超短編小説 「純情な気持ちの行く末に。」

今日の君はちがう。
明らかにいつもの君ではない。
何が異なるのか、詳細なことはわからない。
でも、はっきりと言い切れる。
今日の君は、僕をしっかりと見てはいない。

常に僕の知っている君でいる続けるのは、たしかに不可能で、こちらもまた、刺激的ではない。しかし、男が女の変化に気づく時なんて、大抵、変化して欲しくない部分が変わっているが故なのだ。

男と女というものは、遺伝子レベルから異なる生命体であり、遺伝子レベルから、理解し合う事など不可能なのだ。
生物学的構造とは、ある意味残酷なもので、根底から理解し合えない個体同士の配合でしか、その種の存続を保つことが出来ない。逆に言うのならば、理解し合えない者同士でも、子孫は繁栄できる。甘く、酸っぱい感情なんて、生物学上必要ないのだ。

ただ、だとしたら、僕は生物学上に削ぐわない道を辿ってしまっているとしても、その道を歩むことを辞めることはない。
人間が、生物である上で、人間たる由縁となるポイントが、「感情」だと僕は思う。他人の傷や感情の深さなんて、理解しかねる。しかし、他人には理解されてたまるものか、というくらいに自分の気持ちは大きな振幅を持っている。
人間というものは本当に難しい。さらに、そこに男女の違いが挟まると尚更だ。

でも、ただこれだけは確かだ。


ただ君を愛している。


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