積極的にしていない日本にとって、普段の生活で、自分が日本人であることを意識する機会は少ないです。

そういう状況が、「グローバルを意識せざるを得ない、意識しなくてもそれが普通」という状況に変わっていくことは、否応なしにグローバルな環境に置かれて四苦八苦しながらも生活をしていた帯同家族にとっては、その経験を価値に転換しやすい社会になるだろうなと思っています。

「国が違う」ということが、どういうリスクの可能性があり、どういう危機感を持っておくべきか、そういう危機管理意識をそなえたうえで、グローバルスタンダードを生活に取り入れていくか、判断できる経験は今の日本では積みにくいので、海外で生活するのが手っ取り早いのだと思います。

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